お茶会
「わかったわ!私のお友達の輪を広げるわ!」
時間通りに、ベラちゃんとティアラちゃんは来た。もちろん、ペットのコアラのインナー君とうさぎのミミーも一緒だ。
ベラちゃんもティアラちゃんもマルリラを手土産に持って来てくれた。
2人とも手土産が被って、お互いあっというような顔をしたが全然問題ない。
マルリラはいくらあっても多いということはない。
ウメも好物だしね。
「今日は、私のお茶会に来てくださってありがとうございます。ささ、遠慮なくお座りください」
まずは主催の私のご挨拶だ。
私は自慢のこたつを勧めた。
もうユーリカちゃんはコリムを膝に乗せ、ホワホワした表情でこたつに浸かっている。
インナー君はベラちゃんに下に下ろされるとペット広場でゴロゴロしているウメの方にトコトコ行き、ミミーはそのままティアラちゃんの後ろをピョンピョンついて来た。
「あ、あのキャロちゃん?ここに座るのでしょうか?」
ティアラちゃんが遠慮がちに尋ねる。
「そう、このこたつ布団をめくってこんな感じに入ってね」
私は実際やってみせる。このワサワサしたドレスは邪魔だけど、こう足ではさんでヒョイッと入るのがコツだ。
2人は恐る恐る入ると、目を見開いた。
「すごいですわ。中は温かいのですね」
ミミーもコリム同様ティアラちゃんのお膝に乗って目を閉じてヌクヌクを堪能している。
「では、私の方から紹介しますね。こちらユーリカ・フィジマグ公爵令嬢です」
「ユーリカと名を呼ぶことを許しますわ。この子はコリムよ」
ユーリカちゃんはツンと2人を見据えた。大分緊張しているようだ。
ベラちゃんは笑顔を貼り付け、ティアラちゃんは心配そうに私を見た。
「こちらはティアラミス・ロニドナラ侯爵令嬢です」
「ティ、ティアラミスと、どうぞお呼びくださいませ。この子はミミーです。よろしくお願いします」
ユーリカちゃんがティアラちゃんを険しい顔で見た。
ティアラちゃんが小さくヒッと悲鳴を上げて俯いた。
ああ、きっとユーリカちゃんてば、呼ぶことを許すじゃなくて自分もお呼びくださいと言えば良かったとか、よろしくお願いしますを言い忘れたとか思ったんだね。
「こちらはイザベラ・マルケット伯爵令嬢です」
「イザベラとお呼びください。よろしくお願いいたします」
ベラちゃんが言うと、ユーリカちゃんがさらに険しい顔で睨んだ。
ベラちゃんも負けじと睨み返した。
ああ、ベラちゃん、昔の血が騒いだようだ。
今は随分丸くなったけど、出会った時は血気盛んだったもんね。
「今、お茶を淹れますね」
私は険悪な雰囲気を和ませようと、お茶を淹れて空気を変えることにした。
私は魔石のポットから、急須にお湯を入れて緑茶を湯呑みに注ぐ。
「あ、ユーリカ様の、茶柱が立ちましたよ!」
「キャロライン、茶柱って何?」
「いいことありますよってサインです。残さず飲むとよいですよ」
「そう、よくやったわ」
ユーリカちゃんがすごい勢いで飲み始めた。
初手でしくじったと思うユーリカちゃんの、なんとかしようと茶柱に頼る気持ちが伝わってくる。
「ベラちゃんとティアラちゃんも遠慮しないで飲んでね」
この世界では紅茶が主流だから緑茶は珍しい。
ユーリカちゃんから毎年贈られる、誕生日プレゼントのいろいろなお花にお茶の葉のお花が混じっていたのだ。
もちろん練習して魔法で出せるようになった。
が、お茶っ葉の作り方なんて私は知らないので、適当にちぎってお湯に入れるだけだ。
それでも意外なことに、前世のお茶と同じ味で重宝している。
「綺麗な緑色ですね」
「これはお砂糖やミルクを入れないで飲むのですね。苦味がありますがすっきり飲みやすいですね」
良かった。お口にあったようだ。
「ミルカンやお菓子も適当に摘んでね」
私は言いながら、ミルカンを3人の前においた。
「キャロライン、食べ方がわからないわ」
ああ、確かに。公爵家ではこんな皮付きではなく綺麗に食べやすく出てくるだろう。
「真ん中にブスッとやって、こう剥くと中身が出ますよ」
「キャロラインがやりなさい」
2人を前に緊張気味のようでユーリカちゃんの手が震えていた。
「いいですよ。ベラちゃんとティアラちゃんのも私が剥こうか?」
「あ、あの、ユーリカ様。キャロちゃんはユーリカ様のメイドではないので命令するのはどうかと思うのですが……」
ティアラちゃんがおずおずと言った。
「キャロライン、そうなの?」
ユーリカちゃんの混乱が伝わってくる。
「ユーリカちゃん、大丈夫ですよ?ティアラちゃんも心配してくれてありがとう」
私はミルカンを剥いてユーリカちゃんに渡した。
「ティアラミス様、公爵令嬢を前にキャロちゃんの立場では何も言えませんわ。裏でフォローするべきかと」
「は、はい……」
どうしよう、そんなミルカンの皮ごときが大事に取られてる!?
みんなでミルカンを食べながら、お互いを探るようなピリピリした空気が部屋に流れた。
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