魔法か?
あれ?そもそもフワまものはずがいつの間にこんな勝負になったんだ?
「はい、らっしゃい!お嬢ちゃん達何にする?」
そうこうしているうちに順番がきた。
ウメ達はさっさと少し離れたベンチに4匹で座っている。
ウメ達は1日2食だからね。
「鶏串焼きを10本と豚串焼きを10本、あと牛串焼きを10本をよこしなさい」
「あいよ!3000リラだよ」
ユーリカちゃんが注文をしてくれた。
私はユーリカちゃんに半分の1500リラ分の銅貨1枚と鉄貨5枚を渡す。
「私のおごりよ!お金はしまっておきなさい」
ユーリカちゃんが腰に手を当てドヤーと笑う。
お兄様を見ると頷いたのでお金をしまった。
次回は私達が出そう。
ユーリカちゃんはお財布からお金を出した。
あ、もしかして白金貨って事はないよね?
ドルモンドでのやり取りを思い出す。
「ヒエ!白金貨!?す、すんません!おつりが出せませんので白金貨は勘弁ください〜!」
やっぱり白金貨だったようだ。
ユーリカちゃんはハッとした顔をしたが、おじさんを睨んで言った。
「お、お釣りはいらないわ!白金貨分、全部買うから渡しなさい」
いやいや、それは駄目でしょう。
「いえいえいえ、すんません!そんなにありません!すんません!すんません!」
おじさんは涙目で謝る。
やっぱり私が出そうとお財布を出した時、ソル様が私の手を押さえ言った。
「私が出そう」
しかし、ソル様が出したのは金貨だった……。
おじさんがすがるように私とお兄様を見る。
金貨でも、もちろんおつりは無理だよね。
「さっき一番負けた僕が払いますね」
お兄様がささっと銅貨3枚を払った。
おじさんがホッとした顔で受け取り、串焼きを渡してくれた。
「あ、あとこれとは別に適当に10本持ち帰り用に包んでください」
そうだ、護衛のおじさんの分も頼もう。
交代で食べられるかな?
無理なら後で食べてもらえば良いね。
「あいよ、おまけで500リラでいいよ」
「やったー、おじさんありがとう!」
私はありがたく鉄貨5枚を渡した。
「いや、公爵家として借りは作れない」
初めて会った時のユーリカちゃんと同じ事をソル様が言う。
「ソル様、おじさんの気持ちはありがとうで受け取ってまた今度返せばいいと思いますよ?」
「いや、だが……」
「ソル、学園に入ったら友人も連れてまた食べに来ましょう。それで借りを返した方が喜ばれます」
「……分かった。だが、ハウル達にもお金を出させてしまった」
「じゃあ、ソル様、次の時おごってください。次またユーリカちゃんとお出かけの約束ができるので、その方が嬉しいです」
「分かったわ。次は絶対私がおごるから待ってなさい!」
「うん、楽しみだね!」
思いがけず次のお出かけの約束ができて嬉しい。
「あ、ソル様、これを護衛のおじさん達に渡してください。交代で食べられなかったら後で食べてもらってください」
「これは彼らの分だったのか?」
「はい」
ソル様が首を傾げた。
「彼らは護衛だ。ちゃんと公爵家から給金も出ている」
私も首を傾げる。
「でも、お腹空きますよね?」
「それは確かにそうだが……」
「あ、なら伯爵家として借りは作れないので渡してください」
よし、これなら良いだろう。
お兄様もうんうんと頷く。
「感謝する」
ソル様は私の頭を撫でると串焼きを受け取り護衛さん達に渡してくれた。
護衛さん達はびっくりした顔で私を見てペコリと頭を下げてニカリと笑った。
良かった、喜んでくれたようだ。
私達はウメ達が座っているベンチに移動して串焼きを食べることにした。
ちゃんとテーブルもある。
ソル様がベンチにハンカチを敷きユーリカちゃんを座らせる。
なるほど、いつもなら気にしないで座ってしまうがどうしよう?
見ると、お兄様も同じようになるほどって顔をして私を見る。
そして、お兄様もハンカチをベンチに敷き、私に手を差し出して座らせてくれた。
おお、これは貴族令嬢っぽい。
私とお兄様はベンチに座ると早速、豚串焼きを手に取った。
ユーリカちゃん達も私達を真似てぎこちなく鶏串焼きを手に持つ。
まだ熱々だ。
「これは、どう食べるのだ?」
ソル様とユーリカちゃんが戸惑ったように手に持った串焼きを見る。
そうか、なかなか貴族は串焼きは食べないから分からないか。
「こうですよ。熱々だから気をつけてくださいね」
私はアーンと大きく口を開けて、ハフハフと食べる。
ん〜、思った通りタレにスパイスが効いていてとても美味しい。
私はあっという間に一本食べ終える。
2人の方を見ると、びっくりした顔をしていた。
はて?
「どうしてその小さな口でこの大きな肉が入るんだ?魔法か?」
ソル様が真顔で言った。
いや、そんな魔法はない。
「熱々がおいしいですよ?」
勧めてみると、ソル様が私を真似てパクリと肉に齧り付いた。
モグモグと咀嚼する。
その姿も品がある。
そして、びっくりしたように目を見開いた。
「初めて食べる味だが様々なスパイスが絡み合って辛いのに甘みもある。素晴らしい味だな」
それを見てユーリカちゃんも恐るおそるパクリと肉に齧り付いた。
「美味しい!ピリピリするのにフワッとお肉の味が混ざっていくらでも食べたくなるわ」
2人も気に入ったようだ。
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