第7章
辺りは静まり返っていた。
美月は、遠巻きに見つめながら息を呑んでいる。
仮面の男は、ただ佇んでいた。
「どうした?」
低い声。
「もう終わりか?」
「……いいや。」
私は、深く息を吸い、足を前に踏み出す。
「まだ……終わらない!」
左腕が熱を帯びる。
刃が、私に語りかけるように微かに光る。
「ならば、見せてみろ。」
仮面の男が、剣を構えた。
風が、ざわめく。
次の瞬間、
――戦いが、再び始まる。
キィンッ!!
刃と刃がぶつかり合う。
火花が散る。
私は、体の芯で刃を感じながら、動きを読んでいた。
「……今までと違うな。」
仮面の男が呟く。
「ようやく、少しは使いこなせるようになったか?」
「そんな簡単なもんじゃない。」
私は息を整える。
「けど……今なら分かる。」
左腕の刃が、私の意志と共鳴している。
「ならば、試してやろう。」
仮面の男が一気に踏み込んでくる。
私は、その瞬間を見逃さなかった。
刃を振るう。
――斬れ!
刃が、音を立てて空を裂く。
だが――
スッ……
仮面の男の姿が、一瞬でかき消えた。
「なっ……!」
私の刃は、何もない空間を斬っていた。
「遅い。」
背後で声がする。
ドンッ!!
強烈な衝撃が背中に走った。
私は、地面に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
砂煙が舞う。
「……まだまだだな。」
仮面の男は、静かに言った。
「お前の刃は、未完成だ。なぜか分かるか?」
私は、歯を食いしばる。
「……なんで。」
「それは、お前が“刃の本質”を知らないからだ。」
「刃の本質……?」
「そうだ。刃とは、単なる武器ではない。」
仮面の男は、私を見下ろしながら続ける。
「刃は、持つ者の意志そのもの。そして、お前の覚悟が未完成なのだ。」
私は、拳を握った。
「……そんなもの、今ここで完成させる!」
私は、再び立ち上がる。
「そうか……ならば、もう一度見せてみろ。」
私は、呼吸を整えた。
「私の刃は……」
私は、左腕を見つめる。
この刃は、ただの武器じゃない。
私は、守るために戦う。
私は……
「私自身の刃だ!」
バチバチッ!!
左腕の刃が、一瞬だけ赤く輝いた。
「……!」
仮面の男の目がわずかに見開かれる。
「ならば、その意志を試そう。」
再び、私たちは刃を交えた。
今度こそ――
私は、負けない。