フワまも?
可愛いユーリカちゃんがフワまもしたらカリム様もきっといちころだ。
美味しそうな匂いの串焼き屋さんは10人くらい並んでいた。
ますます期待が高まる。
さて、並んでいる間にソル様御所望のフワまもをしよう。
「ソル様、何を食べるニャン?」
「キャロ、ニャンはもう使った」
あ、そうか。
「そうだったワン」
お兄様がすかさず手を挙げる。
「あ、じゃあ次僕だね。えっと、キャロは何を食べるチュー?」
あ、なるほどネズミ。
さすがお兄様、思いつかなかった!
「次はソルの番です」
お兄様がニコニコとソル様を見る。
「じゅ、順番なのか?そうだな、私は鶏肉を頼むつもりだ……ピョン?」
おお、ソル様うさぎか、手まで付けてきた。
「次はユーリカ様です」
お兄様が今度はユーリカちゃんは見た。
「わ、私も?私はいいわ。あなた達でやりなさい」
「ではユーリカ様は負けですね」
「負け?それは嫌よ」
ユーリカちゃんがお兄様を睨む。
「……わ、私も鶏肉を頼む……ブー」
まさかのユーリカちゃん、チラッとウメを見てブタの鳴き声だ。
「プッ」
お兄様が吹き出した。
「ユーリカ様の子ブタ可愛いですね。僕の負けです」
「ユーリカ様、すごい!残りあと3人ですね!」
「負けないわ」
「よし。腹筋の成果を見せよう」
次は私の番だ。
「私は豚肉を食べるっガオー!」
「え!?ウメがペットなのに!?」
「それはそれ、これはこれです」
私はニッコリ笑う。
豚肉が美味しいのが悪い。
ユーリカちゃんがウメを抱いてススッと離れる。
「大丈夫です。ウメは食べないですよ!」
ユーリカ様が半目でジトーっと私を見つめる。
「ユーリカ、ウメはまだ小さいから大丈夫……キェー」
「プッ、お母様のグアナそっくり」
ソル様、渾身のリアル鳴き真似だ。
ユーリカ様がたまらず吹き出した。
身内ネタで狙い撃ってきたね。
「ユーリカ様、負けですね」
「お兄様、ひどい」
「すまない、これしか思いつかなかった」
ユーリカ様がプクッと頬を膨らませた。
「お兄様なんか知らない」
ユーリカちゃんがそっぽを向き、ソル様の眉間の皺がグッと深くなった。
明らかに不機嫌顔だが何故かガーンとショックの表情と分かる。
大分表情が読めるようになってきたようだ。
「では、私とソル様の勝負ですね。ユーリカ様の仇は私が取ります」
ソル様の目が来いと言っている。
「いきますよ、牛串焼きも食べたいブ」
ソル様がブタは言ったと口を開きかけたが、私はニヤリと笑って続けた。
「ッモオー!」
どうだ、2段構えだ。
私はソル様を見つめる。
彼がグッと腹筋に力を込めた。
残念、耐えられてしまった。
「なぜ、牛の鳴き声にブッがつくのだ?」
「牛は牛でも闘牛の牛だからです」
「そうか」
納得したようにソル様が一つ頷く。
「次は私だ」
ソル様がワインレッドの瞳で私を熱く見つめる。
よし、来い!私は頷いた。
「もうすぐ順番が来るグワオー」
ラ、ライオンだ。
すごい、グアナに続いてこれもリアルだ。
「ソル様、動物の鳴き真似すごくお上手ですね」
思わず感心してしまった。
「ご無事ですか!?今ライオンの声がしましたが!?」
「誰かのペットが暴走しましたか!?」
離れて見守っていた護衛のおじさんが慌てて駆けつけてきた。
「す、すまない。私の声だ」
ソル様が不機嫌顔で謝る。
あ、でもこの表情は申し訳ないって顔だね。
「お騒がせしてすみません」
私も一緒にペコペコと謝っておいた。
護衛さん達がは?と顔をしてソル様を見た後、その不機嫌な表情に気まずそうに戻って行った。
ユーリカちゃんは飽きたのかウメの上のシロにヒマワリの種をお兄様とあげている。
もう、これは私が勝負を決めよう。
「ソル様、勝負です。これで笑わなかったらソル様の勝ち、笑ったら私の勝ちです。どうですか?」
「いいだろう、私はキャロを受け止めてみせよう」
「いきますよ?」
私はお腹に力を溜めダンと足を一歩踏み出し叫んだ。
「ここの串焼きはー!間違いなくうまヒヒーン!」
どうだ!?
「ここの串焼きはうまヒヒーン?……うまヒヒーン?……馬、ヒヒーン……ブホッ」
ソル様は難しい顔をしてブツブツ呟いた後、横を向いて吹き出した。
そして顔を背けて口元を覆って笑い始めた。
「やったー!勝ちました」
「キャロライン、よくやったわ!」
私はユーリカちゃんとハイタッチをした。
「ソルの笑いの沸点は低くないですか?キャロ、ちょっとずるいかな?」
お兄様があきれたように言った。
「ダジャレが駄目ってルールはないでしょ?」
「今回も私の完敗だ。また精進する」
ん?今回も?
あれ?そもそもフワまものはずがいつの間にこんな勝負になったんだ?
私は首を傾げるのだった。
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