3秒!?
チェリーブロッサムと唱えた。
――――シーン。
何も起こらないが、時が戻るのは3分だから分からないだけ?
「これ、3分巻き戻ってますか?」
『いや、戻っておらぬな。ん?其方まだ女神様の祝福を受けておらぬのか?』
女神様の祝福。
この世界では貴族は6歳になると王都の神殿で女神の祝福を受ける。
祝福を受けることによって一つ魔法を授けられるのだ。
魔法は人によって様々で、お父様は右腕の能力アップの魔法、お母様は植物の修復の魔法、お兄様は植物の成長促進の魔法だ。
うちは農家のような領地だからとても役立つ魔法だ。
ちなみに平民は魔法は使えない。
だから、聖女ルリは実は他国の王族の御落胤って設定だ。
で、私も6歳だから女神様の祝福を受けられるのだが、高位の爵位から順番に呼ばれるので、末端伯爵家の私はもう少し先になりそうだ。
「私はまだ女神様の祝福を受けていません」
『女神様の祝福を受けないと魔法と魔力の器が繋げられぬからな。どれ、器の大きさはどうであるかな?』
子ブタが私のおへそあたりを見る。
『おお、これは!』
もしや、転生チートか!?
『ちんまいの。これでは時を戻せるのは3秒だな』
はあ!?3分でも短いのに3秒!?
戻った実感もなさそうだ。
「器は大きくできないのですか?それか、すごい魔法を授けてもらうとか?」
そうだ、例えば心が読めるとかそんな魔法ならユーリカ様と第二王子を結びつけるのに役立ちそうだ。
いや、いっそ万が一魔王が復活してしまってもやっつけられるようなチートな魔法とか?
『何を言っておる。魔法は産まれる前に女神様に授けられておるだろうが。女神様の祝福は、魔力の器と魔法を繋げて魔法が使えるようにするものだぞ』
え?
と言うことは、神殿が言うように女神様の祝福で魔法を授けられるわけではないと?
まあ、結果は一緒だから良いのか?
神殿には黙っておこう。
「私の魔法は何ですか?」
『まだ種の状態でわからぬな。魔力の器と繋がることによって種から芽吹き魔法となるのだ』
残念。どんな魔法かは神殿に行くまでのお楽しみか。
何か役立つ魔法だと良いのだが……。
「それじゃあ、器を大きくする方法はありますか?魔力を全部使い切るとか?」
よくある鍛え方だ。
『もちろんあるぞ。死にかければ良いのだ。それも臨死までいかねば広がらぬ』
死にかけ……それはちょっと。
「他にはないですか?」
『死にかけて器が大きくなるのは何とか助かろうと器が広がるからだ。それと同じように感じれば良いのだ。体をとことん気絶するまで鍛えれば同じ効果が得られるであろう』
気絶かぁ……。でも、臨死よりはましか?
世界の運命がかかってるから頑張るしかないか。
ああ、でも頑張っても3分かぁ……。
私は遠い目をした。
「分かりました。ありがとうございます」
『うむ。よく励め』
「では、もう大丈夫です。どうぞ天にお帰りください。また必要な時に来てください」
子ブタをペットにする不思議令嬢と噂が広まったら大変だ。
『何を言っておる。我は其方のそばにいてこの世界を救うのだぞ』
「具体的には?」
『知らぬ。其方が考えれば良かろう』
「速やかにお帰りください」
安定の丸投げだったので速やかなご帰還を勧めた。
『我は世界が救われるまで帰れぬぞ?』
何ですと?
「では森にお帰りください」
子ブタが無礼者ー!とペシペシ叩く。
『我が森で野宿などありえぬ。この世界ではペットを飼わねばならぬのであろう?我をペットとすれば良かろう。そのために動物の姿にしたのだ』
だったら、チョイスが間違っている。
何故に子ブタ?
犬とか猫にすれば良かったのに。
「何故子ブタの姿を選んだのですか?」
『我はピンクが好きだ。子ブタはピンクでまるんとして愛らしかろ』
子ブタが真っ直ぐな瞳で答えた。
可愛いかもしれないけど、ペットにはしないよね?
「ではピンクの小鳥とかは?」
『ああ、尖ったクチバシがなんとも憎々しいの』
子ブタが嫌そうに顔を顰めた。
「一般的に子ブタはペットにしません」
『我は気にせぬ』
いや、私が気にする。
「無理です」
『何を言っておる。これは決定事項だぞ。我は其方のそばを離れぬ。我が女神様の神託を受けて其方に教えねば破滅への運命の分岐点が分からず動きようがないであろう」
え!?今、とても大事な情報かサラリと出た。
女神様の神託を子ブタが受けると?
うん、必要だね。
でも、神託受けたら子ブタが森からやって来るでもいけるか?
『だいたい、時を戻す魔法は我が見える距離におらねば発動せぬぞ』
「何でですか!?」
『当たり前であろう。女神の魔法だぞ。我が女神様の魔法とそのアイテムを繋ぐから使えるようになるのだ』
要するに女神様からの魔法を子ブタが受信して魔法アイテムに繋いで、その魔法アイテムは私の器と繋がって呪文を唱えると時を巻き戻す魔法が発動するってこと?
使うためには、子ブタとペンダントと私の三点セットが必要だと?
うぅ……。
「分かりました……」
『うむ。苦しゅうない。よく、我に感謝し、敬うのだぞ』
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