第70話 クオー抹殺命令。
クオーが帰還して15日が過ぎた夜中にクオーの屋敷の扉を叩き、助けを求める声が聞こえてきた。
「助けて!クオー!起きて!」
「クオー!!」
その声には聞き覚えがあった。
「ケーミー!?インニョン!?」
クオーが扉を開けると傷だらけで涙を流したケーミーとインニョン、そして息も絶え絶えで半分気絶しているマリクシが居た。
クオーが慌てて屋敷に入れるとマリアとイーウィニャを起こして傷の手当てをしながらなにがあったかを聞くとあり得ない話だった。
夕方戻ったズエイは余裕の無い顔をしていた。
戻ったズエイに卒団の話をすると「お前達のためでもある。最後の仕事をしていけ」と言われて話を聞くと「クオーを抹殺してこい」と言われた。
耳を疑い聞きなおすダムレイに「お前ら、やれと言われたらやれ。お前達は人間だ。だから金なら払う。一生遊んで暮らせる金だ」と言うズエイ。
「旦那!本土でなにがあったんです!?」
ダムレイが問い詰める間にハイクイが「ケーミー、インニョン、身支度。馬は無いけど荷車を用意するんだ。マリクシ、ごめん。ケーミーとインニョンには赤ん坊がいる。荷車を俺と引いて」と指示を出す。
クオーはここまでの話に驚き「…インニョン、ケーミー…君達は妊娠しているのかい?」と口を挟むとマリアも「それなのにそんな動いて慌てて…」と心配をしてイーウィニャが「私知らなかった!」と言う。
驚くクオー達に「まず聞いて!ハイクイが全部クオーに聴かせてそれでも来てくれるなら待ってるって言ったの!」と泣きじゃくるインニョン。
マリクシは荷車を確保してインニョン達は荷造りをしながらズエイの話を聞く。
ズエイは王都に呼び出されてブァーリ・カーンからクオーの抹殺を命じられていた。
今やギリギリのブァーリは後先考えられていられなくなっていた。
ブァーリはクオー脱走の責任を取らせるべくジン家に攻め込んだが、ズオーが当主として相手をし、問答無用で攻め込もうとした50人の兵士を単騎で瞬く間に再起不能にし「話を聞くといい。我が家にクオーなる人間はいない。ジン家の誇りを失ったあの男は最早家族でもなんでもない」と同行していたソーリ・カーミに言い放ち追い返していた。
その姿は破壊者ではなかったが間違いなくジン家を守る鬼神だとソーリ・カーミはブァーリに報告していた。
これもあって益々後のないブァーリはズエイに圧力をかけた。
「ジン家への意趣返しも失敗に終わって後のないブァーリはクオーを討てなければゲーン探索団を道連れにする。お前達も指名手配にしてやると言ってきた。だからやるしかないんだ。今すぐ希望の街に行ってクオーの首を取ってこい」
「旦那?何でそんな落ち目に従うんです?」
「金でも貰ったの?今までクオーと稼いだ額より多いの?」
「それ、クオーを殺しても俺達は消されると思うからやめようよ」
ダムレイ達がズエイを思い直させようと説得を試みるがズエイは頭を振って「うるせぇ!ダムレイ!ハイクイ!ボラヴェン!ガタガタ言わずにわかりましたって言って動け!果たして生きるか!果たせず死ぬかしかねえんだ!」と言うと部屋の隅で状況を伺うウーコンに「ウーコン!お前の毒針でなんとかクオーを殺せ!」と怒鳴った。
「旦那?落ち着きましょうよ。この状況をひっくり返しましょう」
ダムレイが持ちかけた時、「ブァーリの奴は既に島の兵士にも指示を出してやがる。逃げられねえんだよ」とズエイは言った。
「街全部…島全部が敵?」
「クオーとハイクイなら殺せるんじゃない?」
「バカヤロウ。続々と兵士が送り込まれるぞ?それもお前達の育てたカケラを持ってだ。諦めてクオーを殺しに行け」
ズエイはそう言ったが結局ダムレイ達は拒否をする。
ズエイは「じゃあ、ここまでだな。お前達は散々金を稼いでもくれたし、赤ん坊の頃から可愛がったガキ共だ…。最後の温情だ。逃げ出す奴は街から出るまでは裏切ってないって言ってやる。荷物まとめて出て行け。そっからは別の道だ」と言って椅子にもたれかかった。
ハイクイ達は荷物をまとめてズエイに頭を下げて「旦那、おせわになりました」「俺達はクオーのところに行くよ」と皆が挨拶をする。
項垂れて返事をしないズエイにハイクイが「…あとさ、インニョンのお腹に俺の子供がいる。本当なら旦那にも祝って貰いたかった」と言うとダムレイが「旦那、ケーミーの腹には俺の子だ。アンタは俺らの親みたいなもんだからこの話の後で言うつもりだったんだ」と続けた。
返事をしなかったズエイだったが、これには「…バカヤロウ。恋愛禁止って言っておいたのにクオーのバカに染まっちまいやがってよ」と漏らしてダムレイ達を見送った。
ズエイは後から団員になり、まだ人間になれていないバリジャット、チャーミー、コンレイをリーダーにした新しい探索団にクオー抹殺とハイクイ達の抹殺を命じて「街から出たらだ。容赦するな」と言ってハッピーホープへと帰っていった。




