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瞳孔を冷やして。  作者: 橘樹 杏果


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1/1

チープな思惑の中、からみあって

「芯、ルゥ、アキラ、ノリ。

今日から コイツが、てめーらのマネージャになるからな!せいぜい落ちぶれねーよーにしろよ!」

あの一件の全責任を負わされ、マネージャを解任された中野は、隣に立つ後任マネージャーを顎で指した。

室内の空気が一瞬にして キンッ!! と冷える。


「てめーら?」


昨日まで猫なで声で慇懃無礼な態度をとっていた中野の急変に、ノリは、ぽかんと口を開けている。


ルゥはイヤホンを外すと椅子の背を中野の方に向け、硬い背もたれに腕と顔をゆっくりと乗せた。

『ルゥ』と、初めて愛称で呼ばれた嫌悪感を隠そうともしない。


アキラの大きな目が、目深にかぶったハットの隙間からギラリと光る。


背中ごしに暴言を聞いていた芯は、静かに顔を上げた。そして、スッと振り返って…

中野を目で捕らえる。


「ままま、まぁな、、、無能なアイドルは、消えるのも早いってか、あはっ、ははは」

彼らのあまりの迫力に気圧されながら、それでも中野は必死に悪態をつく。


ダンッ!!


アキラが近くの椅子を蹴り飛ばして立ち上がった。

ノリはパッと腰を浮かす。

しかし、芯もルゥも動かない。

火のついたアキラを止める気はなさそうだ。

ノリは心配そうに立ち尽くしている。


(あ~あ。私も止めたくないなぁ…)

新マネージャーの麗叶れいかがチラッと視線をやると、中野が口の端を引きつらせ ヒクヒクと笑いをこらえている。

(やっぱり…。TV局内で騒動を起こして、この子達を潰したいんだ)


ガッガッガッガ


息のかかる距離まで詰め寄ったアキラが、殺気を放って中野を見下ろした。

一触即発。

中野の口は左右に歪み、醜悪さは増している。


(仕返しするつもりね。ほんっとに最低最悪。だからみんなに嫌われるのよ!あ~私が殴りたい!!)

心の声がもれないようにひと呼吸おき

スッと正面に顔を戻した麗叶は落ち着いた声で挨拶した。

「はじめまして。青木麗叶と申します。

本日よりチーフマネージャを山内勝彦、サブマネージャは私が担当いたします。前任者同様、未熟者ではございますが、どうか宜しくお願いします」


しかし、アキラの意識は、中野から動かない。


「本来なら山内を交え、会社の事務所で引継ぎの挨拶はするものなんですが、コイツ…いえ。前任者の中野が、どうしてもテレビ局内の、楽屋で、スペシャル番組で大勢のスタッフや出演者がいる本日に、絶対に挨拶したいと言ってきかなかったもので……」


「!?!」

芯とルゥは、瞬時に麗叶の真意を掴みとった。

ルゥが立ち上がった時、芯は既に歩き出していた。


麗叶は、出来るだけハッキリと発音する。

「このような場所で…申し訳ございません」


芯は、中野を睨み続けるアキラの後ろに立った。

アキラが動き出したら、すぐに止めるつもりなのだろう。


「大勢のマスコミがいるテレビ局内で…」


念を押す麗叶に、芯が目を移した。

反射的に麗叶も芯を見る。


「!?」


思いがけず聡明な芯の瞳に、麗叶は衝撃を受けた。


(なんて綺麗な目…)


吸い込まれそうな強力なパワーの中に

シャイな色をたたえ、その目は現実を見抜いていた。


何かを隠そうと、強気と冷淡の鎧をつけている。

が…


ふわっ


と芯の瞳が、、揺らぐ


(その瞳を 覆うものは…… なに?)


トクン。


麗叶の胸の奥、微かになにかが動いた。


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