第74話 反撃。
「もう少しで共和国の前線基地だ!そこで保護をしてもらうんだ!」
「…ったく…、ありがたいけど…今からでも遅くないよ?俺を殺して作戦だったとか言いなよ」
「あはは、それはいいね。でもさ、今の王国と君たち、どっちが正しいかを考えたら言うまでもないだろ?」
そう話すのはボラヴェンとソーリックだった。
「バカだよなアンタ。乱戦の中で俺だけ逃すなんてさ」
「サンバ君は…手遅れだったからね」
悔しそうに語るソーリックにボラヴェンが「仕方ないって、サンバも覚悟してたもん」と言って最後まで戦ったサンバの姿を思い出していた。
「とりあえず前線基地って言ってもマリクシ達を追った連中も居るからなぁ…」
「そこは私の怯え狼の耳で確かめる……追走が来たね。私が足止めをするから逃げなさい」
ソーリックは背後から来る連中の気配を察知してボラヴェンに逃げろと言う。
「いいって、ソーリックこそ俺を殺して突き出して助かりなよ」
「あはは、嫌だよ。私はクオー殿達を見て楽しく生きることにしたんだ。逃げ帰るなんて楽しくないからね」
「じゃあ道連れ増やすって言ったら付き合う?」
「おお、いいね」
ボラヴェンとソーリックが剣を構えて会敵寸前という所でソーリックが「背後から何かくる!挟撃!?」と言い、ボラヴェンが「マジで?敗走してきたけど俺たち居たからって奴?」と言ったがそれは違っていた。
夜の闇の中、夜明け空のような赤い光が近づいてくるとそれはクオーだった。
「ボラヴェン!ソーリック!」
「クオー!?」
「クオー殿!」
クオーは息を切らせながら「追いついた!」と言うとボラヴェンが「追いついたってマリクシ達は?」と聞く。
「3人は無事だよ。そっちは?」
「サンバがやられた。俺はソーリックが乱戦の中で助けてくれたんだ」
ボラヴェンの説明にクオーは「ソーリック殿、かたじけない。共和国の前線基地は守り抜きました。保護をしてもらってください」とソーリックに礼を言う。
「は?マリクシ達を追った連中は?」
「全部殺してやったさ」
「マジで?さすがクオー。クオー…お願い聞いてくれない?」
「サンバの遺体もダムレイ達も誰一人として連れて行かせない。任せるんだ」
ボラヴェンは安堵の表情で「あんがとクオー」と言った。
ボラヴェンとソーリックが前線基地に向かう時「ボラヴェン、済まないが探索の手間があるから大鷲の目を私に譲ってくれないかな?」とクオーが言う。
「はぁ?何個持ちすんの?」
「…私は妻にも別れを告げてきた。この身に未練はない。死をも恐れず戦うさ」
こうなったクオーは止まらない。
それを知っているボラヴェンは「…わかった。じゃあ貸す代わりに返しにきてよね」と言って大鷲の目を渡す。
「後はコイヌとリユーは俺とソーリックも育児に参加するから感謝してよね」
「心強いよ。きっとあの2人には私の育児より良い経験になるだろう」
ボラヴェンは「よく言うよ」と言ってクオーに別れを告げるとソーリックと前線基地に向けて歩き始めた。
クオーは追走隊を壊滅させると大鷲の目を使う。
一塊りの集団がサンバの遺体を前線基地に運ぼうとしている姿が見えた。
クオーは怒りで真っ赤に光ると夜の闇を駆け抜ける。
あっという間にサンバに追いつくと王国兵とそれを指揮するサディをすり潰してサンバの遺体を奪還した。
サンバの遺体には右足と左腕はなく額に矢が刺さっていた。
「サンバ、君はすごいね。君のおかげでボラヴェンもマリクシもインニョンもケーミーも逃げられたよ。君は必ず希望の街に連れて行く。だがその前に君をこんなにした連中に思い知らせたいから君の大亀の甲羅を私に譲ってくれるね?」
クオーはサンバの大亀の甲羅を持つと激痛に苛まれたが「皆を巻き込んだ破壊者にはお似合いの痛みだ」と言って前線基地を壊滅させると最後の希望に向けて駆け出した。
前線基地の出口にはキロギーは居なかった。
インニョン達の話ではここで火を起こすと言っていたのに火は起きていないしキロギーはいない。
走り出してすぐに善戦するダムレイが見えた。
ダムレイの周りには沢山の保育士達が群がり、ダムレイは蹴り技で応対している。
「ダムレイ!」
クオーは言うなりサンバの大亀の甲羅でダムレイを守ると一気に辺りの連中を殴り飛ばしてダムレイの背後につく。
次々と襲ってくる連中はクオーの参戦に青くなり「くそ!マーブルデーモン!?山鬼の方に向かうぞ!」と言っているがまだ諦めの悪い奴が攻撃を仕掛けてくる。
攻撃を封殺しながら殺していると「よぉ…。来たな…バカヤロー」というダムレイの声が聞こえてくる。
クオーは保育士どもを風刃で切り刻みながら「来るさ!仲間の為!家族の為ならな!」と言う?
「へっ……バカな…奴…、だが……嬉しいぜ……ケーミー…は?」
「無事だぞ。ダムレイ?」
クオーは敵の切間に振り返ると言葉を失う。
死角になっていて見えなかった右腕は肘の先から無くなっていた。
「腕…」
「ああ、さっき……レギオン…とこのリーダーに持って……行かれた。まあ…代わりに奴は…消し炭だけどな。血を…なくしすぎた…皆…は?」
「ボラヴェンとソーリックは逃げおおせた。キロギーは見つかっていない。サンバは2人を守って…ここに居る。私が連れて行く」
「ソーリック?…アイツ…バカだな…。キロギーは案外生き延びたか?サンバ?…お前、サンバ抱えてんのかよ?」
「ああ、誰も手放さない。ウーコンも迎えに行く!」
この言葉にダムレイは「悪りぃ…、団長…次は…クオー…な、ハク…無理…、後任せ…たわ。俺も…連れて…れ…」と返しながら倒れる。
「!!?ダムレイ!!」
クオーが確認をする前に「やったぞ!ダムレイは倒したぞ!後は山鬼だ!」「マーブルデーモンから死体を奪うぞ!」と聞こえてきてダムレイの死を察したクオーは怒りに任せて暴れながらもダムレイの右腕を見つけて掌にあった火龍の吐息と風龍の吐息、そして大蛇の束縛を拾い上げて風龍の吐息と大蛇の束縛は自身のものと合わせて強化する。
「君たち、済まないね。私と共に、私の復讐に付き合ってくれ」
クオーは火龍の吐息を見て「成る程、ダムレイは火炎放射をしたのだね?わかったよ」と言うとダムレイも背負って走り出した。




