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AI  作者: やす
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第5章

その日は、いつもと変わらない日常のはずだった。


美月と一緒に帰り道を歩きながら、私はぼんやりとした不安を感じていた。


「燈花?」


「え?」


美月が私の顔を覗き込んでいた。


「さっきから、考え事?」


「……まあね。」


「そっか。でも、少しは気を抜きなよ。」


美月は優しく微笑む。


私は苦笑いを返したが、その瞬間、背後で何かが動いた。


ザッ


風が揺れ、私は一気に警戒を強めた。


美月も異変を察したのか、表情が硬くなる。


「今の、何?」


「……分からない。」


私は無意識に左腕を押さえた。


その時――


ガシャン!


遠くの電柱が大きく揺れ、バチバチと火花を散らした。


「っ……!」


突然の衝撃に、私たちは息をのむ。


「伏せて!」


私は美月をかばいながら、地面に身を伏せた。


目の前で、黒い影が音もなく現れる。


その姿を見た瞬間、私の心臓が跳ね上がった。


黒コートの男とは違う。


目の前の存在は、異質だった。


漆黒の装束を纏い、顔は仮面で覆われている。


「……待っていたぞ。」


低く響く声。


私は身構えた。


「……誰?」


「試練の使者。お前が本当に力を持つに相応しいか、見極める者だ。」


背筋が冷たくなる。


「試練……?」


「お前の刃が、本物かどうか、確かめる。」


男はゆっくりと手を伸ばした。


その瞬間、私の左腕が熱を帯びる。


――この人は、敵だ。


私は瞬時に理解した。


「……戦えというの?」


「そうだ。」


「……そんな勝手なルール、認めるわけない。」


「認めるも何も、もう始まっている。」


ヒュッ!


仮面の男が、一瞬で間合いを詰める。


速い――!


私は咄嗟に後退した。


ドンッ!


足元の地面が抉れ、風が鋭く頬を切る。


美月が悲鳴を上げた。


「燈花!」


「下がって!」


私は、左腕に意識を集中させた。


「……来い。」


ザシュッ!


次の瞬間、左腕が刃に変わった。


「ほう……。」


仮面の男は、静かに私を観察していた。


「やはり、お前の刃は特別だな。」


「うるさい……!」


私は刃を構え、一気に踏み込んだ。


しかし――


カンッ!


一撃目は、寸前で弾かれた。


「……っ!」


私の攻撃は、まるで見透かされているようだった。


「雑だな。その力を、本当に制御できるのか?」


「っ……!」


私は奥歯を噛みしめた。


「――なら、試してみる?」


深呼吸し、もう一度構え直す。


刃は私の意志に応えてくれる。


次は、ただの剣撃ではなく、私自身の覚悟を込める。


私は、目の前の男に向かって、もう一度踏み込んだ。


――刃が重く感じた。


私は、力の限界を試されていた。


相手の動きは的確で、無駄がない。


「お前の刃は、まだ未完成だ。」


その言葉に、私は何かが引っかかった。


未完成?


……どういうこと?


「なら、完成させるだけ。」


私は、自らの力を信じることにした。


仮面の男の攻撃が迫る。


私は、一歩も引かずに、刃を振るった。


ガキンッ!


二つの刃が交錯する。


火花が飛び散り、空気が震える。


「……!」


私は、まだ倒れるわけにはいかない。


守るべきものがあるから。

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