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ウルウルプルプル

よし!これなら私の順番は来ないだろう!

「ティアラミス様、本当に申し訳なく……」

 イリアス君がガールズ達に連れられていなくなると、ルーベルト君がその大きな体を小さくさせてティアラちゃんに跪いた。


「ルーベルト、立ちなさい。ここは王城です。ロニドナラの騎士見習いが侮られては困ります」

「はい」

 バネでも仕込んでいるのかというくらい速やかに立ち上がる。


 ん?その足元に小さな何かが?

「チワワ?」

「はい。キャロライン様、私のペットのチクワです」

 大きなクリクリの瞳がウルウルして小さな体がプルプルしてる。


 これは可愛い過ぎる!

「ティアラちゃん、何かルーベルト様がやっちゃったみたいだけど許してあげて。チクワ君がウルウルでプルプルなんだよ」


「はい。キャロちゃんがそう言うなら許します。ルーベルト、キャロちゃんとチクワに感謝なさい」

「はい。ありがとうございます」

「いえいえ。ところで、ルーベルト君、大丈夫だと思うけど受け身は得意だよね?」

「はい?受け身?得意かは分かりませんが、まあ、普通に?」


 よし!大丈夫そうだ。

「ルーベルト、キャロちゃんと一曲踊りなさい」

「了解いたしました。でも、ダンスと受け身と何の繋がりが?」


「ルーベルト様、私のダンスは訓練の型と同じレベルです」

 ルーベルト君の顔が恐怖に引き攣った。

「も、も、申し訳ありません。私には荷が重いかと」

 お願い、チクワ君と一緒にウルウルプルプルしないで?


「き、昨日はちゃんとお兄様と踊れましたから大丈夫ですよ?」

 小さく心の中で多分と付け加えた。

「初めはキャロに全て足を踏み抜かれて、避ける事もできないくらい鋭く足をかけられて倒れたけどね?でも、大丈夫。キャロは羽のように軽いし、受け身が取れるならちゃんとキャロを庇えるよ」


 お兄様、失敗前提にいい感じに言わないで〜!

 ルーベルト君のウルウルが増しプルプルが尋常じゃない速さになってるよ!?


「って、冗談だよ。ちゃんと昨日踊れたから。まさかキャロを断ったりしないよね?」

 お兄様が小首を傾げてニッコリ笑った。

 あれ?後ろに黒い羽?

 ルーベルト君がフッと笑った。

「はい。精一杯務めさせていただきます」

 一周回って悟りの域に達した顔で頷いた。


「あ、曲が流れ始めた」

 きた!とうとうきた!

 覚悟を決めるんだ!私!


 今からはダンスタイムだからペット達はペットシッターに預けられた。

 初めの3曲は私達デビュタントの女の子達がパートナーと踊るのだ。


「では、キャロちゃん行きましょう」

 ティアラちゃんはルーベルト君にスッと手を差し出した。

 どうやら、ティアラちゃんの1曲目はルーベルト君のようだ。


「お、お兄様」

 私は一気に緊張が駆け巡り体が強張るのを感じた。

「大丈夫。キャロ。曲は聴かない。周りに合わせない。僕に丸投げして」

「……はい」

 ティアラちゃんとルーベルト君がえ?という顔で見た。


 そうだよね。とてもダンスのアドバイスじゃないよね?

 ごめんよ、でもこうしないと踊れないのだよ〜。

 いや、昨日は大丈夫だったけど今日も大丈夫とは限らない?


『キャロ、我がおる』

 その時ペットコーナーにいるウメが力強く頷いた。

 え?ウメがいてどうなると?

 いや、ウメがいれば時戻しの魔法が使えるじゃないか!?

 そうだ!失敗したらなかったことにしよう!


「キャロ?大丈夫?」

 私は一気に気が楽になった。

「お兄様、大丈夫そう」


 そうしてお兄様とホールドのポーズをとり、私踊れますの表情を作った。


 王城のオーケストラ隊の曲が流れ始める。

 うん。分からない。リズム全くとれない。

 さっさと素晴らしい音楽は意識の外にポイする。

 私はあれだ。


 例えるならば、前世で見た年初め芸◯人隠し芸大会番組の棒の左右にくっついた人形だ。

 真ん中の人間の部分がお兄様。音楽に合わせて踊ると棒で繋がっているから人形も真ん中の人間と同じ動きをするのだ。

 それを前後にする感覚だ。

 とにかく同じ方にくっついていく事だけに集中するのだ。


 お兄様の右足が前に出たら私は左足を後ろに、右に行ったら私もそっちに。ひたすらお兄様に動きを丸投げするのだ。

 音楽?動き?ポーズ?知らんがな。

 そんなもので私は踊れない。

 頼りは踊れて万が一の時は受け身が取れるパートナーだ。


 そうして、ひたすら前後ろ右左クルクル右右とお兄様にくっついていく。

 そうして、ジャン!と曲が終わった!

 よし!倒さなかった!倒れなかった!踏まなかった!よし!


「お、お兄様」

 私は喜びに目を涙で潤ませて満面の笑みを浮かべた。

「バッチリだったよ!踊れていたよ!」

 うん。踊った気は全くないが、踊れたように見えていたのなら良かった。


「キャロちゃん!素晴らしかったですわ!とても美しいダンスでしたわ!踊れるではありませんか!?」

 ティアラちゃんが興奮したように褒めてくれた。

 踊りながらも心配して見ていてくれたのだろう。

 

 その隣でお兄様は次の私のパートナーのルーベルト君に私と踊るアドバイスしていた。

「いいか?キャロに合わせようとしては絶対に!絶対に!駄目だ。巻き込まれたら、もう巻き返せない。パートナーではなくただの天使のお人形のつもりで1人で踊っているつもりで踊るんだ」


「は?え?へ?」

 ルーベルト君が意味が分からず目を白黒させた。

 うん。ダンスのアドバイスじゃないよね……。


「ルーベルト、あなたは何も考えず言われた通りにすれば良いのです」

 しかし、脇で聞いていたティアラちゃんは何かを察したのだろう。

 的確に指示した。


「は!了解であります!」

 ルーベルト君から一切の迷いが消えた。

 2曲目も、忠実に1人で踊るようなルーベルト君に丸投げで乗っかり私は無事踊り切った。

 よし!あと一曲!

 あれ?でも3人目は誰と踊るの?


 


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html>   html>   好評発売中 ♪
― 新着の感想 ―
[良い点] わーお兄様に一本キメずにやりきったキャロちゃんおめでとうございます! [一言] そりゃ、3人目はあの方デスヨネフフフ♡めっちゃ鍛えてそうだしお兄様のアドバイス理解できて安心だ。 ルーベルト…
[良い点] なるほどマリオネット舞踏法w
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