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56頁目「ちゃんと黒ミサ」

 水着に着替えフルカニャルリの隣に立つ。暖炉の前だからマシだが、普通に寒いんですけど。



「ほうほうほう! いいね、肌色だね!」

「殺されたいのかお前」

「この餅尻を」「幼い子の前だからね」

「いだぁい!?」



 またケツを出してフリフリしようとしたフルカニャルリの尻肉をバチンと叩いて辞めさせる。同性相手ならオッケーとか無いんですよ、教育に悪いので駄目です。



「で? なに、私らソファーに寝っ転がればいいの?」



 暖炉の前の二つのソファーを見ながら言う。一つは暖炉の対面、もう一つは暖炉から見て右手にある。安い家具屋で買った物で、少し小さな机に向かうように配置してある。


 ソファーの端の一辺、互いのソファーの角の方向が共通している部分に二つの一人用の椅子が置いてある。一つは子供用の少し低い椅子、もう一つはヒグン用の足が長い椅子だ。



「そうだね。二人ともソファーの上に寝転がってくれ」

「はーい!」「あい」



 言われ、暖炉に近くて暖かい方をフルカニャルリに譲りオレは対面となっている方に寝転がる。普通にしてる分には問題無いが、隙間風に当たるとやはり寒い。翼を風避けにするか。



「よいしょ」



 フルカニャルリはうつ伏せに寝転がったので真似をしようとしたが、胸が何となく気持ち悪いから仰向けになった。こんなに前からでかかったっけ。こんな肉体でも成長するって事なんかな?



「オイルをぬりますよ〜」

「あい〜」



 メチョチョがオレの足の裏にマッサージオイルを塗り込んできた。フルカニャルリの足はヒグンが塗り込んでいる。

 クックック。あちらはくすぐったさに耐えかねてフルカニャルリが笑い転げている、幼子は神経が敏感だからな。はいこの勝負は貰いです。



「ん? おい、足ツボってヒグンが押すんじゃないの? メチョチョも足ツボマッサージの心得あるのか?」

「? ないよー。あたち素人!」

「はあ。……え、こわっ。変な所押さないでよ……?」

「大丈夫だよー! ぱぱと相談したの、マルエルって自分で死んだりするからどう考えても痛みに強いでしょ?」

「まあ多少は」



 痛いもんは痛いけど、普通の人間はきっと自分の頭蓋骨割って脳みそ自分でかき混ぜたりしないだろうね。

 自分で外れた肩をはめ直したり腕をギコギコ切断したりもしないだろう。それらが出来る程度には痛みには耐性あるよ。



「それならこの勝負は不公平になるなって。だから、あたちは別の方向で責めるの!」

「別の方向?」

「うん! いわゆる愛撫!」

「あ? アイブ?」



 アイブ……アイブ? なにそれ、そんな種類のマッサージがあんのか?



「ッ、メチョチョ……?」



 ひんやりとした感触が太腿に落ちた。メチョチョが丸く小さな手で一生懸命オレの腿全体にオイルを塗り込んでいく。



「メチョチョ、待て。何をしている」

「うん? だから愛撫の準備だよ。あたちの記憶にあった、マルエルって性的感覚に弱いでしょ?」

「セイテキ? ……愛撫!?」

「? うん!」

「うんじゃねえわアホか!? てかなに記憶に残ってたって、当方そんな事言われるような記憶は持ち合わせていませんが!?」

「んー? んー、でも記憶にある。マルエル、とっても気持ちよさそうに腰跳ねさせてる。自分でおまたをさわ」

「本当に知らない記憶なのだが!? えっ、そんな事ヒグンと会ってから一回もしてないって!!」

「そうなの?」

「そうだよ!」

「でも、どのみち痛み我慢は不公平だからマルエルはこっち。公平性」

「やめなさい! やめなさいっ! お前みたいなガキんちょはそういうの知らなくてもいいの!!!」

「じゃあぱぱと交代?」

「そうなるか! それもダメだなうーん詰んだ!」

「僕はドンと来いだよマルエル!」

「今体に触ったら刺身にするからな」



 こんな衆目の前で男に愛撫されるとか死んでも嫌だが、子供にそれをさせるのはもっと一般的なアウト判定な気がしてならない。

 てかどっちにされるのも嫌だよ。なんだよ愛撫って馬鹿なのか? エロ漫画の世界じゃん。なんで同行者が増える毎に風紀が爛れていくの? 宅飲み盛んなインカレサークル???



「にぎゃああぁぁぁ〜〜〜っ!?」



 ビクッ。なんだなんだ? 見るとフルカニャルリが顔に手を当てて悲鳴を上げていた。ヒグンが困惑した様子でフルカニャルリの足から手を離す。



「え、ここで悲鳴あげられたの初めてなんだけど……」

「どこを押したんだよ?」

「生殖器のツボ」

「一発目にそこ行く? 何をやらせてもキモいなお前」

「い、いやだってここ痛がる人あんまり見た事ない……てかフルカニャ、もしかして性病とか持ってる……?」



 最低な質問してるんですけどあの人。そんな事ストレートに聞く人いる? ビックリしちゃった。



「あ、あるわけなく! というか僕処女と言ってるめ! 性的接触はおろか自慰もしたこと無く!!!」

「赤裸々だな」

「し、しかし……うーん? じゃあ別の所押すね」

「にぎゃあああぁぁぁ〜〜〜〜〜!!?」

「また? 今度はどこ押したんだよ」

「肝臓かな」

「フルカニャ、その体であんまり酒飲むなよ……」

「飲んでないよぉ! ひぎっ!? ぎひゃあああぁぁ〜〜〜〜〜!!!?」

「ここは右の肺だね」

「子供はタバコ吸っちゃダメだぞ〜」

「吸ってないってぇ!! ま、待ってヒグンお願い待って! 何かおかしいよ!? これなに!? 人間はこんな拷問を趣味でやってるの!?」



 語尾の○○めってやつ取れちゃってるじゃん。キャラ崩壊してんぞ妖精さん。アイデンティティ守れない程しんどいのか?



「ぎゅわあああぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!」

「ここはリンパ」

「うぐぐぐぐぎゃあああぁぁぁっ!!?」

「ここは小腸」

「うぐぁっ! うぐぁっ! はぎゃあああぁぁぁ〜〜!???」

「左目、左耳、頭も痛いと来たか。すごいな、全身で悲鳴コンプリート出来るぞ」

「やめてよぉ!? いっ!? そこなにそこそこそこいたただだだだだっ!!!」

「ここは痔のツボだね」

「ぼく痔じゃないのに!? なんでええぇぇっ!!」



 ああ凄まじいや。ヒグンの肩を掴んで押したり叩いたりしてる、本気めに。

 普段お目にかかれない光景だ、あんなに必死にヒグンを拒絶するだなんて。それセクハラされた時にやれよ。



「ぱぱ凄いなあ。よーし、あたちも負けてられない!」

「えっ? 待っ、んぅ……っ!?」



 太腿をグニュッと揉まれる。気持ちいいが耐えられる。耐えられるが……これ蓄積型の快感だ。特に股関節の股間の下、直下の内側がやばい。揉まれる度にゾワゾワする。



「なんでこんな技術持ってんだよお前……」

「あたちは悪魔だから、こういうのには詳しいよ! 本能的に!」

「それはサキュバスとかの管轄だろ……」

「サキュバスも弱いけど悪魔なんだよー?」

「そうなんだ、知らなかっ……ぅあっ」



 コイツ、何度も何度も揉みほぐした後に急に指先でフェザータッチしてきやがった。ガチやんけ、冗談じゃねえや!


 ヤバいな。勝負とか関係なくこんなガキんちょにもし億が一絶頂させられたらちゃんと生き恥だぞ。どうにか体の中心から遠い位置にマッサージ箇所を離してもらわないと、オレもいつまで耐えられるか分からん……!



「な、なあ。そこ太ももだろ? 最初足裏にオイル塗ってたじゃん、そっちは手付かずでいいのか?」

「足の裏? いいの?」

「え?」



 いいのってなにが? 足の裏でイく奴なんてこの世にいないだろ。全身が性感帯だと思ってんのか? 可愛いなコイツ。



「後悔しても知らないよ」

「はあ。そっすか」



 というやり取りをしている間にもフルカニャルリが悲鳴を上げているのが聞こえる。すごいな、クッションに顔を押し付けてるのに悲鳴が漏れてるよ、立派なシャウトだわ。喉が潰れないか心配です。



 ……? なんだ? なんか、すごく体が暖かくなってきたような気がする。


 メチョチョはオレの両足の裏の中心上部、親指の可動域の根本付近にあるツボを指で優しくグリグリと押していた。



「マルエル、体がポカポカしてきたでしょ」

「お、おう。マッサージ上手いなお前」

「んっふっふ。悪魔はね、人間を堕落させる技を本能的に備えてるんだよ?」

「堕落? 物騒だな」

「ふっふー」



 不敵に笑うメチョチョ。彼女は力を入れたまま指を滑らせ、足の内側に刺激する箇所を変えた。


 親指でそのツボを押される。ほぐされるとポカポカした体の熱が少しずつ下半身に集まってくる感じがした。ほぉ〜、こりゃ冬の冷えにはよく効きそうだ。心地良いね〜。



「ッ!?」



 急にチュクッていう水音が鳴った。びっくりして足の先を見ると、メチョチョがツボを親指で刺激しながら人差し指と中指でオレの足の親指を擦り上げている。

 オイルで濡れた親指がニュルニュル、グチュグチュと音を鳴らす。残った指でメチョチョは足の甲を優しく擦る、器用すぎだろ。なんかこの音恥ずかしいんですけど……。



「気持ちいい? マルエル」

「ど、どうでしょう。恥ずかしいって感情が今の所勝ってるかな」

「あはっ。やっぱりマルエルはコレに弱いんだ」

「はあ? 何言って……ッ!?」



 音が激しくなり、力も強くなって速度も上がる。なになに、意味が分からんが足の裏やばい。なんか登ってくる、塊みたいに足の内側から何かが体に向けて上がってくる……!?



「ま、待ってメチョチョ! なんかおかしい! はぷっ!?」



 口の中になにか飛び込んでくる。黒くてメチョチョの尾てい骨から伸びてる物だ。尻尾か……?



「足の裏は神経が集中している所だよ? 気持ちいい事をするのに適してるんだよ、マルエル」



 そうなの!? 知らなかった。

 てかこの口のやつどかして欲しい……! なんかおしゃぶりみたいに口にハマって、向こうから力を入れられてるせいで外せない! なにこれ、人の尻尾とディープキスしてるみたいで嫌なんだが!?



「あはは、マルエル。あたちの尻尾をちゅぽちゅぽしてていやらしい〜」

「!? 〜〜〜っ!!」



 理不尽な言いがかりだから文句を言ってやろうとしたのが仇となった。ハート型みたいな尻尾の先端が口の中に入ってきた。

 こっちの事などお構い無しに口の中を蹂躙される。その気なんかないのに勝手に口から艶かしい水音と、苦しみから漏れる嬌声みたいな自分の声。


 なんですかこれ。拷問ですか?



「ちなみに悪魔の尻尾からは催淫効果のある体液が出るんだよ〜?」

「!?」

「早く口から出さないとどんどん発情しちゃうよ〜」



 とんでもない事を言うメチョチョ、変に甘いなと思ってたらこれメチョチョの体液なの!? 勘弁してくれよマジで!!


 両手で尻尾を引っこ抜いてやろうと思ったらドスンとオレの上にメチョチョが乗ってきた。尻をオレの顔に押し付けるようにして足裏を刺激しながら、両手を押さえて口の中に尻尾をズコ入れしてくる。



「うわ、あっちめっちゃエロいな。いいなぁ〜!!」

「ぬぎゃあああぁぁぁ〜〜〜!!!!!」



 呑気な事を言いながら足ツボにグリっと力を入れるヒグン。身を反り返させて絶叫するフルカニャルリ。あちらもあちらで想像を絶する思いをしているらしかった。


 ……まあ、ここまで来たらフルカニャルリが足ツボに弱い理由も分かる。あの肉体、妖精の同化で無理矢理形を歪められてるんだもんな。全身凝りまくってるのも納得ではあるか。



「ッ!? 〜〜〜〜ッ」



 急にメチョチョがオレの足裏から手を離し、くるぶしの近くのくぼんだ部分と凹んだ部分を握ってきた。ギューって。その瞬間固まっていた熱が一気に脳にまで登ってきた気がした。



「ふっふっふ。絶頂したね、マルエル」

「ッ、んぶっ、ゔっ……っ!?」



 勝手に体が痙攣する、目の前が白くなって頭ん中で何かがパチパチ鳴るような錯覚に襲われる。


 口の中を襲っていた尻尾が引き抜かれる。オレの唾液も混ざった体液がトポポって顔の上に垂れ落ちてきた。



「はぁー……はあ゛ー……っ、なんなん……お前……」

「うわあ! 乱れてるマルエルエロいなっ! もう一回見せてくれメチョチョ!」

「!? 待っ」

「分かったよぱぱ!」

「んぐううぅぅっ!?」

「ぎゃひいいいぁぁぁぁぁっ!!?」



 口の中に再び尻尾がズボッと入れられた。なんでやねん。ギブアップしようにも出来ないだろこれ。フルカニャルリの悲鳴は相変わらずだし。なあ、当初の目的忘れてないかこの二人。




 *




「ぼ、ぼくの負け! もうやめてええぇっ!!」

「! ギブアップかい?」

「ぎぶあっぷ! もう駄目! 折られる! 足粉々にされるーっ!」

「しないよ……」



 しばらく耐えていたがフルカニャルリは10分もしないうちにギブアップした。

 手を離すと膝を曲げて自分の足の指の本数を数えていた。紐が緩んでパンツがズレてお尻の線が丸見えなのだが、気にしている余裕は無いようだ。僕の鼻から血が飛び出した。



「勝負は終わりだよメチョチョ。フルカニャルリがギブアップした、もうやめてあげて」

「わかったー!」



 快活に返事するメチョチョ。彼女がマルエルの足から手を離し、口から尻尾を引き抜かせるとまたドロっとした透明の液体が尻尾から零れてマルエルの顔を濡らした。


 髪を激しく乱し、がに股のように脚を開いてだらしなく小刻みに痙攣しているマルエル。汗で全身びしょ濡れだ、特にパンツなんかすごいことになってる。やっぱり刺激される箇所が近い接続部分は多く汗が出るのかな?



「……それ、マルエル生きてる?」

「大丈夫! 心臓止まってもまた動き出すって記憶にあった!」

「怖い事言ってるなあ……」



 マルエルの目、上を向いたままなんですけど。いやでも大きく痙攣して体が強ばった時なんかは表情が変わるな、眉の辺りとか。

 でも脚を開いたままブシュブシュ液体を出すのは下品だからやめた方がいいのでは? なにあれ、尿……?



「おーい。んー、駄目。マルエルしばらく戻って来れないかもー」

「そっか。贈り物勝負の前に食事にするかい?」

「するーっ!」

「うわ。マルエル、イキ壊されており……メチョチョ、恐ろしい子……!」



 背後でフルカニャルリが何か言っていたがよく分からなかった。介抱は彼女がしてくれるとの事なので、僕はメチョチョと二人で夕食の準備に取り掛かった。

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