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45頁目「新しい仲間(奴隷)できた!」

 暖かい。この感じ、マルエルかフルカニャルリが添い寝に来ている感じだな。鼻血を出して気絶していたら気付けば夜になっていたか。時間ってあっという間なだなあ。


 瞼を閉じたまま僕と添い寝しているのは誰なのかを当てよう。背中に手を回す。翼は無い。ふむふむ。


 フルカニャルリならやはりプリっとしたお尻にタッチしとかないとな。さわさわ……あれ? なんかいつもよりも膨らみが抑え気味のような。


 フルカニャルリは本人も言う通り、小柄な体格にしては割としっかりとした下半身を持っている。安産型というのだろうか? そこに付随して尻肉の丸みも綺麗な曲線を描いていて、胸はマルエルに比べれば見劣りするが尻では一方的に軍杯が上がっていたはずだ。


 今僕の隣に居るこの子は、マルエルよりも更に細身でフルカニャルリと似たぐらいの体格、しかしお尻は控えめ。……いや、でも胸はフルカニャルリよりも僅かにある? マルエル程では無いが、僅かな存在感が僕の胸板に当たっている。


 ……えっ? だ、誰!? 誰これ、誰!? 絶対あの二人じゃないよね、謎の第三者じゃんこれ!



「ぶっ、ぶほっ」



 落ち着け、冷静になれ。僕は鼻血の失血で気絶したばかりなんだぞ、これ以上は命に関わる。妄想は極力しない方向性で進めよう。


 股関のおの子が今日も今日とて元気になるが、まあいい。

 これが固くなるメカニズムはある程度理解している、血液が集中しているのだろう? ならばいっその事股間に血液を集めてしまえ、鼻血によって大概に排出されるよりも大分マシだ。



「んっ……」



 謎の少女が唸る。僕の顎に頭が当たる。グリグリ。


 ……?


 なんだろう、なんか妙な固い感触が顎に当たっている気がする。なにこれ、骨? 表面はつるんとしていて、筋があって円を描くというか、巻かれているというか……?



「……ひゅう」



 そーっと目を開けてみる。

 屋内には灯りが着いていないのであまり鮮明には見えないが、それでもカーテン無しの窓からは外の灯りが入ってきて少しだけ部屋の中が照らされている。


 やはり知らない少女が居た。


 起こさないようにフルカニャルリから貰った発光剤(弱)を振って部屋に散布した。

 部屋は段々と明るく……明るっ!? 明るすぎるな! 部屋全体がしっかりと照らされてるじゃないか、どこが(弱)なんだこれ!?



「んっ! ……ぅ?」

「あ、ど、どうも〜」



 部屋の明るさのせいで少女が目を覚ましてしまった。目が合う。彼女は寝ぼけた様な表情のまま僕の顔をペタペタと触れ始めた。



「な、なに。というか君は……?」

「ぱ〜ぱ?」

「……ん?」

「ぱぱ。ぎゅー」

「おっと……?」



 ぱぱ、ぎゅーらしいです。ぱぱを指すのは僕で、少女は僕の事を強く抱きしめてきた。


 さて、これは何事だろうか? 僕に子供なんかいない。


 ……記憶を食う魔物に数年分の記憶を食われたとか? だとしたらこの子には母親、つまり僕の奥さんが居るはずだよな。それは誰なんだろう。



「えーと、ごめんね。君、名前はなんて言うの?」

「メチョチョ!」

「……ん?」

「メチョチョ!」

「……うーん。可愛い名前だねえ」



 なんだメチョチョって。どんな名前だよ。聞いた事ないけど、何族の名前なんだよそれ。


 しかし、これはまた。すごい見た目の子が現れたな……。


 皮膚は褐色を通り越して薄青肌で白目が黒く瞳が紫色。髪は薄いピンク色で山羊のように巻かれた角が頭に二つ。さて、これは人間だろうか。100パーセント違う。



「ぶほっ!?」



 年齢はフルカニャルリと同じくらい、なのかな? そしてやはり裸である。鼻血も吹き出すさ、乳首は普通にピンク色なんだね。目を逸らす。



「ぱぱ、ちゅは?」

「待て、待とう。僕は恐らくだけど君のパパでは無いと思うんだ!」

「なんでー? ぱぱはぱぱ! あたちのぱぱ!」

「いやだって鏡を見たけど僕の見た目に変化なかったんだもん! 19歳のヒグンのまま記憶は地続きだから、十月十日プラス数年の年月が経って記憶が消えた可能性は0に等しいもん! であるとするならば、僕まだ童貞なんだもん!」

「とず……どてい? わかんない。ぱぱ、変!」

「そっか、見た目よりもずっと幼い感じなのかな!? あとごめんね、ぱぱだとしてもお口にちゅーはあまりしないんじゃないかな! 君ぐらいの歳だと!」

「しない? あたちぱぱとしたい!」

「ほんと? じゃあしようかな。目を瞑ってみ」

「うん! ん〜っ!」

「んー……」

「たわけがよ」

「べひゃっ!?」



 素性の知れない角ロリちゃんと唇をくっつけ合わせようとした瞬間に部屋にやってきたマルエルに蹴りを食らった。



「よし! やっぱりマルエルを呼ぶ時はセクハラをするに限るね!」

「……」

「待ってよマルエル、そっちに首は曲がらないって。折れちゃうけど」



 前髪を掴まれ、うなじを足で押さえられ、力を込められたので死ぬ気で命乞いをした。よかった、許してもらえた。危うく喉仏にもう一つの口が生まれる所だった。



「どうやら成功したみたいめね〜。関係性の呪縛も」

「んぅ?」



 フルカニャルリも遅れてやってきたと思えば、青肌ロリに首枷を付けた。不思議そうに青肌ロリちゃんがその首枷を触っている。



「フルカニャルリ、それは?」

「隷属の錠。大通りの奴隷商から譲ってもらっため。いい運動であり」

「半殺しにするのはやりすぎだっての。ったく」

「待て。隷属の錠? なんでそんな物を、この子を奴隷として売り払うつもりなのか!?」



 隷属の錠は魂に刻みつける禁止事項の押しつけであり、自由そのものを縛り付ければ如何なる手段を用いても対象者は何も出来ない植物人間にする事だって出来る。

 そんな代物を首にかけるだなんて、流石の僕でもこの二人を軽蔑してしまうぜ!?



「まあ待て落ち着けよヒグン」

「落ち着けるか! 流石にこれは道徳心が痛むって!」

「誰も他所に売っぱらうなんて言ってないだろ。これは必要な保険なんだよ」

「保険?」



 フルカニャルリが青肌ロリちゃんと向かい合うと、首枷に魔力を流しながら言った。



「悪魔メチョチョはヒグン・リブシュリッタを親と呼んだ場合、その存在が個として終える時まで永遠にヒグン・リブシュリッタ、及び彼が味方と認めた相手には一切の傷害、殺害行動を取る事は出来ない。そういった縛りをメチョチョに課してもらいめした」

「悪魔……? その子、悪魔なの?」

「そうめよ」

「はあ。ったく、あの屋敷のクソ悪魔の最後っ屁ってやつだよ」



 マルエルが腹をさすりながら言う。屁と言った直後にその動作をされるのはキツイな……。



「悪魔パボメスはマルエルの肉体に『眷属の印』というのを刻みつけてため」

「腹にあった淫紋みてーなやつな」

「腹に? 知らないな、ちょっと見せてみ」

「もう消えたよ。人の腹見たいだけだろ変態が」



 ちぇっ、お腹ぐらいならいいだろ。ケチめ。



「その印は、パボメスがこの世から完全消失した後にマルエルの肉体を支配、変容させて転生するという効果が付与されていため」

「えっ? じゃあこの子の肉体は……」

「おう、元々は私だったもの。身体が悪魔に飲み込まれる前に私は首を切断して再生して難を逃れたってワケ」

「うぉう……えぐい……」



 元はマルエルの身体、か……。背丈も髪の色も体格も全部違うのに。唯一同じなのは瞳の色ぐらいだ。白目が黒くなってるから完全には同じじゃないみたいだが。



「ここで問題が起きため。マルエル本人とは切り離されたものの、もうその時点で悪魔は個を確立しつつあった。受肉でありな。そんなのを野放しにしたら何が起きるか分からないめ」

「確かに」

「だからまずは悪魔の存在を縛る事で弱体化させため」

「存在を?」



 悪魔メチョチョ? の隣にマルエルとフルカニャルリが並んで説明する。



「まず、悪魔の成立には願いを成就させるという工程が必要になる。ただし、悪魔自身を消滅させる可能性のある物や、規模の大きすぎる願いは叶えられないが」

「ほう」

「というワケだから、私がコイツに『ヒグンに娘のフリをしてほしい』と願ったわけだ」

「えっ」

「それでぼくが名無しだったこの悪魔に『メチョチョ』という名前を付けため。生物は命名した相手に帰属する習性がある。これにより、便宜上ぼくはメチョチョの名付けの親となり悪魔としての自由を剥奪できたワケでありな」

「君の命名か……センスいいね」

「でしょ!」

「どこがだよ。ギャグだろ」

「そんなこと無く! メチョチョも喜んでるめ! ねー?」

「うん! あたちメチョチョ! 嬉しい!」

「ほら!」

「んーそっかあ……」



 あ、マルエルが折れた。頑張ってくれ、君は正しいよ。メチョチョって名前は変だよ。



「で、その後は『隷属の錠』にさっきの縛り条件を課して、メチョチョは悪魔として願いを叶えてヒグンに娘のフリをした事で作用し、魂の隷属が適用。もう二度とぼくらに危害を与えられない事となっため」

「私とフルカニャ、ヒグンの三人に縛りを加えられて帰属してるせいか魂も三分の一の出力にされているらしく幼体なのはそのせいらしいぞ」

「じゃあ、なんだか幼い人格してるのもその影響か?」

「いや。元はパボメスだっためが、悪魔メチョチョとして転生したせいでその歴史に厚みがないためこの子は正真正銘の0歳め。流石に人間の赤子よりかはずっと高い知性はあるめが、幼いのは縛りには関係ないめね」

「0歳……でもさっきキスをせがんできたぞ」

「元々は性的興奮を促す印だったからそういう知識はあるめよ。あと、肉体の宿主であるマルエルの基礎的な知識もそれなりには頭に入ってるんだと思い」

「つまりマルエルの双子みたいなもんか……」

「全然違うと思います」



 マルエルが否定する。でもフルカニャルリも「確かに!」って言ってるぞ。


 しかし、この少女があの黒山羊頭の悪魔の成れの果てか……。



「……アリだな」

「なんでアリなんだよ。子供だぞ」

「今更でしょ。フルカニャルリがいるし」

「ぼくはお姉さんであり!」

「うんそれは無いとして。……青肌角アリのロリはちょっと属性過多だろ」

「ふっふっふ。そうやって何重にも縛ってるって事は、これからは僕らの傍を離れられないって事でもあるのだろう?」

「そりゃそうめ。悪魔を放っておくのは本当に愚か者であり。始末するか隷属させないと、何が起こるか分かったものではなく」

「つまり! 彼女も僕もハーレムメンバーになるという事だ!」

「なんでそうなるんだよ」

「! 天才でありーっ!!! ハーレムメンバーという在り方を押し付ければ更に自由を縛れめす! 悪魔の権能も弱り弱りであり!」

「あぁ……正当性が生まれちゃった」



 項垂れるマルエル。ツッコミとか反論とか諸々を諦めてしまったようだ。ふふふ、珍しく僕の性欲が役に立っているな、マルエルからは何も言えないらしい!



「ちなみにヒグン。メチョチョを孕ませて親の役割を与えれば半永久的に確実に悪魔としての完全羽化は出来なくなるめ。どう?」

「えっ!? いいのかい!? 合法!?」

「いいわけねえだろ!!?」



 フルカニャルリに背中を押されて前に出たメチョチョ。綺麗な裸体だ、再び鼻血がっ! ってしていたら間にマルエルが割り込んできた。



「む。マルエル、今回はいつものふざけ半分なやつではなく、結構本気めな保険としてヒグンに持ちかけてるめよ」

「そ、そんなんで童貞を捨てるのはなんか違うだろ! ほら、童貞ってさ、好きな人で捨てたいとかそんな夢あるじゃん!」

「一理ある」

「だよな!? よかったヒグンがマトモで!」

「というわけで僕はマルエルで捨てたいんだが、全然乗り気になってくれないしもうこの際メチョチョちゃんでもいいかなって」

「!? はい!? や、あ、駄目駄目! そんなので捨てるのは良くないだろ! 考え直せお前バカ!」

「えっ……だって、毎日美少女二人と一緒に居て何も無いんだよ? 生殺しじゃないか」

「知らんわ!」

「ぼくはいいのにって言ってるのに、毎回マルエルに止められるめ。おかげでヒグンも毎日悶々としてるめね」

「そ、それはっ、だって年齢差というか……フルカニャは子供だし……」

「ぼくはもう子供産める身体であり、というかマルエルの倍生きてるめ。そりゃ妖精の中では子供の部類だけど、法律的には何も問題ないめよ」

「それは…………そ、きもいじゃん……そういう話……」



 あれ? フルカニャルリに押されてマルエルが小さくなってる。言い負けしてる?


 まあフルカニャルリは僕とそういう行為をするのを嫌がってないし、僕も……ありつけたら最高だぜひゃっほいって思っているしで見ようによっては相思相愛だし、法律的にも問題ないのなら止める理由もないものな。



「それでも嫌だって言うならそれはマルエルのエゴであり。イヤイヤって言うならなんでそう思うのかハッキリと示してほしく。それらしい理由もないのに親しい男女を引き離そうとするの、人間社会の汚いやり方であり! そういうの嫌いめ!」

「な、なんっ………………もう知らん!!」



 耳まで真っ赤にしたマルエルはドスンドスンと足音を立てて部屋から出ていった。若干べそかいていたのは気の所為だろうか。



「フルカニャ、少し言い過ぎだぞ。マルエルが可哀想じゃないか」

「ぷふふっ。やっぱりマルエルはこのネタで弄るのが1番面白くっ!」

「えっ」



 にししと笑いながらフルカニャルリがしゃがんでメチョチョの胸に手を置いた。



「流石にぼくといえど、この子とヒグンをエッチさせる気なんて無いめよ。メチョチョの悪魔としての部分は魂魄施錠(ソウルロック)で封印しめす。メチョチョ、少しだけ目を瞑るめよ」

「んぅー?」



 フルカニャルリの指示通りにメチョチョが目を瞑ると、フルカニャルリの手が光ってメチョチョの胸に刻印が現れた。左右非対称の幾何学模様だ。



「フルカニャルリ、それは?」

「精霊種が互いの魂を結びつけることで暴走しないようにする物であり。ぼくが万全な限りメチョチョは何があっても暴走したりしない様にしため」

「徹底的だな……」

「当たり前であり。全ての悪魔の根源は神様であり。手を抜く理由はなく」



 術をかけるのが終了したらしく、フルカニャルリはメチョチョの胸から手を離した。



「どうめ? なにか痛みとか感じる? メチョチョ」

「んぅー。なにもない!」

「そっか、よかっため! じゃあ今日はぼくの部屋で寝るめよ。お洋服が無いゆえな」

「やだー!」

「えっ」



 メチョチョはフルカニャルリから離れると僕に体をひっつけてきた。……裸である。あ、やばいやばい鼻血なら良かったんだけど股間スタンダップのターンみたいだ。いててててっ。



「あたちぱぱと寝るの! お姉ちゃんはあっち行って!」

「え、え? メチョチョ、もうヒグンの事はパパと呼ばなくていいめよ? 願いは成就されており」

「ぱぱはぱぱだもんっ!」

「ふぉー!?」



 力強く抱きしめられる。裸体の幼女に。大変なこった、股間が破裂しちゃいそうだ!



「メチョチョ! あのね、裸で男の人にくっつくのはよくなく! それは誘惑をしてるという事になるめ!」

「してる! あたちぱぱを誘惑してるー!」

「そうなのめか!? ライバル登場〜っ!? 駄目! メッ!」



 フルカニャルリがメチョチョを引きずって部屋から出ていった。なんか大変な事になったなぁ。新たな仲間、悪魔メチョチョかぁ。


 ……またロリ、かあ。とことんお姉さんとの縁が無いなあ僕って。

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