やっかいものなので猫王子と婚約して国を出る事になった
王女エリアはやっかいものだ。
エリアルド王国に生まれた王族の一人だが、あらゆる面で才能がない。
上の兄や姉たちには、魔法や勉強、武術などの優れた才能が備わっているにもかかわらず、だ。
だから、家族たちは彼女に見向きもせず、存在しないものとして扱っていた。
その影響で、王宮で働いているものたちも、エリアを無視するようになった。
そんなエリアを可哀想に思うものも、中にはいた。
その一人が占い師の女性ミュンデだ。
王に雇われたその女性は、エリアの事を気にかけ、話し相手を度々してくれた。
それだけなく、エリアの将来を憂いて未来を占ってもくれたのだ。
その占いによると、エリアは数年後に運命の相手と出会って、結ばれ、この王宮から出ていく事になるらしい。
運命の相手と出会ったときはすぐに直感でわかるという。
エリアはその占いに心が救われ、運命の相手との出会いを待ちわびていた。
ただ助けられるだけの存在になりたくない。
そう思ったのは、エリアに時々話しかけてくれる獣舎の男性ドーズだ。
人間には相手にされないが、獣たちは仲良くしてくれる。
そのため、エリアはたびたび獣舎に入り浸るようになり、その関係で管理者の男性と仲良くなったのだ。
管理者の男性から、もしもの時の力は多く磨いておいた方がいいと言われ、エリアは使用人のふりをして色々な事に挑戦することにした。
厨房で働いたり、掃除をしたり。
どれもまともにこなせなかったが、エリアは色々な事を試した。
それだけでなく図書館で本を読み、勉強もして、知識も蓄えていく。
魔道具をつくるまねごとをしてみたり、魔法薬の調合なども試した。
そんなエリアは、ある日怪我をしていた猫を保護した。
青色の珍しい毛並みの猫だ。
エリアは猫の手当てと看病を精一杯やった。
そのおかげで、猫は元気になり、動き回れるようになった。
ネコがエリアになついたので、エリアはその猫にブルーとなずけた。
直感でその猫を気に入ったエリアだが、その時は、運命の相手だとは思わなかった。
猫と出会ってから一か月。
猫は度々王宮の外に出かけるようになった。
そのたびにブルーは、綺麗な宝石や美味しい食材を持ってきた。
エリアはブルーをかしこいと褒め、ブルーは得意げにする。
その繰り返しが続いた。
さらに二か月後。
エリアはブルーがみつけた秘密の抜け穴を使って、王宮の外に出るようになった。
変装して町を回るエリアはいつか外の世界に出たときのために、様々なものを勉強した。
出会ってから半年が経過した頃、エリアはブルーがポーションを誤飲するのを見かけて慌てた。
人間の店で売られているポーションは人間用に作られたもので、獣が摂取すると体に悪影響が出ると言われていた。
エリアが持っているのは人間用のポーションだった。
色々な事に挑戦するエリアは慣れない事をこなすため、怪我が多かった。
そのために日頃から飼って保管しておいたのだ。
しかししまい忘れたポーションをブルーが割ってしまったらしく、液体がもれてしまっていた。
ポーションをなめていたブルーを見て、小さな体をかかあげたエリアはすぐに動物の医師に診せようと考えたが、すぐに変化が起きた
ブルーの体が光り輝いて、人間の男の子の姿になったからだ。
その男の子は他国で行方不明になっていた、人間だった。
男の子は呪いで猫の体になっていたらしい。
なんでも故郷の国を荒らす水霊が討伐されたのだが、その水霊が力尽きる前に呪いを放ったのだと言う。
男の子は、魔道具を使って遠方に連絡すると、すぐに迎えが来てくれることになった。
エリアは仲良くなった存在がいなくなることを寂しく思った。
寂しさを抱えるようになって数か月後、エリアは普段は出席することを許可されない、国が主催する大きなパーティーに出る事が決まった。
王族の恥だからと今までは、パーティーどころか、公式の場に一度も出してもらえなかったにも関わらず、だ。
訝しむエリアだが、王からの命令だったため、拒否はできなかった。
今までにない扱いを受けて、エリアは着飾り、髪や爪を整えられた。
そのパーティーに出席したエリアは、ブルーだった男の子と再会できて驚いた。
数か月前まで猫だった男の子は他国の王族だったのだ。
アクア水霊国という国のものだ。
その男の子の名前はスカイ。
エリアはスカイと婚約し、婚約者になった。
そして、1年後に花嫁として王宮を出る事になる。
別の国に向かったエリアは、アクア水霊国で過ごすが、驚くことばかりだった。
エリアがいた国では、能力のないものはすぐに切り捨てるという価値観があった。
しかしアクア王国では、能力がないなら育てていこうという考えだった。
様々なことに挑戦してきたエリアだが、いまだにこれといった長所はなかった。
それでも、取り柄がなくてもそこにいていいと言われたような気がして、エリアは安心して過ごす事ができた。
彼女はアクア水霊国の王妃になり、スカイとの間に何人かの子供を授かって、寿命をまっとうした後、天に召された。
その人生は歴代の王妃と比べれば、特に目立つものではなかったが、誰も彼女を無視したり疎む事はなかったという。




