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ロニドナラ侯爵夫妻の謝罪

いつの頃からか村々でエンナ〜リ、エンナ〜リと謎の呪文が響くようになったとかなんとか?

「あの大きなお屋敷がロニドナラ侯爵家ですか?」

 目をキラキラさせてキリルが私に尋ねた。

「そうだよ。ほら、馬車の中で立つと危ないから座ってね」

「すみません、こんなに立派な馬車に乗るのは初めてで興奮してしまいました」

 うん、気持ちは分かる。


 今日はロニドナラ侯爵家の騎士見習い訓練に参加をさせてもらう日だ。

 前回はお兄様が一緒だったが、今回はキリルが一緒だ。

 もちろんウメも。

 もし、キリルが侍女に来てくれてなかったら危うく私はウメと2人で行くようだった。

 そう考えるとキリルはとても良いタイミングでうちに来てくれたのかもしれない。


 気絶した前回から初めての訓練だし、お兄様がいないのでドキドキしていたが、興味津々にクルクル表情を変えるキリルのおかげで気持ちも和む。

 とりあえず続けて気絶はまずいので、今回は気絶は諦めるつもりだ。


 まさに武の一門といったごつい門をくぐり、しばらく走るとやっとロニドナラ侯爵家に着いた。

 久しぶりにティアラちゃんにも会えるだろうか?

 最近忙しいのかお手紙が来なくなってしまっていたのだ。


 馬車からキリルが先に降り、キリルの手を借りて馬車から出ると家礼のバッカスさんが前回同様に出迎えてくれた。

 バッカスさんは武の一門の中でゴツくてでかい他の方々と違って、シュッと細マッチョなナイスミドルなおじ様だ。


「ヴィゼッタ様、ようこそいらっしゃいました。本日はウメ様は当家のペット広場でお預かりいたしますか?」

 前回はお試しなのでウメはティアラちゃんと見学だったが、さすがにお試しではない今日からは他の騎士見習い達同様に預かってもらった方が良いだろう。


「ウメ。いいですか?」

『我は構わぬ』

「はい。よろしくお願いします」

 私はバッカスさんが呼んだビースターメイドのお姉さんにウメを渡した。


「バッカスさん、着替えたいのでどこかお部屋をお借りしても良いですか?」

「はい。お部屋をご用意してございます。その前に旦那様と奥様がご挨拶したいそうです」

 ご挨拶?


 私はバッカスさんについて行った。

 もう、挨拶は前回終えているし何だろう?

 もしや気絶した件でやっぱり訓練の参加は見合わせるとかだったらどうしよう。

 そして、バッカスさんがドアを開けた瞬間目に入ったのはまさかの土下座のお二人の姿だった。


 本来ならバッカスさんに続いて中に入る流れだろう。

 いや、でも土下座の侯爵夫妻!?

 私はスッとドアを閉めた。


 落ち着こう。

 見間違いかもしれない。

「キリル、今何が見えた?」

「いえ、私は何も見ておりません。土下座など全く見ておりません」

 キリルがブンブン首を横に振る。

 あ、やっぱり見間違いではなさそうだ。


「ヴィゼッタ様?いかがなさいましたか?」

 後ろに続かない私にバッカスさんが不思議そうにドアを開けた。

 土下座の侯爵夫妻がおいでやすとばかりに待ち構えている。

 バッカスさんの目には入らないのだろうか?


「ああ、お二人のあのお姿に驚かれたのですね。お二人共謝罪の意を表しているだけですので、どうぞお気になさらずお入りください。旦那様、やはり謝罪するなら頭を丸められた方が誠意が伝わったのでは?」

「いや、それはバッカス。2度と生えぬ危険が……。私の毛根が耐えられるか、その……」

「その方が誠意がヴィゼッタ様に伝わりますよ。ね?」

 お願い。私に振らないで!


「いえいえいえ、何の謝罪ですか!?とにかく土下座などお止めくださいー!」

 涙目で2人の土下座を起こそうとしたが岩のように動かない。


 これ、どうしろと!?

 思わず助けてとキリルを見たが、キリルは侯爵夫妻の土下座を見ないよう壁に向かって立っていた。

 そうだよね!?正しいさ!


「こんな頭を丸める事もできない謝罪で申し訳ないが許していただけるか?」

「ゴードン様に代わり私が頭を丸めます。私の毛根は生きているから問題ありません」

 レティライト様がキリッと言った。

 何言ってるの!?


「謝罪を受けます。許します。お願いですから、頭をお上げください」

 一体何の謝罪か分からなかったが、私は涙目で叫んだ。



 やっとお二人がソファに座ってくれた。

 キリルもやっと壁から離れ、ソファに座った私の後ろについた。

 バッカスさんが反省するなら床に座った方がよろしいのではと2人に勧めたが、それは私がすかさず阻止した。


「本当に気絶などさせてしまって申し訳なかった。そもそも、私の勘違いが原因だ。今後このような事がないよう気をつける」

 勘違い?よく分からないが曖昧に微笑んでおいた。


「ロニドナラ侯爵、あの気絶は私が不甲斐ないからですわ。こんな体たらくではみんなを守れません。どうぞ、前回同様鍛えてくださいませ」

 そう、世界のために要気絶なのだ。


 私がどんと来いとばかりに言うと、お二人が止めの一撃をくらったような表情をなされた。

 はて?


「ヴィゼッタ様、やはり旦那様と奥様は床に座らせましょう」

 バッカスさんがいい笑顔で床を指差した。


 いやいや、止めて!?お二人共、スッと床に座ろうとしないで!?







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html>   html>   好評発売中 ♪
― 新着の感想 ―
[一言] この夫婦こんなに執事にスムーズに謝罪を指導されているということはつまり、結構ひんぱんにやっちまってるってことですね……?? 執事さんが猛獣使い…いやいやドッグトレーナーに見えました。ここんち…
[良い点] キリルたん、お金でおかしくならない時は最速最適解の子で安心ですね! [一言] ハゲ散らかされてもそれは謝罪側の自己満足やろがい
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