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お勧めです

その口角が微かに上がったような気がした。

 王都はまずその中心に王城がある。

 そして、その周りを囲むように貴族の屋敷があり、さらにその周りを店が囲むようにドーナツ状に建っている。

 私が女神様の祝福の日に行った大通りは神殿がある北側の通りだ。


「まずはお昼を食べましょう」

 降りたところに豪華そうな高級レストランが建っていた。

 ミンドル商会直営のザーマズというレストランだ。

 まずソル様が降り手を差し出し、ユーリカちゃんはソル様の手を取り優雅に降りる。

 2人とも美少年美少女だから絵になる。


 次にお兄様が降りて私に手を差し出す。

 さすがにピョンといつものように飛び降りたら駄目なのは分かる。

 私はお母様のお仕込み通りにお兄様の手を取ってしずしずと降りた。


 ウメは背中にコリム、コリムの上にミドラ君、さらにその上にシロを乗せてあとに続く。

 今スマホがあったら待ち受けにしたい可愛らしい4匹だ。


 そのままエスコートされ中に入る。

 天井にはジャラジャラ音が出そうな大きなシャンデリアが吊るされ、金やら銀やらの模様や飾りで目がチカチカしそうな内装のレストランだ。


「お待ちしておりました。フィジマグ様」

 オーナーらしきお腹の突き出た無駄に愛想の良いおじさんがユーリカちゃん達を出迎える。

 しかし、私とお兄様をチラと見ると蔑んだ目になった。


「ここはお前達が入れる店ではないぞ。さっさと出ていけ」

 うーん、この軽装だとこの高級そうなレストランとは確かに合わないか。


「彼らは私達の連れだが?」

「え?し、失礼しました。使用人用のお部屋に彼らも案内しておきます。ささ、フィジマグ様はどうぞこちらのテーブルへ」

「私の連れだと言ったのが聞こえなかったか?」

「いや、申し訳ございません。その服ではこちらのお客様が恥ずかしい思いをされるかと思いまして」

 ソル様の言葉に途端にペコペコ頭を下げるが、やはり私達を見るその目は嫌な感じだ。


 私はお兄様と顔を見合わせる。

 この服だと使用人に見えてしまうのは正直しょうがない。普段着ている服だしね。

 うーん、この雰囲気の中で食べるのは嫌な感じだ。

 どうしよう?


「私、このお店は嫌い。お兄様、別のお店に行きたい」

 店主とソル様のやり取りを見ていたユーリカちゃんが不機嫌に言った。

「え?しかし、ご予約いただいて最高のお席を用意しております」

「私がこのお店を嫌だと言っているの」

「そうだな。悪いがキャンセルしておいてくれ」

 ソル様も頷くと、2人はさっさと店を出て行った。


 食事中のお客さん達も微妙な顔になっている。

 私達はお客様に向けて、お兄様は胸に手を当て、私はカーテシーで礼をした。

 せっかくのお食事中お騒がせしてごめんね〜と気持ちを込めて2人で困ったように微笑んでおく。


 シンと静まり返ったお店から速やかに退去した。


 その後、まことしやかに公爵子息と共に来たお忍び中の他国のやんごとない王子と姫に無礼な態度を取ったお店としてこのレストランは廃れていったらしい。




「本当にすまない」

 店を出てすぐにソル様が頭を下げた。

 少し離れて護衛さん達が頭を下げるなんてと慌てているが、それをソル様は目で黙らせる。

 いやいや、この普段着では使用人と思われてもしょうがない。

 ユーリカちゃんも口がへの字だ。

 足元のコリムは尻尾が垂れている。

 シロはミドラ君から降りてソル様のシャツのポケットに潜ってしまった。


 暗い雰囲気が漂う。

 こんな時こそフワまもだ。


「大丈夫だニャン!」

 私は手もつけてフワまもを発動した。

「そうだニャン!」

 お兄様も私の真似をしてニャンの手をする。


 気のせいかお兄様の方が可愛い気がする。


「お昼を食べに行きましょう。お腹ペコペコです。ほら、あの露店の串焼きいい匂い!行ってみましょう」

 私はユーリカちゃんと手を繋いで串焼きの露店に向かった。

 戸惑ったようなユーリカちゃんだったけど、キュッと握り返してくれた。


「もう動物はやらないのか?私は今日のために腹筋を鍛えた」

 後ろにいたソル様がポソリと言った。

 え?ソル様、フワまもを気に入ってくれていたのですか?

 かっこよくてもやはりフワまもがお好きなんですね!?

 腹筋を鍛える意味は分からないが……?


「ソル様、オッケーニャン!」

 私はウィンクしてユーリカちゃんと繋いでない方の手をピースにして頭に当てた。

 ソル様の腹筋がグッとした。


「キャロライン、それ変よ」

「え?」

 でも、これアイドルがやってたよ?あ、フワまもは女の子にはウケないものだから?あれ?だよね?変じゃないよね?え?もしや、変なの?


「お兄様、変?」

「キャロは可愛いよ。天使だよ」

 あ、やっぱり女の子に受け入れられないだけみたいだね。


「ユーリカ様、これはフワフワ守ってあげたい女の子、略してフワまもで男の子には可愛いと思える仕草なんですよ?」

 私はコソッとユーリカちゃんに耳打ちした。

「え?そうなの?」

「はい。お兄様は可愛いとおっしゃったでしょう?」

「確かにそうね、分かったわ。今度カリム様にやってみるわ」

「はい、お勧めです!」

 可愛いユーリカちゃんがフワまもしたらカリム様もきっといちころだ。
















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html>   html>   好評発売中 ♪
― 新着の感想 ―
[良い点] ハウルくんキャロたん、キャロたんがフワマモ発動しなければ王子と姫! ウメさん音楽隊(ブレーメンの音楽隊みたいなので)は我々の高貴さ故と思ってますかねwウメさんだけかw 歩くウメさんの上でち…
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