女になりたいから異世界で回復魔法ガチるサーガ。

53頁目「もう十分ハーレムじゃないか？」

「で？　最終的に私らの元に来たと」

「戦力外だったのにぼくらに頼るしか無くなったと」

「う、うん。そうなんだけど……なんで怒ってるの？」

　メチョチョが母親を欲しがっている話、冒険者ギルドの女性の知り合いに声をかけてい見事に全滅した話を説明すると、マルエルとフルカニャルリは何故か不機嫌になり僕に話す声のトーンも冷たくなった。なんだというのだろうか。

「私とフルカニャには母親役は無理、ねえ。一緒に冒険者やってる仲間だってのに、いの一番に頼らないんだな」

「いや、だからそれは」

「ぼく達には子育ての経験がない、それはごもっともめ。でも、この街のギルドの女の人は若者ばかりだしヒグンと交流があるのもそういう人達でしょ？　子育て経験なんてろくすっぽなく。条件同じじゃん」

「それは……」

「って考えたらよぉ。私らは人間の倍以上生きてるわけだし経験値は豊富なワケ。普通に考えてさ、選択肢としては妥当な二人だと思うけどなあ私は」

「年齢云々はまた別の問題で」

「てかてか、マルエルはメチョチョの朝起きてからのお世話、ぼくは夜寝るまでのお世話をしてるめ。もう既にママであり。なのに頼ってもらえないの、癪であり」

「そ、それは」

　めちゃくちゃ根に持たれてる〜！？　この二人、メチョチョの事大好きだもんなあ！　そりゃ自分らは後回しにされたら怒るかあ……。

「そ、そういえばメチョチョは？」

「近所の子達と遊びに行ってるよ。夕方のベルが鳴ったら迎えに行くめ」

「へ、へぇ〜！　フルカニャルリ、まるでお母さんだね〜！　僕の目は節穴だな、こんなに頼りになる仲間がいるのに頼らないだなんて」

「本当め。それを、なに？　おっぱいが小さくて、ちょっとからかっただけで親権を失うめか。横暴であり」

「からかいに関しては妥当だろ」

　マルエルの鋭いツッコミ。良かった、味方がいた……！

「でも私まで親権失うのはおかしいよな。胸吸われてさ、実際痛かったんだから怒ってもいいだろ。なんでそれで失格になるんだよ」

「マ、マルエルの場合はさ。結構胸、大きいじゃん？　だから……」

「……？　いいよ、もうセクハラで怒んないから。揉むか？」

「いいのかい！？」

「あ、揉みに来るのか。キモいからやっぱり怒る事にするね」

「嘘でしょ」

　立ってマルエルの最後まで行って遠慮なく胸をガバッと鷲掴みにしたら顎を掴まれて上向きに押された。キスはいいのにこれは駄目なのかぁ〜、よく分からないや。

「で？　私の胸がなに」

「あ、うん。ほら、結構大きいからさ。それを見るとメチョチョの発想的には母乳に結びつくらしくて」

「母乳？」

「母乳めか。よし、次の衣装は牛さんビキニめな！　マルエルッ」

「絶対嫌だわ。なんだよ次の衣装って、替えられるなら普通の服着させろよ」

「ダメであり」

　お、いい感じに二人が話を脱線してくれた。良かった、こんな事僕の口からは説明しづらかったんだ。それとなく話題が逸れたのなら僥倖である。

「……あっ。母乳ってもしかして、マルエルが母乳を出せるようにって事めか？」

　なんで話題が一コマ戻るんだよ。そのまま明後日の方向に突っ走りなさいよ。

「はあ？　なに、私が母乳を出す？　そんなん……」

「妊娠でありな」

「っ！　…………ば、ばかじゃねえの」

　ボソッと言ったマルエルと目が合い、彼女は顔を赤く染めて目を逸らした。そういう反応かあ。

「しかし、別に妊娠ならぼくも出来るし、今は小さくてもきっと大きくなるめ。母乳ならぼくも出せるよ。ねえ？　ヒーグーン」

「！？　フ、フルカニャルリ？」

　赤くなってモジモジしているマルエルとは裏腹に、席を立ったフルカニャルリが僕に擦り寄ってきた。

「子供を作れば一石二鳥であり。くふふ、どうめか？　ぼくと夜を越さないめか？」

「ちょ、ちょっと！」

「？　あれれ、いつもなら一時乗ってくるのに。どうしたの？　ぼくみたいな幼児体型には飽きためか？」

「そ、そうじゃなくてっ！　ノリじゃない方で好かれてるって聞いた相手にそういう事されると、やばいから！」

「えっ？　……マルエル？」

「私は何も言ってないよ」

「……」

　マルエルに意見を求めるが、予想とは違う答えが返ってきたフルカニャルリは僕の顔を見上げた。誰からそんな話を？　そう目が訴えていた。

　ここで「メチョチョが言ってたよ」なんて言ったら流石のフルカニャルリでもメチョチョの事を怒りそうだよな。それはちょっと忍びない。ここは、それとなく誤魔化す方向性で行こう。

「い、いや〜。ごめんごめん、誰かから聞いたって訳じゃなくて、最近ほら？　フルカニャルリとやたらと偶然顔を合わせる機会増えたし、気付いたらじーっと目が合うような気するしさ？　なんか自然なボディタッチも増えてきたし距離感が近いから、てっきりそうなのかなって思っただけで」

「め、め……」

「ん？」

「気付いてたの……？」

「ああ、うん。まあ距離感がやたら近いし、質問ばかりして来てこっちの話をウンウンって聞いてくれる時間増えたな〜とは思ってたよ。あと、マルエルが居ないタイミングとかにしれっと隣座ってきたりね」

「や、やめてほしく……」

「？　フルカニャル、リ……？」

　声を震わせるフルカニャルリ。何事かと思いその顔を見てみると、彼女も顔を朱色に染めて恥ずかしそうに口を引き結んでプルプルと震えていた。

「うぉっ、フルカニャの赤面を引き出した。やるな、ヒグン」

「う、うるさく！　マルエル、しーっ！」

「ぎゃははっ、なんだそりゃ！　てか意外とフルカニャルリもそういう強かなアプローチするんだなあ？　私がいない間に接近するとか、人間を俯瞰して見てるぶってる割に、バチバチに人間のムーブするじゃ〜ん」

「マルエルーッ！」

「きはははっ、おもろ〜。ほれ、ヒグンに『実はぼくヒグンの事ちゅきめした〜』とか言ってみろよ？　想いは口にしなきゃ伝わんないぞ〜」

　ニヤニヤと悪どい笑顔でフルカニャルリに言葉を投げるマルエル。楽しそうだなあ、普段フルカニャルリに悪戯をされているからその仕返しのつもりなのだろうか。

「うー……」

　煽られたフルカニャルリは威嚇するようにマルエルを睨みながらも、そっと僕の親指の辺りを摘んできた。

「ヒ、ヒグン」

「うん？」

「……」

　フルカニャルリはマルエルに背を向け僕を見る。少し視線を泳がせ、しどろもどろになりながらも、自分の中で言う言葉を固めると、心を決めるかのように唾を飲んだ後に口を開いた。

「……ヒグンは、ハーレムが作りたいんだよね」

「お、おう。そうだね……？」

「じゃあ、しゃがんでほしく」

「？　分かった」

　フルカニャルリの言う通り膝を曲げてしゃがむ。そしてフルカニャルリの顔の方に視線を戻した瞬間。

　彼女の小さな口が僕の口と触れ合った。

「なっ！？」

「……っ、はあああぁぁぁっ！？」

　あ、すごい。マルエルが絶叫してる、目玉をかっぴらいて。余裕そうに深く椅子に座っていたのに前のめりになっちゃってる。

　フルカニャルリはそのまま僕に抱きつき、耳元で小さな声で何度も「好きっ、好きっ！」と言ってきた。すごいな、真っ直ぐすぎるな。好意の伝え方が。

「ぼくヒグンの事好き！　本当に好きめ！　嘘とか悪戯じゃなく本気っ！　ヒグンにも好きになってほしく！　愛してほしく！」

「おい待てよコラお前いきなり」

「マルエル！　良いって言っため！　イチャつくの許してくれるって！」

「い、言ったけど！　言ったけどさ……！」

「え、え、何の話？　二人とも、何の話！？」

「あのね、ヒグン。ぼく、ヒグンの事好きなの！」

「おふっ。そ、そうですか。ありがとうございます」

「ヒグンは、ぼくの事好き？」

「う、うん。好きだよ勿論」

「女の子として好き？」

「助けてマルエル！」

　すごいすごい。瞳の中にハートが見えるけどどうなってるの？？？

　圧を感じるからマルエルの方を見て助けを求めると、彼女は腕を組み「まあ、そういう流れか……」と呟いていた。そういう流れってなに！？！？

「ねえ、ヒグン……」

「え、う、うん。女の子、としても好き、だけど……」

「だけど？」

「そう答えたら、マルエルに怒られる気がして……」

「怒んねーよ」

　マルエルは座ったままそう返した。

「お、怒らないの？　これ受け入れたら浮気じゃない……？」

「お前ハーレム作るんだろ。で、私はその野望を面白がって着いてきた。フルカニャ一人にお熱になって私を放置したりしないんなら、ブチ切れる筋は無いだろ」

「そ、そうかな。そう、かなあ……？」

　前もって言っておけば何股しててもOKなんて事、普通はならないと思うけどなぁ？

「てか、ぶっちゃけると数日前にそこら辺の話はもう済んでんだよ。私とフルカニャの間でな」

「マルエルもフルカニャルリの気持ち知っていたの？」

「うん。だから近い内こうなる気はしてた。てか、あんな必死なアプローチを何日も受けて気持ちに気付かないとか鈍感すぎなお前」

　そんな事言われても、だって今まで女の子にアプローチなんてされた事ないし。そもそも女の子が居ない環境で育ってきましたし……。

　いや、言い訳は良くないか。マルエルの時もこんな風に自分のアプローチを好意と受け取らず、言い訳して見て見ぬふりして悲しませてたんだもんな。

　同じ失敗をして、これ以上大切な人を傷つけるのは駄目だ。今度は僕からもしっかり動かないと。

「ヒグン？」

　フルカニャルリの肩を掴んで一度体から離させ、困惑しているフルカニャルリの顔に顔を近づける。

「フルカニャルリ。口、開いて」

「へっ？　わ、わかり」

「え、おい」

　マルエルがの声がした。でもそれ先に、僅かに開いたフルカニャルリの口に舌を入れた。

「っ！？」

　相手を自分の所有物にするキス、だっけ？　マルエルから教わったやつだ。フルカニャルリの舌を舐めて、やはりフルカニャルリも抵抗はしないのでそのまましばらく口付けをし続ける。

　水音と、チュッチュという音が響いた後口を離すと、僕とフルカニャルリのを結ぶように一本の糸のようなヨダレが垂れた。

「なに、今の……？」

「僕もフルカニャルリの事好きだよって証明だよ。フルカニャルリの全部が欲しいっていう、そういう儀式？　らしいよ」

「へっ、あ、う。うぅ……」

　フルカニャルリが余計に赤面し俯いた。足を閉じ膝同士を付けてモジモジしている。可愛い、照れているんだな。

「オ、オレとした時よりガチじゃねえかよクソボケ！！！」

「えっ？　ちょちっ、マルエッ」

　怒った様子のマルエルが僕を押し倒しそのまま首や顔なんかにチュッチュ音を鳴らし唇を付けまくってきた。マーキングされてるみたいだ。

「！？　ままままってまってまってフルカニャルリ！　それは良くない！　そこはよくなはぷっ！？」

　キスの連撃を食らわせてくるマルエルに対し普通にムクついていたら急にフルカニャルリが僕のズボンのベルトをカチャカチャいわせて外し始めた。

　必死に抵抗するもあえなく負けてズボンを下ろされ、数秒迷う様子すらなくパンツまで下ろされる。

　僕のミニ僕に何かをしようとしているフルカニャルリを阻止しようとしたらマルエルと口が繋がった。

　すごいや、前に受けた接吻よりももっと激しく唾液交換が始まる。髪を指で押えながらもマルエルのキスは止まらない。

　なんなの？　二人とも媚薬でも飲んだ……？

　……そういえば、今日の紅茶はフルカニャルリが淹れてくれたんだった。媚薬も作ってたんだっけ。この二人の暴走の仕方と何かが結びついたような気がする。

「ちゅっ！　んちゅっ、はふっ、んゔっ！」

「んっんっ！　んぶっ！　んっ、じゅぶっ！」

「〜〜〜〜！？」

　いやもう必死すぎでしょ二人とも。やばいって、普段と真逆じゃん。なにこれ天国じゃん。

　でもここは居間だ。外に繋がるドアが見える位置にある。中は覗けないようにしているが万が一という事もあるだろう。というかこんなパブリックな場ですることじゃないでしょ、今からでも場所変えようよ。

　てかやばいぞ。メチョチョって近所の子供と遊んでるんだよね？　不意に帰ってくる可能性だってあるよね？　この光景を見られたら教育に悪いよおおぉぉぉ！？

　そんな嘆きは二人に通じる事はなく、一度スッキリするまでその行為は続いた。ちなみにやはりメチョチョは自力で帰ってきたが、本当にギリギリの紙一重でバレなかった。