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ベラちゃんのお見合い相手

お見合い!?

「私はお父様とお母様にやっと授かった一人娘なので婿を迎えなくてはなりませんの」

 私は前世で29歳独身だったが、ベラちゃんは6歳なのに相手を決めるようなのか。


「ベラちゃん、どなたとお見合いなの?」

「リッターソン侯爵家の同じ年の二番目のご子息ですわ」

「もうお話したの?」

「テーブルを回った時にチラッと話しましたわ」

 ベラちゃんの様子を見る限り、まだ相手がどんな人か分からなくて不安なのだろう。


「よし、偵察に行こう!」

「え?」

 私はベラちゃんの手を握った。

「まずは敵場視察だよ。一緒にどんな人か見極めよう。何かよく分からないものって不安でしょ?でも、ちゃんと分かれば不安じゃなくなるかもしれないよ」

「そう、そうですわね。私、敵場視察しますわ」


 もし嫌な奴だったら、全力で婚約回避だ。



 早速お茶会のテーブルの場所に戻ると、皆ペット広場の芝生に移動しているようで誰もいなかった。

「あ、いましたわ。あの深緑の髪の御令息ですわ」


 ベラちゃんの視線を辿るとヒョロっと背の高い少年が、みんながいるところから少し離れた木の下に立っていた。

 私達はこそこそと近づき、木のそばの生垣に隠れる。


 近くで見たリッターソン君は、深緑の髪をきっちり七三に分け、色白の肌に落ち着いたペリドットの瞳、すっと高い鼻に薄い唇で、その整い過ぎた美貌はお人形のような男の子だった。

 いや、無機質なその佇まいはお人形というよりアンドロイド?


「見た目はとても整っているね」

「ええ、でも先程お話した時も思いましたが、あまり感情を感じられずお人形みたいではございません?」

「うん」


 リッターソン君は犬と走っている子達を一心に見つめていた。

 仲間に入りたくて入れないのだろうか?

 いや、よく見ると口が小さく動いてる。

 何か呟いている?


「何を呟いているのかしら?」

「もうちょっと近づいてみよう」

 私達は生垣に隠れながらリッターソン君と距離を詰めた。


「ソーボーキンが……ダイタイシトーキンの……ジョーワンニトーキンで……」

 え?呪文?

 段々とその表情が恍惚として、独り言が延々と続く。


「キャロちゃん……」

「うん……」

 これはあかん奴だとお互いの目が言っている。


 いや、まだ諦めたらダメだ。

 実は心はすごく優しい可能性はないか?

 例えば動物に優しい姿を見たら私達の印象もプラスに変わるかもしれない。


「ウメ、ちょっとあそこの男の子にぶつかって痛がるふりしてくれませんか?」

『何故我がそのような事をせねばならぬ?』

「お願いします」

『嫌であるぞ。……いや、待て、聞いてやらぬでもない。先程其方が食べていたマロリラのケーキを所望する。さすれば、やっても良い』


 マロリラのケーキを食べたいのか。

 美味しそうだったものね。

 よし、王都でロージアをいっぱい売れば買えるか?


「ベラちゃん、今日出たマロリラのケーキってどこで売ってるの?」

「あのマロリラのケーキは我が家のシェフが作りましたわ。欲しいのですか?」

 欲しいのは私じゃなくてウメだが頷く。


「後日でよろしければ、ヴィゼッタ伯爵家に届けますわ」

「ありがとう!ウメ、それじゃあお願いします」

『うむ。マロリラのケーキを忘れるでないぞ』

 ウメはポテポテとリッターソン君に向かって行った。


「何だかキャロちゃんはウメちゃんとお話しているようでしたわね」

 私はハッとやらかしに気づいた。

 大変だ、ベラちゃんにリッターソン君を見る目と同じ目で見られてしまう。


「まさか〜、気のせいだよ。アハ、アハハハ……」

 本当に気をつけなくては。


「あ、ウメちゃんがリッターソン様にぶつかって倒れましたわ」

 ナイスだ、ウメ!

 さあ、リッターソン君の反応はどうだろう?


「子ブタ?食用?いや、首輪をしているからペット?子ブタをペットにするなど奇特な方もいるのですね」

 先程までの恍惚とした顔からスンと表情が消えてウメを持ち上げた。

 大丈夫?って怪我を見たり、飼い主を探したりとか優しい姿を見られるか?


「子ブタよ、このたるんだ体は何ですか?」

 ウメがガーンとした顔になった。

「あなたの場合、全て鍛えるようですが、そうですね、まずはコーハイキンとフッキンですかね、いやダイタイシトーキンからでしょうか。ああ、チョーヨーキンと……」

 瞳が爛爛と異様に輝き始めて、またよく分からない呪文が始まる。

 どうしよう、マイナスポイントが加算されていく。


「ちょっと私の好みと彼は違う気がいたしますわ……」

 うんうん、ちょっとって言ってるけど間違いなくマジ無理と顔に書いてあるね。

「でも家のためには良い婚約なのですわ……」

「ベラちゃん……」


「そうだ、ハムストリング……」

「ハム!?大変ですわ!ウメちゃんが食べられてしまいますわ」


 ベラちゃんは慌てて生垣から飛び出し、リッターソン君からウメを奪い抱きしめた。

 そして無機質な瞳で彼に見つめられ、ベラちゃんが固まってしまった。


「君は……マルケット嬢ですか?この子ブタはあなたのペットですか?」

 大変だ。ベラちゃんが奇特認定されてしまう。


「違います。私の子ブタです」

 私も慌てて生垣から飛び出して、ベラちゃんからウメを受け取った。


「そうですか。改めてマルケット嬢、私はパスカル・リッターソン侯爵令息です。父上から縁談相手のあなたと話すように言われています。マルケット嬢も言われておりますよね?」

「……はい」


 ん?パスカル?

 それって攻略対象の名前じゃない!?








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― 新着の感想 ―
[良い点] 脳(が)筋(肉に支配されている人)だ! 唐突に濃いキャラで笑いましたww [一言] 作者様の別作品が読みたくて来ました! この話も面白いです!
[一言] 筋のひとだ!ウメさんの肉は…部位で呼ばれてないから食べ物目線ではない??
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