第2話 奇眼
テロ未遂事件があった翌日ミィナスとロデスはオルダンに呼ばれバルモス中央警察署の応接室に来ていた。
「連日私たちを呼び出して、暇なの?」
「馬鹿言うな大忙しだ」
オルダンは珈琲を飲みながら答えた。
「で、今度は何に手を貸せばいいの」
「人探しだ」
そう言ってオルダンは一枚の写真を取り出しミィナスの前に置いた。写真に写っていたのは眼鏡をかけ背の高い優しそうな男だった。
「こいつの名前はウェルド・レトス。黒蛇のメンバーで先日捕まえたほかのメンバーにこの街に爆弾を仕掛けるように指示していた人物だ。お前たちにはこいつを見つけてきてもらいたい」
「こんな男、どこで見つけたんだ」
「街にある防犯カメラだ。最後に映っていたのは商業区の辺りだな。どうだこの依頼受けてくれるか?」
「うちは、どんな依頼もすべて受けるがモットーだからね。もちろん受けさせてもらうよ」
ミィナスは席を立って部屋から出て行った。ロデスも部屋を出ようとするとオルダンに呼び止められた。
「ロデス、お前はこれを持っていけ」
オルダンが持ってきたのは傷だらけの通信機だった。
「これまだ持ってたんですね。もう捨てたものだと思ってましたよ」
「当然だ。他人の物をかってに捨てたりするわけないだろ」
ロデスはオルダンから通信機を受け取り部屋から出て行った。
「何話してたんだ」
「ちょっとした世間話だ。ほら、行くぞ」
そう言って二人は商業区へ向かって歩いた。商業区は昨日爆弾騒ぎがあったのにもかかわらずいつもと変わらぬ姿で賑わっていた。
「まずはウェルド・レトスの目撃情報が欲しいから聞き込みをするぞ」
「ならパン屋から行くか。あそこなら朝早くから人の出入りがあるし誰かゴルドを見たという人もいるだろう」
早速二人は商業区南にあるパン屋に向かった。
「あら、ミィナスちゃん久しぶり。いつものメロンパンあるわよ」
店に行くとトレイの上に出来たてのメロンパンを乗せた店主のおばさんが出迎えてくれた。
「ありがとう。じゃあロデスの分と合わせて二つ貰うわ。それとこの人、見覚えないかしら」
そう言ってミィナスはもっていた写真を見せた。
「ん~見たことないねぇ。ごめんなさい力になれなくて」
「いや、気にしないで。それとメロンパンありがとう!」
二人は出来立てのメロンパンを片手に別の場所へ移動した。
「次は時計屋に行ってみよ」
次に二人は商業区東にある老舗の時計屋に訪れた。この時計屋は御年八十歳になる白髪のおじいさんが一人で経営している。
「おじーちゃんこの写真の人見たことない?」
「その男ならさっきデパートの方に歩いて行ったのを見たなぁ」
「貴重な情報教えてくれてありがとうおじーちゃん」
二人はこの情報をもとにデパート付近でさらに聞き込みをつづけた。
だが時計屋の証言以降、有力な手掛かりはなく二人はベンチに座り込んでいた。
「ねぇ、本当にウェルド・レトスって男はこの街にいるの?」
ミィナスは不満げにつぶやいた。するとロデスの持っていた無線機からオルダン声が聞こえてきた。
『ロデス聞こえているか』
『はい、聞こえてます』
『ウェルド・レトスがこの街の電波塔の屋上にいるのを俺の部下のマリネアが防犯カメラで見つけた。至急向かってくれ。ただし危険だと判断したらすぐに撤退しろ』
『了解しました』
オルダンとの無線が終わり二人はすぐに電波塔へ向かった。電波塔は街の北側にあり、街で一番の高さを誇っている。電波塔の屋上へは長い階段を上らなくてはならなずミィナスは半分辺りから息を切らしながら登っていた。
「あんた、なんでそんなに余裕そうなのよ」
「俺はお前と違って毎朝走ってるからな」
「私も走ろうかしら・・・」
そんなあまり緊張感のない会話をしながら二人は屋上の扉までたどり着いた。
「この先だね」
「開けるぞ・・・」
ロデスは慎重に扉を開けた。
「遅かったね待ちくたびれたよ」
扉の先で待っていたのは写真通りに眼鏡をかけた背の高い男がいた。
「お前が黒蛇のウェルド・レトスだな。どうして俺たちがここに来るのを知っていた」
「それはね、僕が君たちのことを監視していたからだよ。そう、この《《眼》》を使ってね」
そう言ってウェルドは自分の右目を指さした。
「眼だと、お前まさか奇眼か」
「正解。僕は目を合わせた生き物と視覚を共有することができるんだ」
奇眼それは読んで字の如く奇妙な力を持った眼の事である。この眼を持つ者は何らかの眼を使った能力を手に入れることができるのだ。
「どこで俺たちを特定した。俺たちとお前は今日初めて会ったはずだぞ」
「簡単なことだよ。君たちが監視カメラで僕を探すように僕もたくさんの生き物たちの眼を借りて君たちを見つけたんだ。なにやら僕のことをコソコソ嗅ぎまわっていたみたいだからね。それと僕は昔、一度きみと会った事がある」
そう言ってウェルドは眼鏡をはずし両手に拳銃を持った。その姿を見たロデスは戦慄した。
「ミィナス今すぐ下に降りてオルダンさんを呼べ」
「ロデスも一緒に逃げるよ!オルダンは危険と判断したら逃げろって言ってたでしょ。」
ミィナスはロデスの腕を引っ張りそう言ったが簡単に振りほどかれてしまった。
「いいから早く行け!俺は先輩の仇を取らなきゃならねぇんだ」
「・・・分かった。でも死なないでね」
ロデスはコートの内側から拳銃を取り出した。それを見たミィナスは今からここが戦場になると悟り急いで階段を降りて行った。
「思い出してくれたかい?僕のことを」
「その顔、忘れるわけねぇだろ」
ロデスはウェルドに向かって数発弾丸を撃ち込んだ。だがどれも躱されてしまった。
「・・・甘いね」
ウェルドはそうつぶやいてロデスの右手と左足を撃ち抜いた。ロデスの右手に持っていた銃は地面に転がり落ちてしまった。
「心臓を撃たなかったんだ。感謝しなよ」
「お前、何が目的なんだ」
「残念だけどそれは教えられないよ。ボスから口止めされてるからね」
ウェルドがそう言うと一台の大きなヘリがこの屋上に止まった。
「あぁ、もう迎えが来たのか、またねロデス君。命は大事にするんだよ」
そう言ってヘリの方へ向いたウェルドの背中を狙って隠していたナイフを投げつけた。
だがそのナイフはあっさりとウェルドの銃に撃たれ地面に落ちていった。
「奇襲にはいいタイミングだけどもっと殺気を隠さなきゃ、バレバレだよ」
ウェルドは笑顔でもう一つの銃でロデスの身体を撃ち抜いた。そしてウェルド乗せたヘリはこの街を去っていった。
屋上にただ一人残されたロデスは血を流し足を引きずりながら地上への階段をゆっくり降りて行った。地上には規制線が張られミィナスとオルダン。それに警察と救急隊が待っていた。
「ロデス・・・お前血が・・・」
血を流しながら地上に降りてきたロデスを見たミィナスは口を押えて震えていた。
「悪いなミィナス・・・俺は・・・」
ロデスは何かを言いかけたが視界がぼやけ数歩歩いたところで意識を失ってしまった。ロデスが意識を失う前に見た光景は涙を流すミィナスだった。




