8つに切られた僕のみかん
僕がトイレに行っている間、それは起こった。僕があっためておいたみかんが、何者かの手によって、8つに切られていたのだ。しかも、綺麗に皿にまで盛られて。
僕はこたつに入ると、そのみかんを食べながら犯人について考えていた。犯人は多分、変態だ。なぜなら、みかんは手で剥けるからだ。ハンバーガーを包み紙の上から両断するやつがあるか。いや、ない。ということは、余程みかんを刃物で八つ裂きにしたい、猟奇殺みかん犯だ。
それから僕は、皿についての考証をした。この、母の大好きなわんちゃすゴー柄の皿は、妹やイヌには届かないところにある。つまり、妹やイヌが犯人ではないということ。
そして、このみかんの皮の断面。一度刃が入り、その上からもう一度振り下ろした跡がある。重さのある包丁では、こうはならない。つまり、使ったのは果物ナイフ。しかも、一度で振り下ろすほど力は強くない。
だが、こたつの上には、みかんの汁の跡が、僕がこぼしたものを除いて一つもない。ということは、一度台所へ持って行ったということ。パパに、そんな几帳面さはない。
そういえば、こたつの上にあった、みかんの籠がない。まさか。そう思い、僕は徒歩2秒の台所へ走った。
そこには、微笑を浮かべ、みかんを切る母の姿。残酷にも、果物ナイフからは、真っ黄色のみかん汁が垂れている。
僕は、恐怖のあまり、足元でみかんをねだるイヌに抱きついた。イヌもたぶん、小刻みに震えていた。
おわり




