手相を見てあげます
キャロライン視点の本編に戻ります。
4人で全ての串焼きを食べお腹いっぱいだ。
いつの間にかウメ達は団子状にみんなでくっついて寝ていた。
ここにスマホがないのが悔やまれる。
そうだ、ソル様御所望のフワまもを忘れていた。
さっきは何故かゲームになってしまった。
うーん、動物以外のフワまもって何があるだろう?
そうだ!私は前世で人数合わせで急に呼ばれた、類友の合コンに行った時にいた後輩ちゃんを思い出す。
彼女はユルフワの茶髪に食中植物のようなバシバシのまつ毛、小虫がくっつきそうなグロスをテカッと唇に塗っていた多分フワまも女子だ。
彼女が上目遣いで……そう!手相を見てあげるねって語尾にハートマークをつけて一番のイケメンの手を握っていた!
その後、一緒に行った類友が私もイケメンの手を握りたいと手相を勉強し始めて、私も少し教えてもらったじゃないか。
ちなみに、前世の私は手相を見てもらったら結婚線がないとか言われて、付き合っている彼氏がいるのにまさかと笑ったのだった。
当たっていたね……。
「ソル様、手相を見てあげます」
私はソル様に手を差し出す。
「手相?」
「はい」
ソル様は不機嫌な顔で手をのせた。
これは困惑している顔だね。
うわ、指が長い!綺麗!手が大きい!
手のひらが硬いのはきっと剣術の鍛錬だろう。
「キャロライン、手相って何かしら?」
「手にあるこの線は様々な運命を示しているんです。例えばこの線、ソル様は財運がバッチリですね。将来に渡ってお金に困ることはないでしょう」
まあ、公爵家の嫡男だから当然か。
「次に頭脳線、この線の濃さと長さから見るに常にいろいろ考えているタイプですね」
「当たっているわ」
「でも、とりあえずノリや勢いでやってみようと動いてしまう面もありますね」
「当たっている」
「あれ?」
私は気になる線を見つけてしまった。
「女難の相が出てる?」
私は細かい線を見る。
「え?この後?」
「何だ?何か悪い線があるのか?」
「えっと、はい。私は素人なのであまり深く捉えないで欲しいのですが、この後女難の、その、女性関係で困ると手相に出ているようで……」
「女難……」
「ただのお遊び手相占いなのでそんなに気にしないでくださいね」
ソル様の眉間がグッ寄る。
どうしよう、すごく気にしている。
「キャロ、僕も見てくれるかい?」
雰囲気を変えるように、お兄様が私に手を差し出し
た。
「はい、どれどれ……お兄様、やっぱり財運線がないね」
お兄様がやっぱりかぁと肩を落とした。
「あ、でもここ!ここから線が出てきた。将来的にはお金持ちになりそうだよ。これは玉の輿にでも乗るのかな?それともいい所に就職?あ!」
私はまたもや気になる線を見つけてしまった。
ソル様と同じだ。
「え?キャロ?悪い線?」
「うーん?お兄様にもソル様と同じ女難の線があったんだけど、何でだろ?」
「え?僕も?」
「でも、所詮は素人のなんちゃって手相だからお兄様も気にしないでね」
「女難はどうしたら良いだろう?」
ソル様が切実な顔で聞いてきた。
「うーん、避ければいいんじゃないですかね?」
「避ける?触らせないという事か?」
「多分?」
私もよく分からないが、避けておけばマシなんではないかな?
お兄様もソル様も避ける……と呟きながらズーンと沈んでいる。
どうしよう、フワまもはもっとキャッキャッウフフな感じになるはずでは?
何か間違った?
「えっと、ユーリカ様も見ましょうか?」
ソル様達の様子を見たユーリカちゃんはブンブンと首を横に振った。
このズーンとした雰囲気をどうしたら?
あ!ふと少し先を見ると見た事がある建物が。
ゲームのスチルで見た事がある!
「あの建物はもしかしてお兄様達が通うバラニカ魔法学園ですか?」
「そうだ。あそこがバラニカ魔法学園だ」
「とても綺麗ですね」
スチルと同じ煌びやかなアラビアのお城風なバラニカ魔法学園が少し先に見える。
「行ってみるか?」
「はい!」
そこまでのゲームのファンというわけではないがせっかくなので見てみたい。
お兄様がもうすぐ通うところだしね。
私達は学園に向けて出発した。
そう、女難に向けて……。
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後輩ちゃんに触発された環奈さん(キャロちゃんの前世)のお友達は、マニアックな域までズブズブと手相占いにはまりました。
当初のイケメンの手を握りたい願いを忘れて手相占いに転職した、まさに環奈さんの類友です。