チープな思惑の中、からみあって
「芯、ルゥ、アキラ、ノリ。
今日から コイツが、てめーらのマネージャになるからな!せいぜい落ちぶれねーよーにしろよ!」
あの一件の全責任を負わされ、マネージャを解任された中野は、隣に立つ後任マネージャーを顎で指した。
室内の空気が一瞬にして キンッ!! と冷える。
「てめーら?」
昨日まで猫なで声で慇懃無礼な態度をとっていた中野の急変に、ノリは、ぽかんと口を開けている。
ルゥはイヤホンを外すと椅子の背を中野の方に向け、硬い背もたれに腕と顔をゆっくりと乗せた。
『ルゥ』と、初めて愛称で呼ばれた嫌悪感を隠そうともしない。
アキラの大きな目が、目深にかぶったハットの隙間からギラリと光る。
背中ごしに暴言を聞いていた芯は、静かに顔を上げた。そして、スッと振り返って…
中野を目で捕らえる。
「ままま、まぁな、、、無能なアイドルは、消えるのも早いってか、あはっ、ははは」
彼らのあまりの迫力に気圧されながら、それでも中野は必死に悪態をつく。
ダンッ!!
アキラが近くの椅子を蹴り飛ばして立ち上がった。
ノリはパッと腰を浮かす。
しかし、芯もルゥも動かない。
火のついたアキラを止める気はなさそうだ。
ノリは心配そうに立ち尽くしている。
(あ~あ。私も止めたくないなぁ…)
新マネージャーの麗叶がチラッと視線をやると、中野が口の端を引きつらせ ヒクヒクと笑いをこらえている。
(やっぱり…。TV局内で騒動を起こして、この子達を潰したいんだ)
ガッガッガッガ
息のかかる距離まで詰め寄ったアキラが、殺気を放って中野を見下ろした。
一触即発。
中野の口は左右に歪み、醜悪さは増している。
(仕返しするつもりね。ほんっとに最低最悪。だからみんなに嫌われるのよ!あ~私が殴りたい!!)
心の声がもれないようにひと呼吸おき
スッと正面に顔を戻した麗叶は落ち着いた声で挨拶した。
「はじめまして。青木麗叶と申します。
本日よりチーフマネージャを山内勝彦、サブマネージャは私が担当いたします。前任者同様、未熟者ではございますが、どうか宜しくお願いします」
しかし、アキラの意識は、中野から動かない。
「本来なら山内を交え、会社の事務所で引継ぎの挨拶はするものなんですが、コイツ…いえ。前任者の中野が、どうしてもテレビ局内の、楽屋で、スペシャル番組で大勢のスタッフや出演者がいる本日に、絶対に挨拶したいと言ってきかなかったもので……」
「!?!」
芯とルゥは、瞬時に麗叶の真意を掴みとった。
ルゥが立ち上がった時、芯は既に歩き出していた。
麗叶は、出来るだけハッキリと発音する。
「このような場所で…申し訳ございません」
芯は、中野を睨み続けるアキラの後ろに立った。
アキラが動き出したら、すぐに止めるつもりなのだろう。
「大勢のマスコミがいるテレビ局内で…」
念を押す麗叶に、芯が目を移した。
反射的に麗叶も芯を見る。
「!?」
思いがけず聡明な芯の瞳に、麗叶は衝撃を受けた。
(なんて綺麗な目…)
吸い込まれそうな強力なパワーの中に
シャイな色をたたえ、その目は現実を見抜いていた。
何かを隠そうと、強気と冷淡の鎧をつけている。
が…
ふわっ
と芯の瞳が、、揺らぐ
(その瞳を 覆うものは…… なに?)
トクン。
麗叶の胸の奥、微かになにかが動いた。




