前世の私
私の作品に気づいてくださり、ありがとうございます。
なろうさんの新連載ドキドキしてます。
よろしくお願いしますm(_ _)m
「いい男ゲットー!!」
自分でもびっくりするような大きな寝言に目が覚めた。
私、伯爵令嬢キャロライン・ヴィゼッタ6歳は、熱を出すでもなく、池に落ちるでもなく、切り株でうたた寝していて前世を思い出したのだった……。
前世の私は相澤 環奈、29歳。
普通のOLさんだった。
何故に亡くなったかも思い出した。
あの日はロマンチックなホワイトクリスマスだった。
雪も良い感じに積もり、私はウキウキと彼が予約した高級レストランに入った。
先に来ていた彼は、いつになく緊張した顔をして席に座っていた。
あ、これは!と私はピンときた。
私と彼とはかれこれ10年付き合っている。
しかも、私は30歳目前だ。
いよいよプロポーズだ!と思った。
ダメダメ、気づかない振りしないと。
抑えきれないニヤニヤ笑いを我慢して席についたら、彼が言った。
「ごめん!好きな子できた!別れてくれ!」
「はい、喜んで!」
勢いよく答えてから、あれ?と首を傾げた。
なんか想像した言葉と違っていたような……?
「そうか!ありがとう!何か環奈は残念な女って感じで、俺と合わない気がしたんだ。やっぱり女の子は守ってあげたくなるようなフワフワで可愛い子がいいよね。俺、今から彼女とディナーだからもう行くね。あ、ここの支払いはもうしてあるからゆっくり食べてって!じゃあ!」
シュバッと片手を上げ、彼は風のように去って行った。
あれ?
周りのカップルが痛ましい者を見る目で私を見ている。
あれ?
そして、私のテーブルに1人分の豪華ディナーが並んでいくが、ボーイの人の目も痛々しそうに私を見ている。
私の脳がやっと彼の言葉を理解した。
え?
好きな子?
別れる?
私、もうすぐ30歳なのに?
今から彼氏を見つけろと?
残念な女って何さ?
10年付き合って最後がこれ?
マジか……。
怒りが沸々と湧いてきた……。
私はグサリとフォークで分厚い肉をぶっ刺して肉にかぶりつく。
は!?信じられない!クリスマスに言うか!?普通!?
しかも、おひとり様で周り幸せカップルに囲まれて食えと!?
私はワインの瓶を掴んでラッパ飲みする。
チクショー!美味い!
周りがハラハラと見守る中、私は完食した。
その時、シェフがそっとメニューにないケーキを置いた。
スッと照明も暗く落とされ、ろうそくの仄かな灯りが揺らめく。支配人らしきおじさまがグランドピアノで愛の夢を弾き始めた。
柔らかなメロディが流れる。
……こんな時に優しくしちゃダメだよ。
とうとう堪えていた涙がポロっと溢れた。私は涙をボロボロ溢しながらケーキを食べた。
さすが、高級レストラン!サービスも料理も最高だったよ!
私は丁重にお礼を言ってレストランから出た。
雪は止み、いつの間にか星が瞬いていた。
はぁと吐いた溜め息が白く広がる。
そして、
その帰り道、
絶対、奴よりいい男を捕まえてやるー!と星を見上げて、
ツルッとすっ転んで呆気なく亡くなったのだった……。
「キャロ、どうかしたのかい?」
すぐ近くで薪にする枝を拾っていた4つ上のお兄様ハウルが慌てて飛んで来た。
顎ラインに揃った白金の髪に私と同じアクアマリンの瞳の優しい顔立ちのお兄様。
「お兄様、ごめんなさい。寝ぼけてた」
本当ごめん、お兄様、キャロは今パニックだ!
相澤 環奈がキャロラインの人格を乗っ取ってしまった!?
いや、キャロラインは元々こんな感じだった。
相澤 環奈=キャロラインな感覚だ。
前世の記憶を使ってチートする?
いやいや、うちは伯爵家と言っても末端貧乏田舎貴族だ。
目立つと潰されてしまいそう。
目立たず、騒がず、そっとがいい。
私は奴よりいい男をゲットできればそれで満足だ。
そうだ、今世はフワフワ守ってあげたい系でいこう。
その時、何の脈絡もなく気づいた。
あれ?この世界、乙女ゲーム "瑠璃色ファンタジア〜モフモフに囲まれて〜" じゃない?
読んでくださりありがとうございました。
今日は三話投稿します。
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今日からまたよろしくお願いします(^^)