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破壊者の幸せな一生。  作者: さんまぐ
帝国の闇を晴らす破壊者。
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第62話 セーバットの最後。

マリア・チェービーはクオーから「こんな時に申し訳ありませんが今一度だけ希望の乙女として民衆に言葉をお送りいただけませんか?」と頼まれていた。


「はい…、それで良ければ」

「ありがとうございます」


クオーが確認すると階下の戦闘はほぼ終わって居て、セーバットの部下や仲間なんてものはなく結局ダムレイとケーミーまで戦闘に参加をしていた。


そして兵士ですら苦戦するクマムシ達なので参加をしてくれた市民は怪我をしてしまっていた。



「マリア殿、それでは戦闘終了の号令と今から公開処刑を行います。広場のような場所に可能な限りの人を集めてください」

「…わかりました」


マリアは言われるがままに蜘蛛の意志を持つと「皆さん。聞こえますか?私はマリア・チェービーです。逆賊セーバット・ムーンは捕らえられました。城の戦闘も間もなく終わります」と言った。


これに街は沸き上がる。

ここまではクオーの願い通りだったがマリアもハイクイに言わせるとクオーと同じなので「皆さん、落ち着いて聞いてください」と続けた。


「皇帝陛下はセーバットの手で薬物中毒にさせられ過剰摂取で苦しみ亡くなりました。主だった臣下の皆様方もセーバットの手で魔物に作り替えられ亡くなりました」


外から聞こえてくる悲鳴とセーバットへの怒りの声、そして黒薔薇と白百合の騎士団への弾劾の声が聞こえてくる。


マリアはフランシスコ・コメイの姿を思い出しながら「黒薔薇騎士団、白百合騎士団共に私の呼びかけに応えてセーバットを討とうとしてくださいました。ですがセーバットの持っていた蟻地獄と蜘蛛の糸を食らい壊されてしまいました。黒薔薇騎士団団長のフランシスコ・コメイ様は最後の御力で責任を果たし騎士団の全員を天の国へと送りました。私はフランシスコ様の最後を見ました。それは見事な最後でした」と説明をする。


外からは啜り泣く声まで聞こえてくる。

クオーは帝都がどんな場所だかナーリー達の話でしかしらないが王都に負けず劣らずの立派な国だった事を想い、助けられなかった事を悔いていた。


「今より、城のバルコニーでセーバットの処刑を行います。来られる者は逆賊の最後を見届けに来てください」


マリアは蜘蛛の意志を止めるとクオーに「コレでよかったですか?」と聞く。


「大変な役目を申し訳ございません」

「いえ、帝国の1人としてこれしか出来ません」



人々が集まるまでにクオーとハイクイは一階の敵を掃討する。

「ねえクオー?」

「なんだい?」


「何するの?」

「セーバットの処刑さ」


「その後だよ」

「その後?」


ハイクイはクオーがとぼけている事に気付いて若干モヤモヤした顔で「言葉を変えるよ。何がしたいの?」と聞くとクオーは「…まあ、私は雇われの身だからズエイ・ゲーンがウーティップ殿から仕事を貰ってくれればだね」とキチンと説明せずに言葉を返した。


「じゃあとりあえずアンピルのお葬式の後で旦那に頼もうよ」

「ハイクイ?」


「へへ、クオーといると楽しいから俺も手伝うよ」

「ゲーン探索団は?」


「キロギー達に任せようよ。アイツ、炎神の大炎上で強くなったよ?」

「それはいいね」



「だからお前らよお」

「雑談しながら敵を殺すのってどうなの?」

ダムレイとケーミーは呆れながら2人を見守っていた。



クマムシの掃除が終わると集まった民衆の前でセーバットの処刑が行われた。


マリアと共にバルコニーに上がったのはクオーとボラヴェンだった。


クオーは軽々と傷だらけで猿ぐつわのセーバットの頭を持ち上げると民衆からは罵声が飛んでくる。


マリアが罪を読み上げ帝国法に則り処刑をすると言った時、クオーは前に出ると「我が名はクオー・ジン!今この場では希望の乙女の剣!」と名乗りを上げた。


マリアを差し置いてクオーが前に出た事にどよめきが起きるがマリアは「クオー様はゲーン探索団としてこの国に来てセーバットに謀殺されそうになったお方!今もセーバット捕獲に尽力下さった国を超えた志を持ったお方です!クオー様は我ら帝国をお救いくださるのに我らは医療を求めたアンピル・シータを助けられませんでした!」と言うと民衆からは「ゲーン探索団!」「ありがとうクオー・ジン!」と聞こえてくる。


「今!処刑に際しクオー様からお言葉があります!聞きなさい!」


マリアが恭しく「クオー様、後はお任せします」と言うとクオーはセーバットの猿ぐつわを外し高々と持ち上げると「逆賊!セーバット・ムーンは帝国を陥れ!我らが王国にまで被害を及ぼそうと蟻地獄の製法をばら撒いたと言う!」と言った。


蟻地獄を知る者は「何という事をしたんだ」とセーバットに罵声を浴びせるとセーバットは必死に「ある!」「あるんだ!」「解除薬!作れる!私なら作れるんだ!」「他の薬も天才の私なら解除薬を作れる!」「だから助けて!!」と言う。


沈黙とどよめき。

民衆の困惑が手に取れて分かった時、クオーはニヤリと笑うとセーバットに小さく「ありがとう。もう君に価値はない」と言った。



「この男はクスリの製法を買った奴の名を聞いても答えぬばかりか!責め苦の果てには痛みから逃げるためにこのような戯言を口にするようになった!淡い期待を持たせ!人心を惑わせるだけで嘘しか言わない人間を私は許さない!」


クオーは「見ておけ!国を危機に晒し!嘘をつくものがどうなるかを!」と言うと一気にセーバットの口に手を入れて舌を引き抜く。


絶望の痛みに晒されるセーバットを無視して「ボラヴェン、始末だ」と言うとボラヴェンはフランシスコのシュレイカーをセーバットに差し入れて処刑をする。


そしてクオーは終わる事なく「蟻地獄をもつ者はこうなると思え!」と言って風刃でセーバットを粉々に切り刻むと恭しく頭を下げて「マリア殿、後はお願いします」と言ってボラヴェンを連れてバルコニーを後にした。


マリアは「クオー様の言葉は絶対!帝国は蟻地獄を許さない!持つものは震えて待て!」と言ってその場を締めた。

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