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ソル様のペット

さあ、お出かけだ!

 公爵家の馬車はすごかった。

 座るところがフワフワでお尻が痛くならない、広い、ギシギシ変な音がしない、何て快適なんだろう。

 私の膝のウメもその頭に乗ったミドラ君もゆったりくつろいでいる。


「お兄様、この馬車すごいね」

 私は感動して、隣に座るお兄様にコソッと言った。

「うちの馬車と比べちゃ駄目だよ、キャロ」

 お兄様がクスクス笑う。

 確かに。


「ユーリカ様、今日は誘ってくれてありがとうございます。とても楽しみにしていました」

「キャロラインがどうしてもお出かけしたいとお手紙に書くから仕方なくよ」

「はい、どうしてもユーリカ様と王都の街にお出かけしたいです」

「仕方がないから案内してあげるわ。感謝しなさい」

 ツンと外を向いている横顔が嬉しげだ。

「はい、ありがとうございます」

 私も嬉しい。ニコニコとお礼を言った。


「そういえば、フィジマグ様はペットを連れて来なかったのですか?」

「ソルでいい」

 おお、畏れ多くもヒロインの呼び方だ。

 私が呼んじゃって良いのかなと思ったが、お兄様はソル呼びだし良いか。

「はい、ソル様。では私はキャロとお呼びくださいませ」


「分かった、キャロ。私も連れて来ている」

 え?どこに?

 ユーリカちゃんの方を見ても膝で丸まるコリムしかいない。


「これだ」

 ソル様は胸のポケットから雪のように白いホワホワとした塊を出す。

 チョンと顔を傾げ、クリクリとした赤い目と私の目が合う。

 ハムスターだ!


「可愛い!」

 首にペットの証の細い銀色の首輪が付いている。

 ソル様がそっと手に乗せてくれた。

 小さい!軽い!なのにホワホワで温かい。


「お名前は何と言うのですか?」

「シロだ」

 え?シロ?白いから?ソル様のネーミングが意外に安直だった。

 あ、でも私もウメの名前を決める時ピンクとか言ってたから一緒か。


「ユーリカ様、シロすごくホワホワです」

 私はユーリカちゃんの手を取ってシロを乗せた。

 思い切りユーリカちゃんが固まる。

「ユーリカはシロが苦手だ」

 ソル様がユーリカちゃんの手からシロを自分のシャツのポケットに入れた。


「苦手ではないわ!でも、私はコリムが一番なのに別の子も可愛いと思ったり抱っこしたら可哀想でしょ?キャロラインはもっとウメの気持ちを考えなさい」

 え?


「コリムが一番可愛い、シロも可愛いで良くないですか?他の子を抱っこしたらコリムが嫌がったりしたのですか?」

 私はユーリカちゃんのよく分からない理屈に首を傾げる。


「コリムは嫌がらないわ。でも、カリム様が他のペットを可愛いと思うのはコリムが可哀想だねっておっしゃったわ」

 ん?カリム王子のペットはやきもち焼きな子で嫌がるのかな?


「コリムが気にしないなら、別に可愛いと思っても抱っこしても良いと思いますよ。他の子を可愛いと思ってもコリムを可愛いと思う気持ちは減らないでしょう?」

「もちろんよ」

 ユーリカちゃんが大切そうに膝のコリムを撫でる。

「じゃあ、いいんじゃないですか?」

「いいのかしら……」

「あ、いい物を出します」


 ハムスターと言ったらこれだよね!

 私は魔法でひまわりを出した。


「お兄様、魔法でこれを種まで成長促進して」

「いいけど、初めて見るお花だね」

「どこかの森で見つけたような気がするよ。名前はわからないかな〜」

 しまった、ナチュラルに前世のお花を出してしまった。


「お兄様、早く早く」

 お兄様はひまわりを受け取ると、淡い光がひまわりを包んだ。

 じわじわと萎れ茶色っぽくなりそしてぎっしり黒と白の縞々の種が詰まる。


「これくらいかな?」

「うん、バッチリ」

 私はお兄様から種が詰まったがくを受け取る。


「ソル様、この種をシロにあげてもいいですか?」

「シロは賢いから食べられない物は口にしない。初めて見る種だが、試しに与えてみよう」

 私はソル様の手のひらのシロに一粒種を差し出してみた。

 シロが首を傾げてチョイっと小さな小さな手で種を持つ。

 どうだろう?食べるかな?


 みんながじっとシロを見つめる。

 シロがすごい勢いで器用に種の殻を歯でカリカリ齧ってペロンと中身を出した。

 そして、口にパクリと入れモグモグ動かす。

 食べるとすかさず、手をくれくれするように動かしている。


「可愛い……」

 ユーリカちゃんがその可愛らしさにプルプルしている。

「はい。ユーリカ様、種をどうぞ」

 ユーリカちゃんが真剣な表情で種を手のひらに乗せてシロに差し出す。


 シロがチョンとユーリカちゃんの手に乗って種を食べ始める。

「くすぐったい」

 ユーリカちゃんが嬉しそうにクスクス笑った。


「ユーリカはシロが苦手なのだと思っていた」

「本当はお父様のユキもお兄様のシロもどちらのハムスターもとても可愛らしいと思ってたの。あ、でもお母様のイグアナのグアナは本当に苦手よ」

 あの怖そうなお顔の公爵様もハムスターなんだね。

 しかも、ユキ。

 公爵様とソル様の血の繋がりを感じる。


「ユーリカ様のお母上はイグアナがペットなのですか!?ぜひ、詳しくお話を聞きたいです」

 爬虫類好きなお兄様が食いついた。

「あ、もしかしてミドラ君も苦手でしたか?」

「いえ、ミドラ君は可愛いと思うわ。そうね、お母様のグアナはこう体が大きくて……」

「すごい、こんなに大きいのですか?」

「そうよ、それでね」


 お兄様とユーリカちゃんが楽しそうに話し始めた。


「キャロ、ありがとう」

 ソル様がそっと私に言った。

 その口角が微かに上がったような気がした。






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ハムスターの寿命は2〜3年ですが、この世界のハムスターは20〜25年、他の動物達も同じか少し長いくらいの寿命です。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] キャロさんちの馬車にはサスペンション(緩衝懸架装置とも言う)が無いのかな?路面の凹凸が直接キャビンに伝わるのだろうか? せめて重ね板バネ式緩衝装置(リーフ式)とか無いと、将来腰痛持ちに…
[良い点] 氷の貴公子な父子がペットさんはハムスター…きゅんです! ウメさんは我より可愛いものなど居ないと気にしてなさそうですね〜 [一言] ん?カリム王子、モラかメンヘラかヤンデレの気配??
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