第81話 カオス・フラグメント対新生ゲーン探索団。
朝焼けと共にカオス・フラグメントとの戦闘は始まった。
開始前に声をかけたコイヌ達に反応したカオス・フラグメントだったが攻撃に容赦はない。
「ったく!俺が攻撃しながら広範囲を見てる!姉さんは指示出し!剣は防御に使ってよ!」
ボラヴェンの声にマリアが「了解ですボラヴェン!」と行って皆に指示出しをする。
ボラヴェンが広範囲の確認、マリアが指示出しと状況把握、ケーミーがカケラの発動を見る事は特使団時代と変わらない。
コイヌは「魔神の身体よ!我が芯棒に宿りなさい!破壊する!」と言うとフルパワーでカオス・フラグメントを殴りつける。
殴られた箇所ははじけ飛ぶとキラキラとカケラが舞い、インニョンが「マリクシ!取ってきて!」と指示を出して籠に収めていく。
インニョンの聖母の抱擁はカケラを何個籠に収めても問題は起きない。
ケーミーが「皆!土龍の岩弾が来るよ!」と言うとカオス・フラグメントから大雨のように岩弾が飛んでくる。
「ナクリー!俺の後ろに!」
「了解マットゥモ!」
ナクリーとマットゥモは攻守をきちんと決めていて防御はマットゥモが行い、ナクリーが反撃をする。
ナクリーが「ママ!カケラ変更!水龍の吐息で水刃を飛ばすよ!」と言うとインニョンが「ならさっさと火龍を返しなさい!」と行ってカケラをパスする。
ナクリーはインニョンのお陰で適宜カケラを変更して攻撃を加える。今回は岩弾を水で柔らかくしてマットゥモの負担軽減を考えている。
変わってコイヌとリユーもやる事は恐ろしい。
「コイヌ!岩弾二連は二つ目を打ち返して!私が一つ目を破壊するよ!」
「任せたよリユー!」
「風神の乱気流!剣に宿れ!破壊する!」
リユーの剣は風刃を纏うとこれでもかと岩弾を切り刻みながらカオス・フラグメントからカケラを剥ぎ取っていく。
「打ち返す!」
コイヌの打ち返した岩弾はカオス・フラグメントの顔に当たり「すっごいね!」とイーウィニャが声援を送りながらカケラを拾っていく。
芯棒を杖代わりに寄りかかるコイヌは息を整えながら「リユー!疲れた!交換!」と指示を出すとリユーが「了解だコイヌ!打ち上げるからカオス・フラグメントの身体に取りついて剥ぎ取ってよ」と言ってカオス・フラグメントの頭を指さす。
「えぇ!?また私?」
「コイヌが私を打ち上げられるなら良いけど?」
「逆でしょ?リユー飛べないじゃん!」
プリプリと怒るコイヌと楽しそうに笑うリユーにマリアが「ほら!集中しなさい!」と注意をする。
マリアに言われた2人は互いのカケラを交換するとリユーが棒を持ち、コイヌが剣を持つ。
剣を握ったコイヌが小さく「あ」と言うと「リユー?また変な癖つけた!この子は私の剣でもあるのよ?」と苦言を呈するがリユーは飄々と「コイヌは姉さんだから弟に合わせてくれるのが分かっているからね。だから安心して振るえるの…さ!」と言いながら魔神の身体を芯棒に纏わせていく。
「魔神の身体!フルパワー!乗れ!コイヌ!」
コイヌは「全く!お父様が嘆いているわ!」と声を張りながら芯棒に纏った魔神の身体に乗り上げるとリユーがそれを打ち上げて、コイヌは「飛ぶわ!風神の乱気流!私を空へと運びなさい!」と指示を出してカオス・フラグメントの肩に乗り上げると身体をこれでもかと切り刻む。
カオス・フラグメントの動向を見守っていたケーミーが「バカ!コイヌ!キロギーの奴が炎神の大炎上を使う!降りな!」と声をかけるが「大丈夫よケーミーお母様!リユー!!やりなさい!」と言う。
頷いて前進したリユーが「やらせない!破壊する!」と言うと右脚に攻撃を集中し体勢を崩していく。
そこにナクリーが飛び出して「コイヌ!風刃乱舞!」と言うと「OK!リユーもインニョン母様から風龍借りて!」と言って指示を出す。
ケーミーは言う事を聞かない子供達に「ああ!もう!」と苛立ちながら「マットゥモ!アイツらクオーとハイクイ程使い方が上手くないから防御してやんな!三号と四号も使う!」とマットゥモが「ったく…バカどもが!大亀の甲羅!コイヌ達を守れ!」と言い防御壁を発動した。
自由な発想と伸び伸びとした環境。
子供達は心のままにカケラを使いバトルスタイルを構築した。
マットゥモは沢山のカケラは使えなかったが特定のカケラを使う事には秀でていて、更に複数持ちまで可能にしていた。今は定評のある大亀の甲羅を同時使用して仲間達を守る。
コイヌとリユーは「ジン家の人間ならば」と言って2人とも遜色なくお互いのカケラを使えてしまう。
柔軟にカケラを使って戦い、今はコイヌとリユー、そしてナクリーを加えた3人での風刃を縦横無尽に飛ばす風刃乱舞と名付けた技を放っている。
風刃に斬り刻まれて小さくなっていくカオス・フラグメントを見てマリアが「小さくなってきました!動きが速くなりますよ!」と指示を出す。
「了解ですお母様!」
「コイヌ!予定通り私とマットゥモで縫い付ける!」
「外さないでよね!」
「コイヌ!ナクリー!防御が甘くなるから気をつけろよ!」
「任せなさいって!」
「マットゥモ!」
「任せろ!巨象の重圧!こい!リユー!」
大亀の甲羅をやめて巨象の重圧を構えたマットゥモがリユーを呼ぶとリユーはマットゥモを持ちながら魔神の身体と大蛇の束縛でカオス・フラグメントを抑え込む。
顔を真っ赤にして「うぉぉぉぉぉっ!!魔神の身体!大蛇の束縛!!」と力を使うリユーの横でマットゥモが「全員一斉攻撃!」と指示を出す。
「もういいんだ!クオー!ハイクイ!」
「皆を解放して休んで!」
「帰ってきなよ!ハイクイ!」
「帰ってきなよ!バカダムレイ!マットゥモは夜泣きも大変だったし!カラッカラになるまで私のおっぱい飲むし!」
「私も飲まれたよ!ハイクイ!ナクリーは強いよ!守らなくても生きていけるって!」
「クオー様!お勤めありがとうございます!後は私達に任せてお休みください!」
「お父様!お母様達がそう言っておりますよ!お休みください!風刃乱舞!」
「もう私達の事は守らなくて良いから!人に戻って眠れって父さん!」
カオス・フラグメントが身動きが取れない間にどんどんと縮小していくとケーミーが「見えた!キロギーの炎神の大炎上!剥ぎ取りな!ナクリー!」と言い、ナクリーがコイヌの掘り進んだ中から炎神の大炎上を取り上げるとインニョンに渡す。
ケーミーが「これでコイツは火を使えなくなる!次!ウーコンの女王蜂の針だよ!コイヌ!」と指示を出すとコイヌが「はい!ナクリー!風刃で掘って!私が潜る!」と言う。
ナクリーが「ったく!了解!」と言って掘り進む中、ケーミーが「チビ達のカケラは勝手に弾けた!旦那の人喰い鬼の牙だ…。手が足んない!」と言うとそのままリユーと一緒にカオス・フラグメントを抑え込むマットゥモに「マットゥモ!あんたあのサイズなんだから上に乗って押さえつけな!」と言った。
目を丸くして「マジかよ!?息子にそれ言うか!?」と言うマットゥモの横でリユーが嬉しそうに「ふふふ。行こう、マットゥモ!私が君を打ち上げる!空中で巨象の重圧を使ってダメージを与えるんだ!」と言った。
「はぁ!?俺のダメージって無視かよリユー!!?」
マットゥモが話している間もリユーはマットゥモを持って打ち上げてしまう。
マットゥモも大亀の甲羅を使っているので落下をしてもダメージはない。
「クソっ!避けろよ!コイヌ!ナクリー!巨象の重圧!大亀の甲羅!!」
マットゥモはカオス・フラグメントが大地にめり込む程の威力で落下してくるとかなりのカケラが飛び散った。
ケーミーの「やった!見えたよ!ハイクイの風神の乱気流!クオーの魔神の身体!!」と言う声にマリアが「後一息です!行きなさい!コイヌ!リユー!ジン家の者として務めを果たしなさい!」と声を出す。
頷くコイヌとリユーを見てインニョンが「バカ!ナクリー!ハイクイの乱気流はアンタがなんとかしなさい!」と命令する。
ナクリーはインニョンを彷彿させる笑顔で「了解ママ!」と言うとハイクイがするような攻撃的な顔になった。
「リユー、当初の予定通りやるよ」
「了解だコイヌ。万一の時は私が破壊する」
予定にはない2人だけの予定。
周りが困惑する中、リユーは「魔神の身体よ!最大出力だ!吹き飛ばすぞ!全員!衝撃に備えつつ攻撃を忘れるな!」と言うと真っ赤に光った一撃をカオスフラグメントに打ち込む。
クレーターのように穴が空いたカオス・フラグメントにコイヌは手を入れて「お父様!お父様の魔神の身体は私が貰い受けます!来なさい!私が新たな使い手!私はクオー・ジンが娘!コイヌ・ジン!」と言うと中心から出てきた赤い光がコイヌに届く。
「来た…。お父様の力。凄い。私達の魔神の身体とは大違いだわ」
驚き喜ぶコイヌは「ナクリー!」と声をかけるが「ダメ!まだ深い!風刃じゃ届かないんだよ!」と言って風刃でカオス・フラグメントを掘り進めている。
「なら一度退きなさい!私とリユーが血路を開くわ!マリクシ兄様!予備の芯棒を私に!リユー!準備して!」
マリクシは予備の芯棒をコイヌに渡すと「行くわ!魔神の身体!お父様には及ばなくても私はジン家の娘!産み守って下さったお父様に最大限の恩を返します!」と言うとかつてのクオーを彷彿させる真っ赤な光を放ち芯棒に光が集まる。
リユーも「負けるな!魔神の身体!お父様に及ばなくても私もジン家の男!力の全てを見せてお父様を超えるぞ!」と言って真っ赤な光を放ち芯棒に光が集まる。
最大出力になった瞬間、コイヌとリユーが「弾け飛ばしたら飛び込みなさいナクリー!」「チャンスは今しかない!」と言う。
「任せなさい!」と言って駆け出そうとするナクリーにマットゥモが「早いだろ!?大亀の甲羅で防御してやる!」と言うと「やってくれるって思ってたよ!ありがとう!」と言って更に加速をした。
「「破壊する!!」」
コイヌとリユーの一撃でカオス・フラグメントのカケラがこれでもかと飛び散る中、駆け込んできたナクリーが手を伸ばして風神の乱気流を手に入れて「父さん!手に入れた!私!強くなるよ!」と言って駆け出した勢いのまま走り抜けて振り返る。
そこにカオスフラグメントは居なかった。
跡地には数体の遺体が凍づけられていた。




