すまんでござる!
さあ、プレゼントもできたし楽しみだ!
今日はユーリカちゃんとお出かけの日だ。
私は朝からウッキウキだ。
「お兄様、用意できた?」
「うん、用意できてるよ」
今日は街に出かけるから、普段着ているような動きやすい脛丈の長さのシンプルな青いワンピースだ。
お母様が作ってくれた斜めがけの白いポシェットをかけて、髪はライラに三つ編みにしてもらった。
今日はお茶会ではないから艶々髪もお化粧もしないのでライラがとても残念そうだった。
お兄様も普段着ているような焦茶のズボンに上は薄い水色のシャツだ。
ユーリカちゃんのお父様からの書簡によると、今日は公爵家の馬車で送迎してくれて、護衛も用意してくれるそうで至れり尽くせりだ。
さすが公爵家!
お昼ちょっと前にはお迎えの馬車が来る予定なのでそろそろだ。
「お兄様、プレゼントのしおりは私のポシェットにしまっておくね」
「うん、お願いするね」
私はウメを膝に乗せて今日は青いリボンを付ける。
私とお揃いだ。
「どうですか?ウメ」
『さすが我であるな。素晴らしく愛らしい』
ウメは右に左に鏡に写し、うっとりしている。
ミドラ君にも水色のリボンを結んだ。
うん、2人とも可愛い。
「ハウル様、キャロライン様。ソルフォード公爵令息とユーリカ公爵令嬢がお着きになりました」
来た!
私は急いで階段を駆け降りた。
「ユーリカ様!」
階段下にユーリカちゃんが見えて、私はブンブンと手を振って、その勢いのまま階段の途中で思い切り蹴躓いた。
「ヒャ!」
あと七段ほどの高さから落ちる。
『キャロライン!』
「キャロ!」
「お嬢様!」
ドスンと落ちた。
やってしまった……。
が、痛くない?
すっぽり温かい。
顔を上げると、間近に深いワインレッドの瞳の超絶イケメンの不機嫌顔が?
相変わらず眉間の皺が深いですね!
じゃなくて!ソルフォード様に乗っかっている!?と言うか片腕で抱きしめられてる!?
あ、落ちてきた私を受け止めてくれたのか。
細身の黒いズボンに肌触りの良いシャツ、首元にワインレッドのネッカチーフを巻いた彼はジロリと私を見た。
「早く退いてくれないか?」
私は慌てて飛び退く。
「すまんでござる!」
あ、間違った。
ソルフォード様の眉がピクッとする。
「キャロ、大丈夫?」
「お兄様、大丈夫だよ」
お兄様はホッと安心してソルフォード様の方にお礼に行った。
「キャロライン、大丈夫!?」
ユーリカちゃんも今日はワンピース姿だ。
髪と同じ鮮やかな赤い色でシンプルだけど、その生地は明らかに高い物と分かる。
「はい、大丈夫です。ごめんなさい。ユーリカ様に会えて嬉しすぎて急いじゃいました」
ユーリカちゃんにも心配をかけてしまった。
「ピョンではないのか?」
「え?」
振り向くとソルフォード様はお兄様としゃべっていた。
ピョンとか聞こえた気がしたけど気のせいか。
「そ、そう。それでは、しょうがないわね。気をつけなさい」
「はい」
ユーリカちゃんかツンとそっぽを向いて言った。
足元でゴロゴロと可愛らしい声と体を擦り寄せるコリムがいた。
ちょっと見ないうちに少し大きくなってる。
「コリムも久しぶりだね」
私は抱き上げほっぺでスリスリする。
フワフワの赤毛が可愛い。
コリムがニャーと鳴いてペロペロほっぺを舐める。
はぁ、可愛すぎる。
『この阿呆が!気をつけよ』
やっと追いついてきたウメがプリプリ怒った。
「はーい、ごめんなさい」
「あなたがウメね!」
ユーリカちゃんが目を輝かせてウメを見た。
「本当に子ブタがペットなのね」
「抱っこしますか?」
「いいえ、大丈夫よ」
ユーリカちゃんはスッとウメから視線を逸らした。
やっぱり、子ブタのペットは抵抗があるのかもしれない。
あれ?でもチラチラとウメを見ている?
「フィジマグ嬢。お初にお目にかかります。キャロラインの兄、ハウルです。こっちはペットのミドラ君です」
「初めまして。ユーリカ・フィジマグよ。ユーリカで良いわ。この子はコリムよ」
お兄様の挨拶にツンと顎を上げてユーリカちゃんが答えた。
「では、私もハウルと」
そう言ってお兄様はクスクス笑った。
「なぜ笑うの?失礼よ!」
「いえ、ソルの手紙でユーリカ様の事をいつも読んでいたので、ソルが書くまんまで可愛らしいと思って」
「か、可愛らしい!?」
瞬間、ユーリカちゃんは真っ赤になった。
「ソルフォード様、ユーリカ様、お待たせいたしました」
背の高いがっしりしたお髭のおじさん2人がお父様と一緒に応接室から出てきた。
護衛の人かな?
「ソルフォード様、ユーリカ様、今日は2人をよろしくお願いいたします」
「はい」
「ハウル、キャロ、楽しんでおいで」
「はい」
私達は腰を屈めたお父様のほっぺに行ってきますのキスをする。
さあ、お出かけだ!
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