なろうのシステムに「公平」を求める不毛。
公平とは、偏った贔屓のない状態。
弱者も含め、皆に同様の機会を求めるのは「平等」に属する主張。
平等は、強者に制限をかけ、弱者に下駄を履かせる配慮。しかし、なろうでは「未熟な僕に下駄を履かせてください」と素直に言える投稿者が少ない。―― それはなぜか?
自作を投稿する人間の多くは、異常にプライドが高い。なので、自作が読まれないのは「システムのせいだ」と、半ば本気で考えている。それはもう盲目にも似た心理状態で。
たしかに、現在の小説家になろうでは、異世界恋愛ジャンルが、ランキングで猛威を振るっている。しかし、それも以前ほどではなく、ファンタジーやヒューマンドラマジャンルも盛り返し始めてきている(内容は、ほぼすべて異世界設定なわけだが、それは「時代性」の問題で、本件とは別の話)。
エンタメの競争社会における平等論ほど、不毛なものはない。実生活において、生活に困窮した場合、社会保障などに頼るのもいいだろう。だが、ことフリーな娯楽分野にまで、それを求めるのは、さすがに冗談が過ぎないだろうか?
世間が面白いと思っていない、興味のないものにまで目を向け、プッシュアップして欲しいとか、なろうを「慈善事業」か何かと勘違いしているのだろうか?
小説家になろうは「非営利団体」ではない。
そんな部分のケアまでしていたら、運営そのものが立ち行かなくなる。―― という簡単な想像すらできず、不平不満だけを鳴らすことが出来るのは、彼らの社会経験の乏しいさからか?
「テンプレ小説ばかりが上位を占めている」
「なぜ俺の傑作が読まれないんだ」
「読者にはバカしかいない」
「これも運営のせいだ」
こんなことを常日頃から言い続けている人間の作品を、果たして読者が読みたいと考えるだろうか。そんなものは、自分で自分に行うネガティブ・キャンペーンにしかならない。
少なくとも、小説家になろうは、テンプレや人気ジャンルを投稿する分には、新参者にもかなり平等なシステムだといえる。何かに文句を言いたいのなら、実際にそのジャンルでも戦ってみてから、不具合を指摘すべきだろう。
◇
―― で、お前のいうとおり、実際に書いてみたけど、俺の異世界恋愛作品は、誰にも読まれなかったぞ、と怒り出す人間がいる。
だが、それはシステムの公平性の問題ではない。
シンプルに作品のタイトルとあらすじに惹かれるものがなかったからで、自身のコピーセンスが壊滅的だったからに過ぎない。
「誰がこんなもんに興味持つねん?」というタイトルや、あらすじを書いておいて、「平等じゃない!」の主張は、ほとんど頭痛だ。
読まれるための工夫すらせず、権利だけを主張するのは、滑稽に過ぎる。努力している!という反論にも、「その努力の仕方、本当にあってんのか?」と訊き返したくもなる。
すべてをやった上で、それでも読まれないのなら、それはそもそも「発表をする場所」自体が間違っている可能性が高い。ならば、なろうではなく、どこか別の媒体で投稿すればいいだけの話である。
「実力のある作品が、誰の目にも止まらず、埋もれてしまっている」という主張も、ちょいちょい見かける。たしかに事実でもあるわけだが、それは「人生」でも同じことが言える。
神にすらコントロールが出来ていない差配を、人間である運営に求めるのは、お客様だとしても、アレ過ぎないか?
もったいないのは事実だが、全部が全部「実力どおり」になる世界なら、それこそ能力のない人間たちは「一発」すら当てられなくなる。そうなるとまた「不平等だ!」と言い出すことになるんじゃないかな、アングルだけを変えて。
ニーズのないものを書きたいのなら、まずは人気のジャンルで「確固たる実力」を示してから、チャレンジしてみればいいんじゃないの?
―― 無料で提供されているプラットフォームに、どこまで「お客様根性」を出しているのやら。なろうが「課金制のサービス」なら、言いたいだけ、言えばいいが。




