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破壊者の幸せな一生。  作者: さんまぐ
ゲーン探索団の危機を知る破壊者。
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第72話 ウーコンの最後。

ハイクイは荷車に乗るインニョンに語りかける。


「インニョン。俺は死ぬ気はないからお別れは言わない。でも…きっと会えなくなると思う。だから赤ん坊の話だけさせて」

ゲーン探索団で1番強いハイクイが死を覚悟している事に驚いて震えながら泣くインニョン。


「やだ…。やだよハイクイ。私達…ずっと戦ってばかりで…、これからは穏やかな世界でクオーとお姉さんみたいにニコニコ笑って赤ん坊育てるって…、私が赤ちゃん欲しいって言ったらハイクイは俺もって言ってくれたんだよ?」

「だからインニョンと赤ん坊を狙う奴らを皆殺しにするだけ。希望の街には行かさせない。とりあえず赤ん坊の話、名前は好きにしていいや。でも俺の名前とかソンティンとかプラピルーンとか、後はアンピルはやめて欲しいのと、犬猫に使う名前とかはやめて。後は好きにしていいよ。でも男ならクオーみたいな強い子にしてあげて。自分の意思を貫ける子。それだけ」


ハイクイはそのまま首を横に振って泣き続けるインニョンを抱きしめてお腹に手を置くと「じゃあ、頑張って生まれてきて。お姉さんを困らせるくらい、イーウィニャが手が疲れたっていうくらい食べて大きくなるんだ」といった。



ダムレイはケーミーに「悪い、任せる」と言うとケーミーも泣きながら「バカ。私はインニョンみたいに強くないんだから来なさいよ」と怒る。

これにハイクイが「あ、ダムレイも荷車行く?いいよ。どうせ乱戦になったらバラけるしさ」と言うとダムレイが「バーロー!お前なんて引き際見極められないんだから兄貴の俺がいないでどーすんだよ」と注意をした後でケーミーを抱き寄せると「俺はハクみたいには言えない。言えるのは周りに頼っても甘えてもいいから子供のことを頼むってだけだ。よろしくな」ともう一度言うとお腹に向かって「悪い。母ちゃんの言う事聞いて元気でな」と挨拶をした。


ケーミーは「バカダム。引き際の見極めが上手いんだったら私らが前線基地を突破したら引き下がんなよ?」と言って笑いかけた。


この間にハイクイは「インニョン。今の話を全部クオーにしたら「後は好きにして」って言って」と伝える。


「ハイクイ?」

「クオーは俺たちを見殺して生きても気は晴れないしきっと最後の希望やハッピーホープを滅ぼすと思う。だから俺たちは好きにしていいって言うんだ。お姉さんとコイヌとリユー、後はイーウィニャと皆を守る為に生き残るのも俺たちのところに来て戦うのも、復讐も全て好きにして貰う。頼むね」


ハイクイが話終わるとサンバが「足音、近くなってきた。ウーコン、任せた」と言うとウーコンはサンバを見て「おう。任せとけ」と言った後で荷車のインニョンとケーミーを見て「俺も彼女欲しかったなぁ」と漏らして自嘲気味に笑った。


ボラヴェンが「えぇ?女って面倒臭そうじゃない?」と嫌そうに言うとキロギーが「ボラヴェンは女への理想が高いんだよね」と言い、最後に馬鹿話で笑い合って別れた。



この先はウーコンしか知らない事。

ウーコンは魔物に襲われては元も子もないので岩場に隠れるように置いて行かれた。

今のウーコンの願いは皆が逃げ延びる事、そしてその為に1人でも多くの敵を道連れにする事だった。

だからこそ無駄な体力を使わないように死体のように横たわって待っていた。



「おい!1人いるぞ!」

「アイツはウーコンだ!」

「俺の矢が刺さってる!100万ジュタークゲット!」


そんなバカな声が聞こえてくる。


「首を持って帰るんだっけ?」

「まあ全身は重たいし邪魔だよな」


風刃なんかの持ち主に来られると困るが今はまだ黒豹の足くらいだろう。首を切るにも近づいてくる。その時にやり切る。

ウーコンはそう思い足音を数える。


8〜9…、どうせなら奪い合いで数が減ればいいのに、ダムレイ達が近くに潜んでいる可能性を考えているのか仲良く歩いてくる。


女王蜂の針からは超猛毒の針が生み出せる事を共和国の特師団時代にクオーから学んだ。

カケラの使い方を教える中でいつの間にかクオーから教わるようになっていた。


「ウーコン、ここには人に毒のような蟻地獄を使った奴が居るから試せるよ。風刃の切れ味を増すように毒針に力を込めてごらん」

クオーの提案にウーコンは自分の手を見て「えぇ?やれるかな?」と返す。


「ウーコンならやれるさ」と言ったクオーの微笑みに促されて放った毒針は対象を即死させたが初の試みに疲れて立てなくなる。


クオーは軽々とウーコンをおぶさると「凄いね!その針は一度に一つしか放てないのかい?」と聞いてくる。


「試した事ない」

「なら試そう!」


そう言って次の日に別の場所では部屋に腕を差し入れて一気に針を拡散した。

また疲れて立てなくなった自分をクオーは優しく介抱してくれてマリアが水を飲ませてくれた。


あの日の夕飯は美味かった。

皆で奪うように食べた魚、肉…野菜の美味さ、成長したからとクオーに隠れてマリクシと飲んであまりの不味さに苦しんだ酒の味。


あの日を思い出したら涙が出てきた。


楽しかったな…。

死にたくないな…。


だがこのままではあの追っ手達は皆を追う。


いつの間にか付き合って子供まで作っていたハイクイとバレバレなのに気付かれないと思っていたダムレイ…その子供達。

借金を帳消しにして新しい人生のために見ず知らずの男を受け入れて産み捨てた顔も知らぬ親のようにはならない。

こんな地べたで割を食って生きる人生なんて認められない。



「最後…、頼むな、女王蜂の針。俺の命…残り滓でも全部使うからさ…」


声にならない声でウーコンが呟く。

その声が聞こえた追手が「あ?コイツ泣いてないか?」「まあ虫の息でも関係ないって」と言いながら手を伸ばしてきた時…。



「女王蜂の針!猛毒拡散!」

ウーコンの一撃が周囲を襲い次の瞬間に立っている者は居なかった。



ウーコンは「ザマア…みやがれ…。皆……生きて……」と言い満足そうに笑って死んでいた。

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