勘違い成り上がり街道録
――どうしてこうなった。
「ヨハンサマバンザーイ! ヨハンサマバンザーイ! ヨハンサマバンザーイ!」
『ヨハンさまバンザーイ! ヨハンさまバンザーイ! ヨハンさまバンザーイ!』
馬車の上に立つ獣耳の美少女ガンマの能天気な掛け声に、
集まった群衆たちは万歳三唱を返す声がどこか他人事のように聞こえる。
ガンマが馬車の上で動くたびに、ヨハンの乗る馬車はギシギシと揺れる。
馬車の中でヨハンの対面に座るのは、
「見てくださいヨハン様。この場に集まった虫ケラ――もとい家畜動物。殺したくなりますね」
暗い笑みを浮かべる美少女ベータ。
ベータへ言葉を返したのはベータの対面、ヨハンの隣に座るアルファ。
「だめよベータ――」
――いいぞ! もっと言ってやれ!
ヨハンは幼馴染のその言葉に、ぱぁぁと期待した表情を隣に向けるが、
「――彼らはこれから私たちに税を死ぬまで、ううん、死んだ後もその家族から税を納めてもらうんだから。そうすれば貴女ももっと色々な実験ができるわ」
くっくっく、と悪の幹部も真っ青なあくどい笑みを浮かべていた。
ヨハンの表情は再び沈痛な表情へと変わった。
――ちがう! そうじゃない……。
そんなヨハンを差し置いて、
「ほんとですか!」
ベータは嬉しそうに目を輝かせて、その豊かな胸部の膨らみの前で両手を合わせた。
「本当よ。ヨハンの計画に反しない限りは。ねぇヨハン? ――あら、緊張しているの?」
――俺の計画? ナニソレオイシイノ?
「……緊張しない方が無理があるだろ。俺は平民だぞ」
「元平民よ、ヨハン。貴方はもう貴族よ。領主貴族。ここに集まった間抜け面たちの管理者。でも安心して。私たちは貴女がこんなところで終わるわけないって信じてるから――ね?」
――誰か助けてくれ。
ヨハンはそう願わずにはいられなかった。
◆ ◇ ◇
ヨハンは辺境――というほどでもないが、都会でもない。
そんな都市で生を受けた。
やや思い込みが激しい両親の下ですくすくと育ったヨハン。
一人歩きできるようになると、都市をよく走り回る男の子に育った。
「ヨハン。今日はなにする?」
「そうだねー」
ヨハンとアルファは幼馴染だった。
親同士が気の置けない友人と言うこともあって、物心ついたときにはそばにいた。
いつもそばにいた。
「あそんでくるー」
「わたしもー」
泥だらけになるのも二人。
「おふろはいるー」
「わたしもー」
きれいになるのも二人。
「もうねるねー」
「わたしもー」
夢をみるのも二人。
「おべんじょいってくるー」
「わたしもー」
お手洗いに行くのも――
「――ってアルファ! はいってこないで! ママぁーッ!」
ヨハンは物心つくにつれて、そんなアルファに恐怖を覚えるようになった。
――これ、普通じゃなくね?
さらには、アルファのヨハンの勘違いがすさまじいかった。
「――ヨハンは天才よ!」
「――ヨハンには世界が変えられるわ!」
「――ヨハンは凡人とは違う世界が見えているのだわ!」
最初こそ幼馴染をからかって遊んでるのだと思ったが、そうではなかった。
彼女の目はどこまでも本気だった。
世界に生きるのはヨハンとアルファの二人だけではない。
アルファが褒めそやすヨハンを実際に見て、バカにする者もいた。
「――初級魔法もまともに使えない天才って」
「――世界を変える前に自己評価を変えろよ」
「――どこの世界だよ、ママのお腹の中か?」
しかし、異を唱えた者は捻じ伏せられた――アルファによって。
「――ヨハンに文句あるの?」
アルファはヨハンの住む町のボスだった。
彼女はヨハン以外には鬼のように厳しかった。
年上だろうが、誰も彼女に逆らえない。
そのとびぬけた可愛さもさることながら、魔法の実力も群を抜いていた。
それはその噂を聞きつけた王都の学園から特待生として招待を受けるほどに。
そんな彼女には当然子どもだけでなく、大人も注目した。
大人が注目すると、当然子どもはますますヨハンに注目した。
何も知らなかったころは彼女からの評価されるのは嬉しかったが、ここまで来るともはや恐怖でしかなかった。
周囲は、
「天才のアルファが言うくらいだ。ヨハンはやはりすごいのだろう」
「天才は天才を知るともいいますしね」
本人の気も知らずにいい気なものであった。
ある日、都市長を始めとする都市の有力者に呼び出されたアルファは、その実力に触れ、褒めちぎられた。
子どもであれば、大人であっても若さゆえの傲慢がでてもおかしくないものである。
しかし、
「いえいえ。私なんて――ヨハンの足元にも及びませんよ」
アルファはそう言って微笑んだ。
ヨハンは故郷の町から逃げ出した。
◆ ◆ ◇
ヨハンは乗合馬車を使って地域最大の都市へと向かった。
両親にだけは、商人として奉公に行くと伝えた。
別に商人になりたいわけじゃない。ただ、アルファから逃げたかった。
都市に到着すると、親から貰った路銀を使って一番安い宿をねぐらに決めた。
親に伝えたとおり商人なるつもりで、勇気を振り絞って名うての商館に訪れてみたが、
「――ここで働きたい?」
「――紹介状はあるかい?」
「――すまない。紹介状がない人はいま受け付けてないんだよ」
紹介状がないというだけでどこにも雇ってもらうことはできなかった。
「なんだい、坊主。飯のタネに困っているのかい?」
「うん。商人になるつもりで町を出てきたんだけど――」
「紹介状がなくて働き口をもらえなかったんだろう?」
ヨハンがどうしてそれを、という表情を浮かべると、
「坊主のような若い者がうちに泊まるときの王道ってやつさ」
「……それじゃあ、過去の人たちはどうしたの?」
「それはもう――冒険者になるしかないね」
「冒険者?」
それからヨハンは魔法協会に足を運び、冒険者となった。
そこで脳筋狂戦士のガンマと、陰湿闇魔法使いのベータと出会った。
二人とヨハンの相性はよかった。
実力はあるが素行にも問題のある二人と、実力はないが素行にも問題がないヨハン。
何でも壊すガンマは、文字通りなんでも壊した。
頭もよくないガンマはわからないことがあれば、すぐに暴れる都市のはみだし者だった。
ヨハンは彼女の面倒をよく見た。
「――ダメだよ。これは壊したら。みんな困っちゃうからね。え? どれがよくて、どれが悪いかわからない? んー。わかった。俺がいい、っていうからそれ以上は壊したらダメだよ?」
何でも呪うベータは、些細なことでも呪いで復讐した。
肩がぶつかっただけですぐに呪いを振りまくガンマは、都市のあぶれ者だった。
ヨハンは彼女の面倒もよく見た。
「――ダメだよ。そんなに簡単に呪いを使ったら? え? ばれない? そう言う問題じゃないよ。イライラが溜まるのなら、俺がその解消に付き合ってあげるから、そんなすぐに呪いをかけたらダメだよ?」
戦闘は一切関与せず、後ろでガンマに壊していいものを指図する以外には戦闘中にやることはなかった。
前衛はガンマ、後衛はベータ。
この二人の組み合わせは、魔物だろうが人だろうが誰も止められなかった。
ヨハンは生きているだけで周りからの評価が勝手に上がっていった。
三ヶ月も経つ頃には、都市の冒険者の中で期待の新人として真っ先に名前が挙がるようになった。
半年も経つ頃には、期待の新星としての地位を確固たるものにした。
一年も経つ頃には、若くしてその名が都市に轟くほどだった。
三年も経つ頃には、ヨハンたちが都市の冒険者の代表格に数えられるまでになった。
それもすべてガンマとベータの暴力的なまでの力あってこそ。
ヨハンは相変わらず、ガンマの隣の特等席で二人の戦闘を見ているだけだった。
二人は名誉に執着はなかった。
ガンマは食べることに、ベータは実験に稼いだお金を注ぎ込む。
それだけで二人は満足だったからだ。
もちろんそんな二人にお金の管理などできるはずもなく、出会った当初は二人とも借金まみれだった。
それも三人でパーティーを組んでから、コツコツと返済させた。
三年も経つ頃には、二人はすべての借金を返すことに成功した。
ヨハンは二人のおこぼれに授かる形で三年間、あれよあれよと魔法協会からの評価を稼いだ。
――稼ぎ過ぎていた。
「お腹痛い……」
三人で住んでいる都市の一等地にある拠点の屋敷。
王族に、都市の領主に、魔法協会の支部長から騎士団の偉い人等々の早々たる面々の手紙で、ヨハンの机の上は埋もれていた。
どの手紙も宛先には、
『パーティー”祝福の牙”のリーダーヨハン殿へ』
そう綴られていた。
ヨハンは倒れるように顔から手紙の山に飛び込んだ。
「どうしたヨハンサマ! 腹へったのか! お前はトクベツだからな! ほら、アタシの肉を喰え!」
「どうしたんですかヨハン様? 嫌いな人でもいましたか? 私が呪って差し上げましょうか?」
やんごとなき人どころか、そもそも家族以外に手紙を出したことなど一度もない。
ヨハンは筆を持つ手が震えて文にならなかった。かと言って、立場ある者からの誘いを無視するわけにはいかない。
――おかしい。何かがおかしい。
ヨハンは正当に自分が評価されていないと感じていた。
否、不当に評価されていると感じていた。
ある日、ヨハンは人目を忍んで魔法協会へと足を運んだ。
こうして一人で足を運ぶのは初めて訪れたとき以来だった。
事前に約束を取り付けていた支部長との面談の為に、一等豪華な応接室へと案内された。
緊張から全身に力が入る。
支部長への異見する機会というのは滅多にあることではない。
ほどなくして支部長が訪れた。
魔法協会の幹部の中でも切れ者として評判で、その支部長の指揮の下で、この町の魔法協会の支部の評判は国内でも随一を誇っていた。
挨拶もほどほどにして、支部長にヨハンは、
「俺の評価おかしくないですか?」
開口一番でそう会話を切り出した。
――評価が高すぎる。
「……やはりそう思われていましたか」
ふぅ、と深くため息を吐いた支部長に思わず笑みが零れる。
緊張が解けた反動で膝が笑い出しそうになるが、それを手で抑えながら、
「当たり前じゃないですか。おかしいと思ってたんですよ」
支部長はその視線を落とした。
「……一つお聞かせ願いたい。どうして今なのです?」
「いろいろ限界なんですよ俺も……」
そう言って笑った。
「わかりました」
ヨハンの真剣な眼差しに魔法協会の支部長は深刻な表情で頷いた。
「本当に……よろしいのですね?」
――俺の名誉を気にしてくれているんだろうか? いまの上級冒険者から中級冒険者への降格は不名誉と言えば不名誉だしな。でも、俺の実力からしたらまだ中級冒険者でも高いくらいだ。それに俺のお腹の痛さはもう限界だ……。
支部長の問い掛けに今度はヨハンが頷く番だった。
――よかった。これで少しは楽に生きられる。
その数日後、ヨハンは魔法協会で最高位の冒険者を示す『特級冒険者』に認定された。
ヨハンは拠点としていた都市から逃げ出した。
◆ ◆ ◆ ◇
ヨハンは拠点としていた町から馬車で数日移動した先にある村へと移住した。
魔法協会の支部もなければ、他に何もない小さな村である。
ちなみに、ヨハンは夜逃げ同然に逃げてきたのに、当然の如くにガンマとベータはついてきた。
こっそり荷物をまとめて人目を忍んで町を出たのに、野宿した次の朝。
両隣に二人はいた。ヨハンは大きく深呼吸すると、諦めて目の前の現実を受け入れた。
ヨハンは、ほとぼりが冷めるまでこの村で過ごす予定だった。
今ごろは新たな特級冒険者の誕生にどこの魔法協会も大盛り上がりだろうから。
幸いにしてヨハンには蓄えはある。
魔法協会の依頼をこなしつつ、これまでに稼いだ蓄えでのんびり過ごして、あわよくば可愛いお嫁さん欲しいなぁ、という気持ちでこの村へと移住した。
新しく購入した村外れの年季の入ったお屋敷で、ヨハンは頭を悩ませていた。
これもまた当然の如く、ガンマとベータは住み着いた。
新居の整理を終え、一息をつくことができたヨハンは、久しぶりに一人で落ち着いた時間を過ごしていた。ガンマとベータはまだ夢の中だった。
お気に入りの茶葉で煎れたお茶を啜る。
「これからどうしようか……?」
「――話は聞かせてもらったッ!」
扉を勢いよく開いた登場したのは幼馴染のアルファだった。
三年ぶりにみる彼女の美しさには磨きがかかっていた。
しかし、ヨハンの脳内を支配したのは別のことだった。
「ど、どうして……?」
――また、ややこしいのがきた。
ヨハンはただそう思った。
アルファには故郷の町を出てから何一つ情報を渡していなかった。
どの都市へ行くかも。冒険者になったことも。冒険者となった都市を出たことも。
「……誰だお前!」
「……お客さんを招いたつもりはないのだけれど?」
騒ぎを聞きつけて寝間着姿の二人も居間に姿を現した。
ガンマとベータはアルファを見ると、まるで魔物をみるような目でアルファを睨みつけるが、当のアルファはどこ吹く風だった。
「ごめんなさいね、ヨハン。でもやっと私は、貴方の影に追いついたわ。いえ、影に手が伸びたわ」
恍惚とした表情を浮かべ、ヨハンに手を差し伸べるアルファに、
――なにを言っているんだコイツは?
内心でアルファに引いていた。
久しぶりにあってもアルファはアルファだった。
そこからあれよあれよ、と話は急展開を迎えた。
アルファの登場に不快感を現われにしていたガンマとベータだったが、
ガンマとは拳で語り合うという超脳筋意思疎通を。
ベータとは魔法をぶつけ合うという魔法乱舞意思疎通を。
血みどろになって意思疎通を図る美少女たちに、ヨハンは盛大に引いていた。ドン引きである。
原始的な意思疎通の結果、三人は笑顔で食卓を囲む仲へと落ち着いた。
ただ、ヨハンだけが笑っていなかった。
こうして四人の生活が始まった。
「どう思う?」
「――どう思う?」
「ふっ、わかってるさ」
アルファは相変わらず物知り顔だった。
ヨハンも相変わらずアルファが何がわかっているのかわからなかった。
「この魔法陣の術式なんですが、ここってこっちに繋げた方がいいんでしょうか。でもここをそっちに繋げると術式は複雑になりますが、効率的になると思うんですが?」
「――こっちに繋げて簡単にするか、そっちに繋げて効率的にするか」
「そう、そうですよね。効率性も大事ですけど、私以外の人も使うことを考えるとと汎用性も大事ですね」
この頃になると、アルファとガンマの質問には同じ質問を被せると、ニ人が勝手に納得してくれることに気がついた。
ガンマはアルファやベータと違って難しい話をしない。
それに行動が単純でわかりやすい。
それだけは救いだった。
ただ――、
「ヨハンサマー! お風呂入るぞー!」
「服を着なさいガンマ。それにいい加減一人でお風呂にくらい入りなさい」
「えー! ベータも一緒に入るか! どうせならアルファも一緒に! みんなで!」
獣人族の中でもかなり野性的な氏族の出であるガンマは、出会ってから何年経っても羞恥心に欠けていた。早い話が裸族だった。そんなガンマは、ヨハンに体を洗わせるのと、毛繕いさせることはほぼ日課であった。
ベータが潤んだ瞳で、
「ヨハン様がお望みでしたら……?」
そう言ったかと思うと、その後ろかルンルンの足取りで、
「私も入るー!」
アルファが幾分か幼くなって着ていた服に手をかける。
「いい、いい! 来なくていい!」
ヨハンは二人を必死になって引き留める。
四人で生活を初めて一ヶ月もする頃には、三人の女性陣はヨハンをそっちのけで話が盛り上がる仲へと成長した。
「さて、計画を進めましょうか」
「計画! 計画!」
「いよいよですね?」
ヨハンにとって三人は混ぜるな危険以外の何者でもなかった。
アルファは昔からあたおかであったが、ガンマとベータも負けず劣らずあたおかだった。
「ちょっと何言って――」
「みなまで言わなくてもわかっているわヨハン。安心して」
――昔からおまえは何もわかってねぇんだよぉぉおお……!!
その心の中の慟哭が言葉になることはなかった。
ただその代わりに、ヨハンの頬はピクピクと引きつった。
◆ ◆ ◆ ◆
ヨハンが田舎の村へと引っ越して一年後。
ヨハンはアルファと街中を散歩していた。
「――なぁ、アルファ」
「どうしたのヨハン?」
ここ最近、いや半年前から薄々気になっていたことを尋ねる。
「――なんか村でっかくなってない?」
村は町へとその姿を変えていた。
人通りも見違えるほどに多くなっていた。
「あれ? 魔法協会の派出所なんてあったっけ?」
「あぁ、あれ? どうしてもっていうからショバ代を払うことを条件に場所を貸し出しているの」
国を跨いで活動する魔法協会には、大金を払ってでも誘致する都市がほとんである。
それがこの町では魔法協会が少なくない金を払って、ひっそりと拠点を構えていた。
街中を歩いていてさらに気がついたのは、
「あそこの角の金貸しって昔ガンマとベータが金を借りてた――」
「あぁ、その件だけど二人が返したお金は返してもらったわ」
――ん? んーと……? 返した借りたお金を返してもらった? とんちかな?
「私たちは家族みたいなものじゃない? ってことはあの金の亡者たちはヨハンの家族からお金を巻き上げたってことじゃない――」
「巻き上げたというか、借りていたお金を返したんだけどね」
「――しかも借りたお金以上のお金を」
「うん、それは利息って言うんだけどね」
「――そんなの許せないじゃない」
金融業の全否定である。
「大丈夫よ。それと引き換えにこの町で店を構えることを特別に許可したから。今この町の地価は高騰し続けているわ。ここで商いをしたい人も掃いて捨てるほどいる。でもね。ここはヨハンの村。言わば王都! ヨハンに相応しい者以外は許さないわ!」
――ひょっとしてヨハンって、俺以外に誰かいる? だれか他の人が見えている?
ヨハンは興奮するアルファを前に遠い目をしていた。
「あっ、そろそろ屋敷に戻りましょう。もうすぐ仕立て屋さんが来る頃だわ」
「仕立て屋さん? アルファはドレスか何か買うのか? それともガンマとベータか?」
「私たちじゃないわ。あなたよヨハン。貴方が来週お披露目で着る服を仕立てるのに、国内で一番の仕立て屋さんを見繕ったわ。それで見る目がない愚かな者にもヨハンの凄さが伝わるといいのだけれど」
――見る目がないのはおめーだよ!
「な、なんのお披露目?」
「この町の領主としてのお披露目よ。ようやく中央の頭の固い連中もヨハンのすばらしさに気がついたようね。まぁ、爵位なんてヨハンの前ではあってないようなものだけど……何事にも権威付けって大事だと思うの」
「……誰がこの町の領主になるって?」
――権威付けの前に常識ってものが大事じゃないですかねぇ!?
「……ごめんなさい。えぇ、もちろんわかっているわ。一時とは言え、誰かの下につくことは不服でしょうけど、私を、ううん、私たちを信じて欲しい……!」
――信じられるかぁぼけ!
なんて言えたらいいのだけれど、ここまで来るとアルファたちの信頼の梯子を外すのが怖い。
ヨハンにできることと言えば、
「……うん」
悟りの心で頷くことだけだった。
屋敷へと戻ると、ガンマとベータが笑顔で迎える。
「ヨハンサマ!」
「ヨハン様?」
三人の美女に囲まれる生活。
男なら垂涎ものの生活だが、ヨハンにとってはそうではない。
「アルファ? ヨハン様はどうかしたの?」
「領主の話をしたんだが、やはり彼には不満らしい」
「ヨハンサマはすごいからな!」
高まる期待。黙っていても高くなる評価と地位。
ヨハンは心の中で叫んだ。
――勘違いだぁぁああ!!
ヨハンの名前はこのあと歴史に大きく刻まれていくことになる。
歴史となった彼の名前の傍には、常に三人の女性の名前があったとかなかったとか――。
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よろしくおねがいします。