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破壊者の幸せな一生。  作者: さんまぐ
破壊者の子供達。
82/82

第82話 (最終話)破壊者の幸せな一生。

氷漬けられた遺体を見てイーウィニャが「本当にクオーは…皆を保存してくれてたの?」と驚きを口にして近付いたボラヴェンが「…旦那、ウーコンだ…」と言い、マリクシが「こっちはキロギーとサンバだ!」と言って皆が泣きながらゲーン探索団最後の日に亡くなった仲間達を見つけていく。


「こっち、バリジャット、チャーミー、コンレイ達やハッピーホープの姐さんや兄さん達だ…」


インニョンは皆を並べて手を合わせているとケーミーが「ダムレイ!見つけた!」と言ってダムレイの遺体に駆け寄ると「マットゥモ!来な!」と呼んだ。


ケーミーは「腕…持っていかれちゃったんだね?バカ。アンタの腕は私を抱き寄せる腕なのに無くすなよ」と言って泣きながら「マットゥモ、これが本物の男の顔だ。アンタはまだまだなんだからこの顔を忘れるんじゃないよ」と言葉を送り、ダムレイには「どうかな?まだまだだろうけどマシな顔だろ?オールバックは似合わないけどアンタに似てイケてるよね」と話しかける中、マットゥモは初めて見る父に「父さん。沢山の団員を守った男。俺も頑張ります」とお辞儀をした。




離れたところでマリア、コイヌ、リユー、ナクリーは残った遺体を集めて泣く皆を邪魔できないと立ち尽くしていた。

思い切り叩きつけて打ち上がったカケラ達がキラキラと降り注ぐ幻想的な空気の中「終わりましたね。お疲れ様です。お父様は喜んでいますよ」と3人に言葉を贈る。


マリアはダムレイの遺体と居るケーミーとマットゥモを見てから晴々とした子供達の顔を見て「お父様はカオス・フラグメントの核になったのでご遺体は残りません」と言った。


「聞いてたから平気です。お母様こそ…」

「もう一度お父様に会いたかったでしょうに」

「そうだよ。私達よりマリア母さんやウチの母さんの方が…」


マリアは首を横に振って「いえ、私はクオー・ジンの妻。あの日覚悟をしていました。インニョンもきっと同じですよ」と言いながらも空を見て「クオー様…、少し寂しいです。ですがコイヌもリユーもナクリーも成し遂げましたよ」と言う。



その時、「ありがとうマリア。我が最愛の妻」「お疲れ様、ナクリー。強いね」と声が聞こえてきた。


その声を聞いたマリアは幻聴を疑いながら「え!?」と周りを見て、インニョンも遺体整理を止めて立ち上がって「嘘!?ハイクイ!?」と言ってあたりを見る。


ボラヴェン達も「聞こえた…」「クオーの声」「ハイクイも居たよ」と言っている。



「ハイクイ、そこはインニョンを呼ばないでどうするんだい?」

「クオーこそコイヌとリユーに言葉を届けてあげなよ」


皆が「え?」「えぇ!?」「嘘?」と言っていてもお構いなしに声は聞こえてくる。


「それで言えばダムレイは残念だった…」

「仕方ないってダムレイは死んじゃってたんだから…あの日だって相当無理したんだから、今もなんかしたら「バカ!ハク!クオーもいいからマリア・チェービーやインニョンと話せよ」って怒るよ?」


「いや、だがケーミーを見てご覧よ、あんなに疲れた顔をしてる。ダムレイに会わせてあげたかったよ」

「えぇ?ケーミーって昔からあんな感じでオバサン臭くなかった?」


これには驚いていたケーミーも「なんかわかんないけどクオー!ハイクイ!私は年相応!オバサン臭くない!」と怒鳴ると「ごめんよケーミー。でも本当なら君の為にもダムレイをなんとかしてあげたかったんだ」「だからそれやったらクオーが出てこれなかったろ?今こうして皆の遺体を届けられて言葉も出せるのはクオーの頑張りなんだから良いんだって」とまたクオーとハイクイが普段のように話す。


皆が唖然とする中、ハイクイが「え…っと。とりあえず残り時間ないからさ」と言い始めた。


「インニョン。ナクリーが強くなっててインニョンに似てて見られて嬉しいし、休ませてくれてありがとう。カオス・フラグメントってさ…夜寝れなくて、もう何年も起きてるから疲れてたんだよね」

「ハイクイ…。会いたいよ。抱きしめたい。ケーミーが羨ましいよ」


インニョンは空を見て涙を流しながら話し続ける。


「んー…無理かな?ごめん。でも俺も。インニョンを抱きしめてナクリーと3人で笑って穏やかに過ごしたいや。ナクリー、悪いんだけどさ、何もしてない親だけどお願いするね。インニョンをよろしく。俺達が頑張って手にしたシータの名前を大事にしてね」

「…わかったよ父さん!私はナクリー・シータ!ママを守って幸せになるよ!」


ナクリーの晴々とした顔を見ていると任せても大丈夫という気になる。


安心したハイクイは「ほら。時間ないからクオーも喋りなよ。交互にしか喋れないんだからさ」とクオーに言うとクオーも「そうだね。ありがとうハイクイ」と言った。



クオーはもう一度「マリア、最愛の妻。大変な道のりを歩んでくれてありがとう。恩を返しきれない事を申し訳なく思うよ。コイヌとリユーを立派に育ててくれてありがとう」と言い、マリアが天に向かい両手を広げて「クオー様!私こそあなたに何も返せてない!クオー様!会いたいです!クオー様!!」と叫ぶ中、クオーは「ありがとう。私も会いたい。でも無理なんだ。その腕が治ってくれて良かったよ」と言うと「コイヌ、最後に抱いた日はあんなに小さな少女だったのに今は立派な淑女だね。私達を休ませてくれてありがとう。いつも成長を見ていたよ。私以上のジン家の人間として生きてくれて嬉しく思うよ」と言葉を送った。


「お父様…。私はジン家の娘として相応しいですか?」

「勿論だよ。私なんかより素晴らしい人間のズオーよりも素晴らしいんだ。君が弱き人々を守り導くんだよ」


コイヌはボロボロと涙を流して「はい」と言っているとクオーはリユーに言葉を贈る。


「リユー。力強いジン家の男よ。私を倒せる程に立派に育ってくれた。私は本当に嬉しく思うし、ズオーが技を授けた時には嫉妬してしまったよ。ただ、ズオーは私の弟のリユーに似て剣術も嗜むから棒術の間合いが甘いんだ。魔神の身体で振り抜く際は後半歩前に出て、後少し早く棒を振るってご覧。君の魔神の身体でも最後にコイヌが振った時の威力が出るよ」

「ありがとうございますお父様。やはり叔父様が言う通りお父様は素晴らしい人ですね」


「そんな事ないよ。ズオーの方が素晴らしいよ。少し妬けてしまうがズオーを父と思い恥じないように育ちなさい」

「いえ!私はリユー・ジン!父はクオー・ジン!母はマリア・ジンです!」


この言葉にありがとうと言ったクオーはハイクイと交互に皆に言葉を贈る。


「マリクシ、縁の下の力持ちをしてくれてありがとう。安心して皆を任せられていたよ」

「うん。本当、マリクシって苦労人だけど助かるよね」

「ひでぇ、お前達居なくて大変なんだぜ?」

涙を流しながらも呆れ顔で肩を落とすマリクシ。



「ボラヴェン、結婚しないの?見てたけど結構モテてない?」

「ボラヴェンは理想が高いからね。ボラヴェンの子供も楽しみにしているから幸せになってね」

「なんだよ?久しぶりに声を聞いたらそれかよ!?バカじゃないの!?」

いつものバカにするような顔で怒るボラヴェンも泣いている。


「イーウィニャ、クオーがお説教しそうだから止めたから俺が言うけど…彼氏作りすぎじゃない?落ち着きなよね」

「本当だよイーウィニャ。君は可愛いんだからキチンと結婚をして幸せになるんだよ?」

「あ!酷い!?幸せな結婚したくて彼氏探してるだけだよ!」

イーウィニャも泣きながらも普段通りのテンションで話をする。


「ケーミーにはさっき言ったからいいや。ちゃんと寝なよ」

「ハイクイ、それだとケーミーは怒ると思うよ?」

「怒るわよ!なんで?酷くない?」

ケーミーだけは目を三角にしてプリプリとしていて、昔ならここでダムレイが「ったく…ハクとクオーにも参っちまうよな」とケーミーの機嫌をとりなしていた。


「マットゥモ、ダムレイとケーミーの息子…見事な男だね。ダムレイに似ているよ。ダムレイに似てるからコイヌもリユーもナクリーも安心して任せられるよ。よろしくね」

「マットゥモは確かにダムレイに似てるからナクリーをダムレイが俺をハクって呼んだみたいにナクって呼ぶのかな?まあ好きにしていいけど、ダムレイならもっと判断早いから頑張ってよね」

「…はい。頑張りますけど…なんですかこの距離感?」

そう言って唖然とするマットゥモの顔はダムレイによく似ていた。


クオーは深呼吸をすると「インニョン。あの日、ハイクイを返しきれなくてごめんね。私1人では暴走しそうだったのをハイクイが名乗り出てくれたんだ」と言った。

インニョンも涙を流しながら優しい笑顔で「ん、なんとなくわかってたよクオー。ちょっと怒ってるけど許すよ。だから寝なよ」と言った。


「ナクリー、君はインニョンに似て愛らしくてハイクイのような気配を纏っていて不思議な子だね。君と連携を組んだら楽しそうだったなと訓練を見ていて思ったよ。今度の力場で山猿の毛を見つけたら鍛えてみるといいよ」

「はーい。わかりましたよ。なんか散々ズオーから聞いてたからやっぱりって感じだね」



今度はハイクイが深呼吸をしてからマリアに「お姉さん。クオーに知らせてごめん。でも俺達はゲーン探索団は皆一緒だったから…ごめんなさい」と謝る。

マリアは首を横に振って「いえ、ハイクイ。クオー様が暴走しないようにしてくれてありがとう」と返した。


「コイヌ、大きくなったね。彼氏が出来たらクオーが暴れそうだったから休ませてくれて良かったかも」

「ふふふ。私はお父様やハイクイお父様みたいな素敵な方しか目に入りませんよ。でもお父様はどんな素敵な方を連れてきても怒りそうですね」


「リユー、本当強いね。なんか一緒に風神の乱気流を使えたら敵なしだったかもって思うよ。風神の乱気流を使う時は足に纏わせて飛び上がる事も出来るからやってご覧。皆俺が飛ぶのを山猿の毛でやってるって思われたみたいでリユーに教えなかったね」

「はい!本当ならもっと教わりたいですがそれだけでも嬉しいです!頑張ります!」



なんとなくだが全員と話した事で終わりが近い事を全員が察していた。

クオーとハイクイはここに居ないソーリックやウーティップ、ジン家の家族たちやショークへの言葉を最後に送っていた。


クオーが「ハイクイ、もういいかい?」と聞くとハイクイは「うん。でも俺もやりたいことがあるから力を最初に貰うから残りを使ってよね」と言った。


「了解だよ」と答えるクオーにマリアが「クオー様?」と声をかけるとクオーは「私なりのやり方で少しでもマリアに恩を返したいんだ」と言う。



何をするのかと思ったがそれはすぐにわかった。


「我が名はクオー・ジン!聞け!王国と共和国の民達よ!長い日々をカオス・フラグメントとして生きた我々は本日我が子供達を迎えた新生ゲーン探索団に討たれこの世を去る!カオス・フラグメントを制圧できるゲーン探索団を謀殺しようなどと思う事なく生きるがいい!」


この言葉でクオーはマリアに「さようなら」と言葉を送り気配が消えるとハイクイが「んー…お姉さんにごめんねとお詫び。ずっとクオーに隠れて力を溜め込んでいたからちょっとだけどさ…お葬式よろしく」と言葉を送ると天から光が降ってきた。


リユーとマットゥモがそれを受け止めると、その光はハイクイとクオーの遺体となった。


「ハイクイ…?」

「クオー様?」


遺体は全身ではなく胸像のように胸から上だけのものだったが確かにクオーとハイクイで子供達は「お父様…」「これがお父様…」「父さん」と言って涙を流す。


マリアとインニョンは奪うように遺体を抱きしめて夜になるまで泣き続けていた。




この後、クオー達の遺体はジン家に運ばれて丁重に葬儀と埋葬をした。

皆が戻らないと思った遺体に喜びコイヌ達に感謝を告げると全員口を揃えて「ゲーン探索団全員の力があってこそだ」と言った。


カオス・フラグメントを討伐したゲーン探索団は王国と共和国の依頼を受ける形で欲望の島の管理を請け負う。

力場の管理と遭難者の保護を目的としていてリーダーはマットゥモ・シータが執り行う。


「おい!言うこと聞けよナク!」

「あはは、マットゥモが私のことをナクリー呼び辞めてる!」

「本当、耳まで真っ赤で似合わないよねナクリー」

「ほら、ナクリーもコイヌも今回の力場は鋼鉄大亀の巣穴の側だから魔物を狩るよ」


こうして新たなゲーン探索団は欲望の島で今度こそ穏やかにそして幸せに暮らしていった。

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