第4章
目を覚ますと、部屋の窓から朝日が差し込んでいた。
「……今日も、戦いの一日かもしれない」
昨日の夜、男の声が聞こえた。
「お前の刃は、まだ未完成だ。」
夢だったのか、それとも現実だったのか。
私はベッドから起き上がり、机の上のノートを手に取る。
破れたページが、ひらりと舞い落ちる。
「じいちゃん、あなたは何を知っていたの……?」
答えのない問いをつぶやく。
私は、決めた。
逃げない。力と向き合う。
学校が終わり、私は剣道部の道場に向かった。
竹刀を構え、深く息を吸う。
「来い、燈花!」
先輩の掛け声とともに、私は一歩踏み込んだ。
竹刀を振る。
だが、違和感がある。
「……身体が軽い?」
いや、違う。
左腕の感覚が鋭くなっている。
「……お前、最近動きが変わったな。」
先輩が息を切らしながら言った。
「……自分でもよく分かりません。」
本当は分かっている。
この左腕の刃が、私を導こうとしている。
だが、制御できるかどうかは分からない。
私は、もっと強くならなければならなかった。
剣道の稽古を終えた後、私は夜道を歩いていた。
道の角を曲がると、一人の少女が立っていた。
「……美月?」
彼女は、クラスメイトだった。
「燈花……最近、雰囲気が変わったね。」
私は驚いた。
「え?」
「……なんか、前より強そうに見える。」
美月は、私をじっと見つめていた。
私は、何と答えればいいか分からなかった。
「……そうかな?」
美月は微笑んだ。
「でも、無理はしないでね。」
私は、彼女の言葉に少し救われた気がした。
家に帰り、私はノートを開いた。
破れたページを指でなぞる。
「……どうして、こんなに大事な部分が読めないんだろう。」
「それが、この力を使うべきでない理由かもしれないな。」
!!
私は驚いて振り向いた。
「……誰?」
暗闇の中から、黒コートの男が立っていた。
「お前の刃は、まだ未完成だ。」
私は身構えた。
「……また、あなた?」
男は頷いた。
「お前は、何を守る?」
「……?」
「お前の刃は、ただ敵を倒すためのものではない。」
男は静かに続けた。
「それを理解しなければ、お前はやがてこの力に呑まれるだろう。」
私は拳を握りしめた。
「……私は、じいちゃんの遺したものを解き明かしたい。」
男は微かに笑った。
「ならば、試されるといい。」
そう言い残し、男は消えた。
私は、残された言葉を噛みしめる。
「……私は、何を守るべきなの?」
5.覚醒の兆し
その夜、私は夢を見た。
夢の中で、祖父が微笑んでいた。
「燈花……お前の刃は、ただの武器ではない。」
「じいちゃん!」
祖父は、静かに頷いた。
「燈花、お前が守るべきものを見つける時、この刃は本当の姿を見せるだろう。」
「守るべきもの……?」
「焦るな。答えは、お前自身が見つけるものだ。」
祖父の姿が霞んでいく。
「待って!」
私は手を伸ばす。
しかし、その手は何も掴めなかった。
目を覚ますと、私は涙を流していた。
「……じいちゃん……」
祖父のノートを再び開く。
破れたページの向こうに、答えがある気がした。
「私は……私の力を、知りたい。」
そう決意した時、
左腕が、かすかに光った。