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ソロバンの勉強会

「はい!喜んで!」


忘備録

⭐︎ノット→見た目は40歳くらいの筋肉隆々の山賊みたいな風貌だが眉が八の字の優しいおじさん。実はこう見えてまだ20代

⭐︎チャパ・チャス→20歳を超えたくらいの見た目の細目でヒョロっとした双子。実は一番年長者の30代

⭐︎サリー→ 気が強そうな雰囲気のソバカスのあるグラマラスな女性

⭐︎サウド→亡くなった母親が他国の方でこの国では珍しい褐色の肌。サリーの夫

⭐︎ヴィゼッタ領に商会を立ち上げる事が5人の夢。

王都のミンドル商会で働いたが酷い扱いを受けた上、サリーが商会長の息子の愛人にされそうになったため帰郷





 午後の約束の時間より大分早く、ノットさん達が来た。

 待ちきれなくて早く来すぎてしまったから外で待っていたようだ。

 キリルが見つけたので、準備していた部屋に連れて来てもらった。


「ノットさん、先日はキリルを助けてくれてありがとうございました」

「あ、お嬢のところの(ゆかり)の男の子で?それは良かったでさあ」

 まだ目の前いるキリルと行き倒れていた子が一致していなかったようだ。


「ノットさん。行き倒れていたのは私です。助けてくださりありがとうございました」

 キリルが丁寧に頭を下げた。


「へ?女の子?」

「そう、お試しでひと月私の侍女になるキリルだよ。みんなもよろしくね」

「へい。あっしはノットでさあ。キリルさん、元気になったようで良かったでさあ」

「ありがとうございます」

「あたしはサリーだよ。こっちは夫のサウド。よろしくね」

「よろしくお願いするです」

「「チャパとチャスです。よろしくお願いします」」

「キリルです。どうぞよろしくお願いします」


 お互い挨拶も終わったので、早速ソロバンのお勉強会だ。

「「お嬢、お借りしていたソロバンをありがとうございました」」

「どういたしまして。それで、ソロバンはできてるかな?」

「それがまだ、納得いくものはできてないんでさあ」

 ん?でも、みんなソロバンを持っているよね?


「ここもっとスムーズに動くしたい」

「あと珠の形をもっと手に馴染むようにしたいんだよね」

「もっと丈夫にしたいでさあ」

「「材料を安く抑えられるか試行錯誤してます」」

 なるほど、みんな凝り性なんだね。


「すごいソロバンができそうだね」

「期限とかいいんでさあ?」

 期限?別に勉強会で使えるソロバンさえあれば、納得いくまで自分のソロバンを凝って作っても構わないよね?


「期限はないよ。納得いくまで頑張ってね」

 みんなは何故がジーンとした顔で頷いていた。

「素晴らしいソロバンを作ってみせるよ!」

「お嬢、がんばるでさあ!」

「がんばるする!」

「「納得のいくソロバンを作ります」」

「楽しみに待っているね」

 みんなの凝りに凝ったソロバンを見るのが楽しみだ。


「じゃあ、まず宿題から見ていこうか」

 私は出してあった宿題を見ていく。

 うん、みんなちゃんと丸つけして何回も繰り返してある。

「みんな、よくできてるね。じゃあ、今日は新しい問題をやろう」


 私は新しく作った問題をキリルに配ってもらう。

 縦に10個並んだ6桁の数字を足し算するもの、引き算を加えたたものが10問の問題集だ。


「一番上の問題をこの砂時計が落ちるまでに速く正確に計算してね」

 私は10分間で落ちる砂時計をセットした。

「では、よーいスタート」

 みんなは一斉にソロバンを弾き始めた。

 まだまだ指の動きがぎこちなくゆっくりだけど、しっかり動かせている。


 私は一人一人を見ながら姿勢や指の動きをチェックしていった。


「はい。それまで。じゃあ、丸つけしていこう」

「あたしは後半に間違いが多いね〜」

「俺ここの繰り上がり間違いする」

「「引き算入ると難しいです」」

「あっしはあんまりできなかったでさあ」

 みんなワイワイと楽しそうだ。


「計算は速く正確にが大事だよ。まず、サリーさんは最後の方に間違いが多いのは姿勢が前のめり過ぎで疲れちゃうからだね。姿勢をこんな感じにしてやると後半も集中してできると思うよ」

「分かった」

 サリーさんはピッと背筋を伸ばす。


「サウドさんはまずは繰り上がりの時は隣の珠を動かすって意識してやってみて。慣れたら勝手に指が動くようになるよ」

「やってみるする」

 サウドさんはニパッと笑顔で返事をした。


「チャパさんとチャスさんは引き算が入ると慌ててしまってるからゆっくり丁寧にソロバンを弾いてみて」

「「了解しました」」

 神妙な顔で2人は頷いた。


「ノットさんはゆっくりだけど正確で良いね。どんどんスピードアップしよう。指をこんな感じに動かすと速くできるよ」

 私は見本を見せる。

 うん、久しぶりだけど、ノットさん達が作ったソロバンは前世の物より少し大きいけどよく似ているからやりやすい。

 パチパチと小気味良い音でソロバンを弾いていく。


「お嬢、この指の動きは魔法で?」

「魔法じゃないよ。練習すればみんなこれくらいすぐだよ」

 みんながおおーと目をキラキラさせた。


「もう少し珠が小さいともっとやりさすそうだね」

「「はい。他には?」」

 チャスさん達がメモをスチャッと出す。

「あとは珠の形をもっとこんな感じにすると、で、間隔をもっと詰めて……」

 私は前世のソロバンを思い出して伝えていった。


「なるほど〜、分かったでさあ」

 みんなが大きく頷いた。

 前世のソロバンは匠が追求した一品だろうからぜひ、みんなの凝りに凝ったソロバンの参考にして欲しい。


「じゃあ、アドバイスを頭においてもう10分計算してみよう。次は2ページの問題を開いてね」

 そして、また10分間。

 みんな始めより正解が増えたようで良かった。

 うん、あとは慣れればもっと速く正確になりそうだ。


「みんな、足し算と引き算はバッチリだね。では、今日は新しく掛け算を勉強しよう」

「はい!」


 私はキリルに見せたように木の実を使って掛け算を教えていく。

 みんな食い入るように木の実を見つめる。

「なるほど〜!」

 みんなしっかり掛け算が理解できたようだ。

 帰りにキリルに掛け算の表を配ってもらおう。


 最後に読み上げ算をして終わりだ。

「では、最後に読み上げ算をするから頭にソロバンをおいてね」

 みんながスッとソロバンを頭に載せた。

 あれ?


「あ、ソロバンを実際に載せるのではなくて頭にソロバンを思い浮かべて足し算してね」

 真面目な顔で頭にソロバンを載せるなんてみんな素直だ。


「ではいくよ〜。願いましては、1円な〜り、5円な〜り」

「1エンナ〜リ?」

 みんなが不思議そうに目をパチクリした。

 そうか、ここは円ではなくてリラだった。

 うーん、でもリラだとなんか締まらないというか気分が出ない。


「円な〜りは集中を高める呪文のようなものだよ」

 私は適当な事を言って誤魔化す事にした。

「なるほど〜」

「ではいくよ、願いましては、1円な〜り、5円な〜り――3円では?」

「18エンナ〜リ?」

「17エンナ〜リ?」

 みんな自信が無さそうだ。


「はい!21エンナ〜リです!」

「キリル正解!」

「キリルさん、すごいね!」

「どうやるんでさあ?あっしは頭の端から数字が消えていくでさあ」

「そうそう、頭を真っ白になるよね?」


「私は頭の中にお金を積み上げていきます。チャリ〜ン、チャリ〜ンって。あ、よだれが」

 安定のキリルだった……。


「みんなは頭の中でソロバンをイメージしていくと良いよ。これも慣れればできるようになるからね」

「がんばるするよ!」

 みんなでオーとノリ良く拳を突き上げた。


「本当は子供の頃からやるものだけど、大人になってやってもちゃんと効果あるからね!頑張ろう!」

 私が最後に付け加えた言葉にみんなの目がキラ〜ンとした。


「お嬢、村の子供達に教えてあげても良いでさあ?」

「もちろん良いよ〜」

 


 私が軽い気持ちで答えた3年後……、ヴィゼッタ領の子供達の暗算力がとんでもない事になるのだった。

 いつの頃からか村々でエンナ〜リ、エンナ〜リと謎の呪文が響くようになったとかなんとか?







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― 新着の感想 ―
[良い点] 所々で現代日本の風物?が顔を覗かせる…… [気になる点] お金の匂い…印刷インクとと和紙の匂いじゃ無いとしたら…? ナニワ金融道の登場人物やその御同類にしか判らない何かなのでは無いか? と…
[一言] キャロたん前世チート順調に領の皆を幸せにしてますね、善き善き! 商会チームほんと真面目で良い方々。
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