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62頁目「大集合!」

「君が望めば、死の運命を無かったことにも出来るんだよ」


「そんなの私はいらないわ」


「どうして? 君は、誰かに愛されたかったのだろう?」


「そうだけれど、でも。満足しちゃったんだもの。貴方と出逢えて」


「それなら、永遠を共に生きるのは駄目なのかい?」


「それでは意味無いもの。いつかは終わるから、綺麗なものが綺麗なんだって気付ける。終わりが無くなったら、きっとこの目で見た思い出も色褪せてしまうわ」


「そうなんだ」



 か細い指が悪魔の手を撫でる。



「理解出来ないな。その決断はあまりにも刹那的で感情的だ。最善とは言えない」


「そう? そっか、悪魔には理解出来ないのね。でもそれが人なの。どこまでも感情的で、最善なんて選べないのが殆どで、一つの意味を成し遂げる事もなく生を終える者だっている。それが人間」


「へえ。そんな脆い存在なのに、在り方を変えられる機会を得て尚、人間として在り続けるのかい?」


「そうだよ。……きっと、貴方に出逢わなければ、私も別の生き方を望んだのかもしれなかったけれど。貴方に出会って満足しちゃったから、このまま人として終わりたいの」


「僕に出会わなければ。どんなことを望むつもりだったんだ?」


「そうだなあ……こんな病気で崩れた身体じゃなくて、誰にも負けないくらい美しい姿になって、王子様と出会って、幸せになりたかったかな」


「今はもうそれを望まないの? 望んだ姿になれないまま、死に行くのをただ待つつもりなのかい?」


「望んだ姿になれなかったのは心残りかもしれないけれど、それ以外の夢は叶ったんだもの。……幸せにも終わりはあるでしょ? 美しくなっ後に老いて価値を損なった幸せを手にするより、貴方が傍に居るこの瞬間に終わらせたいの」


「悪魔は契約者に帰属する。君が永遠を望みさえすれば、僕はこの存在が消えるまで君の傍に居られる」


「永遠を生きた先にある私は、きっと今の私とは別人だもの。貴方に出逢えて、今の貴方と過ごした思い出は、私だけの大切な思い出として取っておきたいの」


「……理解に苦しむな。君が消えれば、僕は存在意義を喪ってしまう。残酷な事だとは思わないのかい?」


「悪魔らしい囁きね。……それなら一つだけ、最期に叶えて欲しいお願いがあるの」



 少女は、老女のように痩けた顔で笑顔を作りながら、悪魔に言った。



「貴方にはこれから、長い長い旅路が待っているのでしょう? 私はそんな貴方の心にいつまでも残り続けたい。私は醜い人間だから、貴方の心を独占したい。だから、その魂が尽きるまで、たった一つの願い事を叶え続けてほしいの」


「なんだい?」


「困ってる人がいたら助けてあげて。優しい方法で、貴方が私にしたような方法でね。……おとぎ話の悪者が悪事もせずに人助けをするだなんて、まるで笑える話でしょ?」



 そう言って、少女は悪魔の目の前で静かに息を引き取った。




 *




「龍の纏う鱗には特殊な機能が付与されており。この機能とは基本、角から龍の脳波を通して全身に音波のような物を発する事で発動するめね」

「つまり、あの透明の膜みたいな物は角をへし折れば解除出来るってことか?」

「そうであり。ついでにあの瞬間移動みたいな能力。あれも角が発動の核になっているめね」



 角、か。

 シガギュラドの頭部には確かに特徴的な三つの角がある。内一つ、真ん中にある角は何者かの手によって完全に破壊されている為あの龍は能力が一つ潰されている状態だとフルカニャルリが言った。



「ただ、能力や魔法もそうめが、複数の術を扱うとなると脳の最大容量を圧迫する事になるからどうしても出力が低下してしまうめ。逆に、角を折られた事で使える能力が減ると使用出来る方の能力の効果は増強されると思ってもらった方がいいめね」

「つまり、あの左右の角を同時に折らなければならないってわけか……」



 エドガルさんが難しい顔をして言う。彼は得物である斧に触れながら、周りに言う。



「斧使いのスキルは基本中距離攻撃の技と高速移動する技で構成されている。接近戦を仕掛けるというのであれば俺を起用してくれ」

「見ていため、デカい武器の割に俊敏でありな。メチョチョも高速移動出来る上高火力を叩き込める。二人を軸に作戦を立てたく」

「或いは囮に使ってもいいかもな」



 周りの視線がオレに注目する。



「あの龍は鱗こそ頑丈だし謎バリアもあるから攻めづらいが、一度懐に潜れば正直殺すのは難しくない。アイツ、私の死の爪を脅威として過剰気味に警戒しているからな」

「死の爪?」

「これです」



 左腕の先を黒い魔力で覆い、背後にあった木を小突く。オレに殴られた幹が腐敗し、力を入れていないのに容易に穴を空いた。そのまま木の幹を黒い魔力が侵食していき、根から葉の先まで浸透すると風に吹かれて粉になっていく。



「この腕で傷をつけると対象が死ぬまで魔力が肉体を侵食していきます。流石に龍相手には効かないと思っていましたが、アイツ、これの浸食を嫌って自分で尻尾を切り落とした。効果抜群ですわ」

「いつの間にそんな……ツッコミの時にそれ、使わないでくれよ? マルエル」

「度が過ぎたら普通に使うよ」

「不可逆の力関係が生まれてしまった」



 戦々恐々とした声でヒグンが言った。ちなみに冗談のつもりは無い、こいつのセクハラどんどんエスカレートしてるからね。さっきなんか人前でフルカニャルリの乳首摘んでたっぽいし。


 そういうチャラエロ漫画的な空気にパーティーがシフトしていくのは風紀委員として見過ごせないよ。表では清く正しく、メリハリをちゃんとしないとだからな。



「じゃあマルエルを軸に、メチョチョとエドガルが注意を引いてその他が支援という形で行くめ?」

「不安だ。もしあの龍の炎や、そうでなくとも薙ぎ払いを食らったらひとたまりも無いだろ? 僕も前線で援護した方が……」

「機動力不足だろ。確かにパワーも耐久力も頭抜けてるってか化け物レベルではあるけど、スピード特化の二人はまだしも肉弾戦じゃ私よりも動きトロいじゃん」

「それはそうなんだが、フルカニャルリと共に糸で移動すれば」

「ぼくの糸を使った移動は直線移動だから動きが予測しやすいめ。小回りも利かないから、誰かを護衛しながらというのは実は苦手なのめよ」

「それにブレスを食らったら流石のヒグンもウェルダン焼きになっちまうだろ。攻撃に混ざるより流れ弾から他の連中を守る役割に徹した方がいい」



 メチョチョが龍の動向を観察しているシャクラッチャを見る。



「ねえフルカニャ、妖精さん達に近接戦が得意な人はいないの?」

「シャクラッチャくらいめ。でもさっき自分で言ってたように、シャクラッチャは集団行動には不向きであり。他の妖精は搦手が得意なのばかりだから囮が出来そうな助っ人はいないめね」

「集団行動に不向きってのは? 連携が取り辛いって感じか?」

「そうであり。シャクラッチャの魔法、大体が広範囲に影響を及ぼすゆえ」

「えぇ……」



 なんだっけ、雷を司る妖精さんだっけ? 確かに広範囲攻撃多そうな設定ではあるね。というか漫画とかの便利設定じゃないガチの電流とか電熱とかで戦うタイプだったら戦場投入しただけで味方キル数の方が多そうだね。


 嫌だなあ、巻き添え食らって落雷に打たれて体の中身大火事起こしたらどうしよ。でも奇跡的に生還して木の枝みたいな紋様が体に残るのはいいよね、かっこいい。不謹慎か。



「その話、俺達にも聞かせてくれ」

「! フルンスカラじゃないか!」



 作戦会議中、別働隊で動いていたらしい冒険者の一団がこちらに合流した。その中にはヒグンと同郷で幼馴染のフルンスカラさんが率いるパーティーもあった。



「やはり来ていたのか親友よ〜!!」

「くっつくなヒグン! 俺はお前と親友になった覚えはないぞ!?」

「僕は親友だと思ってるぜ〜このこの〜!!」

「ぐわあああぁぁ!!?」



 心底嬉しそうにフルンスカラさんを抱き上げるヒグン。すごいや、抱き締める力が強すぎてフルンスカラさんの体が沿っている。鯖折りするつもりなのかな?



「やっほー! 久しぶりー、マルエルちゃん。痴女子ちゃん」

「久しぶり〜サーリャ」「おいまだ痴女子って呼んでるめか」



 フルンスカラの仲間である符術士のサーリャ、魔法使いのリカルド、槍術士のシルフィも輪に加わる。全員衣装が煤けてはいるが目立った怪我はしていないようだった。



「シガギュラドの正面で戦っていたのはお前らだったのかよ。大丈夫だったか?」

「うーん。私達は全員無事だったけど、犠牲者は……」

「そうか。……クソッ、あのデカブツトカゲ。好き勝手やってくれやがって!」



 褐色刺青マッチョのリカルドさんが悔しそうに地面を叩く。様子を見るに彼も目の前で冒険者が蹂躙されるのを見てしまったようだ。



「そっちの悪魔っぽい子と筋肉さんはマルエルちゃん達の新しいお仲間さん?」

「あ、あぁ。悪魔っぽい方はメチョチョって名前で、私らのパーティーの新メンバー。こちらはエドガルさん。パーティーメンバーでは無いけど、仲間だよ」



 エドガルさんは「よろしく」と短く手を上げながら言った。先輩冒険者らしいラフな挨拶だ。



「おま……あなた達は、ぱぱとままのお知り合いの人達?」

「今お前って言いかけたな。パパとママって? 俺達も新しいめの冒険者だから、あまり知り合いはいないんだが……」

「えっ? でも、あっちのリーダーっぽい人はぱぱと取っ組み合いしてるし、お前は今ままと喋ってるでしょ?」

「えっ?」

「えっ?」

「……えっ?」



 リカルドさんがオレを見て、ヒグンを見て、再びオレを見た。



「……デカくない? お前らの子供」

「違う違う、子供っつっても血縁的なやつじゃなく。なんかそういう、ごっこ的なやつだから……」

「な、なぁんだ! そうだったのか」

「びっくりしたよ〜。あたし、マルエルちゃんが四歳とか五歳くらいの時に産んだ子なのかと……」

「産むかあ。だいたいその頃はヒグンと出会ってすらないっての」

「ちなみにぼくもマルエルも、一応ヒグンの赤ちゃんはお腹の中にいるめよ」

「おいフルカニャお前余計な」「「「なにいいぃぃぃぃぃっ!!!?」」」



 あーあ、言わんこっちゃない。リカルドさん、サーリャ、シルフィさんの三人が目が飛び出そうな勢いでフルカニャルリに大声を向けていた。



「な、なんだ? おいリカルド、今なんて」

「い、いや、コイツら」「待ってお願い待って。お願いだからこれ以上広めないで」



 ヒグンとのじゃれ合いを終えたフルンスカラがこっちの輪に入ってきて話の内容をリカルドに尋ねる。それを必死に辞めるよう懇願する。リカルドは渋々話すのを辞めてくれた。



「だから、ぼくとマルエルには」「フルカニャッ! フルカニャーーーーーッ!!!」

「えっ!? ちょ、危なっ、んむーーーっ!?」



 もはや飛び込んだ。フルカニャルリの上に乗っかりその口を手で押さえる。もうコイツには何も喋らせねえ! 黙ってろ虫ガキがあああぁぁぁ!!!



「ぶほっ!?」「ぶふふっ!?」

「きゃー!? フルンスカラとヒグンが鼻血を噴き出して倒れたあー!?」



 なんでやねん。



「こ、これは悪くない光景だな……。マルエルと痴女子、二人とも尻が強調されてるエロ衣装を着てるから二つが揉み合うと中々……」

「はあ。男は馬鹿ばっかだね……」



 そういう事かよ。それでヒグンとフルンスカラは二人仲良く鼻血噴き出したと。アホか?


 シルフィさんが冷静にリカルドにツッコミを入れ、鼻血を噴き出しながらも尻を凝視してくる馬鹿二人に喝を入れて場の雰囲気をリセットしてくれた。



「なるほど、死の爪って能力をマルエルが使うために囮が必要だと」

「マルエル単独じゃ鱗の特殊機能を越えられないから、機動力と攻撃力が伴ってる囮が欲しいめ。メチョチョとエドガルはその点をクリアしてるめが、中々条件に合う人が居なくて……」

「それならこちらからは俺とシルフィが手を貸そう」

「格闘家と槍術士、だったか?」

「えぇ。エドガルさん程卓越した戦闘者ではありませんが、俺もシルフィもそこそこ戦える程度には鍛錬を積んでいます」

「助力は有難いんだが、私らはあんたらの戦闘を見た事がない。信用して大丈夫なのか?」

「無問題だ」



 オレの問い掛けにフルンスカラは力強く答える。何やら確固たる意志を持った強い瞳をしていた。彼は握った拳を震わせながら言葉を続けた。



「この戦いで、共に酒を飲み交わした奴や賭けに付き合ってくれた奴、気の良い奴、気に食わないが嫌いになれなかった奴、そういった仲間を何人も喪った。……冒険者ってのはそういう不意の離別が付き物なのは理解しているし、覚悟もしていたさ。……でも、だからといってじゃあ仇を放って逃げ帰れるかと言われたら、そんな筈がないんだよ……!」



 フルンスカラ達は、オレたちがここに来るより前から戦闘行動を行っていた前線隊だったらしい。オレ達が見た以上の凄惨な現場を見て、その上でまだ逃げずにここで踏ん張っている。全員が同じ想いを持ち、龍を討ちたいと願っているのが伝わった。



「俺は土属性の魔法を得意とするから後方支援にはうってつけだ。サーリャの符術を駆使すれば更に優位に働くだろうさ」

「……ただ、退くつもりは勿論無いけど作戦が失敗したらどうする? そっちの案は考えてあるの?」



 サーリャさんがオレを見ながら言う。



「死の爪という強力な魔法がある事は分かった。けれどマルエルは本来直接戦闘には不向きな死霊術師なんだし、戦闘術もナイフを使った近接戦闘が関の山でしょ? 成功率は正直、高くないと思う」



 その指摘はごもっともだ。オレは対人戦闘なら文字通り死ぬ程やってきたから大得意なのだが、龍と殺し合ったことなど一度もない。未知の相手であり、強大すぎる相手だ。


 サブプラン、やはり必要だよな。オレだけなら蘇生魔法があるからどうにでもなる、メチョチョも鏡移動があるから戦闘撤退はしやすい。問題はフルンスカラさん、シルフィさん、エドガルさんという事になる。



「サブプランはあるめよ。おーい、ヒルコッコー!」



 フルカニャルリが龍のいる戦場へと大声で叫ぶ。そして、上空に発光剤を投げた瞬間だった。


 宙に浮かぶ発光剤が消え、代わりにその空間に……なんだあれ? 何か人型が現れた。


 その人型は地面に落下しグチャっと言う音が鳴った。だが、出血はしておらず骨折した様子もない。


 というか人の、少女の形をしている何かが地面に落下した衝撃でスライムのように潰れ、若干広がっていた。



「うにゃあ。呼んでゃあ? ふどぅかにゃどぅい〜」

「な、なにこれ」

「ぼくの友達であり。妖精の助っ人め」

「あだしの名前ぁひどぅこっこ。妖精郷じょでつ十三位ど妖精。直系はじゃなみ。づかさどどぅは陰陽。よどすぃぐ」

「分からん分からん」

「名前はヒルコッコ。妖精郷序列十三位の妖精で、異邦の神ジャナミの直系で、陰陽を司ってるめな」

「よ、妖精? 初めて見たぞ……」



フルンスカラさん達が目の前の奇妙な少女を興味深そうに観察する。少女……というか、少女のようなナメクジのような何か? よく分からん。



「妖精と友達って、そんなのアリか? 珍しい精霊だと聞くぞ……?」

「いやいや。ぼく妖精だし」

「そうなのか!?」「あーっ! こ、こら、フルカニャルリ!?」



 焦った様子のヒグンとケロッとしているフルカニャルリ。もう隠さなくてもいいんじゃないだろうか、面倒臭いし。



「よ、妖精だったのか……妖精って、人との子供を産めるのか?」



 気になる点はそこなんだ、エドガルさん。



「体も小さいし、負担も凄まじいだろうに。マルエルも……マルエルって卵生か?」

「セクハラです」

「セクハラではないだろ」



 いやセクハラだろ。女相手に卵生か胎生か聞かないだろ普通。あと普通に胎生だよ、この翼後付けでオレはあくまで人間だから。



「それで、このナメクジ妖精がサブプランにどう作用するんだよ」

「でぃつでいだ!! あだしはだめくじだんかでゃだい!!!」

「ごめんなさい。本当にごめんなさいね、何言ってるか分からないです」

「でゃー!!!」



 なんだ、でゃーって。怒っているのは分かるんだが困るわ。滑舌が悪いクレーマーの対応をしてるみたいな気分になるからやめてくれ。



「ヒルコッコは一体だけ分身を作る魔法と、視覚に入っている異なる二つの位置を入れ替える魔法を使えるのめよ」

「不義遊戯じゃん」

「ぶぎうぎ? なんか面白い響きめね!」



 そうだね。或いは避雷針の術かな。またメジャーかつチートな能力を持った妖精が現れたよ。


 妖精ってなに、シンプルかつ強いをテーマに魔法を構築してんの?


 問答無用で身につけてるものを外させたり、武器を使い物にならなくしたり、変身したり。広範囲の負傷者を一気に全快にしたり物同士の位置換えをしたり?


 なんか、能力者バトル物みたいな効果の魔法ばかりじゃん。羨ましいが。



「それで? その能力をどう使うんだ?」

「もし作戦が失敗した場合は後ろで待機しているヒルコッコがこの大陸の端、シガギュラドが活動し始めた海ら辺に居るヒルコッコの分身を徹してなにか小石辺りと位置替えをしてもらうめ。そうする事で一日程のシガギュラドの行動を遅らせる事が出来る」

「なんだそりゃ、何回でも失敗出来るじゃん」

「や、距離が距離だしシガギュラドは体積も大きいのでそう何発も使えない筈であり」



 ヒルコッコの魔法には積載量の縛りは無いが、代わりに魔力消費量が変動すると。強力〜。



「それなら、まだ安心して戦えるか……どうする? 皆」



 フルンスカラが自分の仲間に問いかける。



「あたしは問題無いよ」

「俺もだ。キッチリ仕返しはさせてもらうぜ」

「ウチも。……マルエル」

「ふぇ?」



 えっ、何故そこでオレが呼ばれるの? 完全に流れぶち壊しちゃったじゃん。

 びっくりしたあ、呼ばれるとは思ってなくて油断して欠伸してたから間抜けな顔しちゃったやんけ。



「マルエル、ウチの事覚えてる?」

「え、うん。シルフィさんだよね」

「ん、あんたにファーストキスを奪われた女」

「えぇ……いやだからあれは」

「いいの、怒ってなんかないし。でもね、一つお願いを聞いてもらいたいの」

「え、怖い怖い。どうしようヒグン、私怖いよ?」

「僕に振らないでよ……」



 なんだか分からないしこっち混乱してるのに、あたかもつつがなく円滑に話が進んでいるかのようなスタンスで話し続けるシルフィさんに戦慄が走る。



「この戦いが終わったら、一晩だけ。……んーん、一週間。いや一ヶ月。一年くらい、晩を共に過ごしてほしいの」

「ねえ怖い。助けてヒグンお願い。本当に怖い」

「僕も混ざっていいかな!? ねえシルフィちゃん!」

「おっと急な向かい風〜」



 そういえばヒグンの奴、以前もシルフィさんの事パーティーに誘ってたもんな。そっかそっか、願いが叶えばヒグン的には一石二鳥かあ。


 絶対に仲間に引き入れさせないように頑張ろう。この子、目が"マジ"なんだよね。ヤンデレカマしてる時のフルカニャルリと同じ目。冗談じゃねえわ。

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