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破壊者の幸せな一生。  作者: さんまぐ
帝国の闇を晴らす破壊者。
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第58話 黒薔薇騎士団団長フランシスコ・コメイ。

扉を開けるとそこは階段になっていた。

階段に出来上がった肉片達と血だまりを見てウーティップは顔をしかめる。

辺りに脱ぎ捨てられ、体液が付着していた純白と漆黒の鎧は正に白百合騎士団と黒薔薇騎士団の鎧だった。


「情けない。我らが帝国の勇士たちがこんな…」と言ってウーティップが落ち込むとハイクイが「違うって、セーバットのクスリがヤバいんだよ。その勇士たちを狂わせる薬がヤバい。だからセーバットは殺さないと」と言う。



「その言葉、感謝する」


そう言って階段から降りて来た巨漢の男は血に濡れた剣を握り、真っ黒な鎧は血で赤くなっていた。


「フランシスコ・コメイ殿!」

「…久しいですな。ウーティップ・チェービー殿」


ウーティップはフランシスコと呼ばれた男と面識があったのか前に出るなり「陛下は!?臣下の方々は!?セーバットは!?」と慌てて聞くとフランシスコは手を前に出すと「上に答えはあります。帝国はもうお終いです」と言った。


ウーティップが言葉の真意を聞く前にフランシスコはハイクイを見て「先ほどの言葉はありがたかった。王国の者、君がゲーン探索団だね?」と声をかけた。


「うん。そうだよ。おじさんの剣と鎧の血は何?」

「白百合騎士団のバイルー・クローサ団長を始めとする白百合騎士団と我が黒薔薇騎士団の団員達の血だ。今はそこの2人…最後の団員を送ろうと思った所で風が舞って粉々にしてくれた」


説明をしながら肉片を見るフランシスコは苦しそうな顔をする。

その顔を見てハイクイが「何があったの?」と聞くとフランシスコは階段の上を見て「セーバットは陛下から上層階への立ち入りが認められていた。今日もセーバットは陛下の所に行っていた。セーバットが来ると同時に街ではカオス・フラグメントが暴れ始め、騎士団が壊滅する前に押さえ込もうとしたが陛下を通じてセーバットが我らを城に留めた」と話し始めた。


セーバットは護衛に騎士団を使うつもりだったのだろう。


「だが暫くして希望の乙女、マリア・チェービーの号令の後でカオス・フラグメントは消え去り…、アンピルと名乗った少年の声が聞こえて来た。そしてマリア・チェービーと心を同じく我らは事の返答次第でセーバットを殺すつもりで陛下の元へ向かった」


「それで?」

「奴はヘラヘラと笑いながら女性のみの白百合騎士団に向けて蜘蛛の糸を放ち、そして我が黒薔薇騎士団に蟻地獄を放った」


もう一度上を見て苦し気な顔と声で「あの高潔なバイルー・クローサが嬌声を上げて鎧を脱ぎ捨てると…」とフランシスコが言った時、ハイクイは「それは言わなくていい」と言って制止する。

ハイクイを見て頷いたフランシスコは自身の剣を見て「騎士団員達は目の前の騎士団員と上層階で欲望を曝け出したから私が団長として…、バイルーの好敵手として皆を送った」と何があったのかを説明した。


「成程ね。おじさんは何で無事なの?」

「私は武人。薬に理性など失ってなるものか!」


「辛い?」

「…正直辛いな」


「送ろうか?」

「…ははっ、元々全員を送った後でセーバットは君達に譲り自害をする気で居たが君を見て気が変わったよ。君の名は?」


「俺?ゲーン探索団のハイクイ・シータ」

「我が名は帝国黒薔薇騎士団団長フランシスコ・コメイ!ハイクイ・シータに決闘を申し込む!」


どこかわかっていた展開だったかがハイクイは「俺?クオーじゃなくていいの?」と言ってクオーの方を見る。クオーは武器に手を伸ばさずに腕を組んでハイクイとフランシスコを見ながら怒っていた。

そのクオーを見たフランシスコもクオーを見た後でハイクイを見て「彼は一目でわかる見事な武人だが私は君の目に惹かれた。殺させてくれ」と言う。


「へぇ、いいよ。おじさんを倒す前にクオー達を行かせてもいい?」

「それは認めたくないな。陛下は謁見の間の裏、隠し通路の先にいらっしゃる。この情報で許してくれないかな?」


日常会話に聞こえるような穏やかなやり取り。

ハイクイは頷くと剣を抜いて低く身構える。


一瞬の間の後でお互いが殺気を放った時、フランシスコが「フランシスコ・コメイ!参る!」と言うと同時に斬り込んだ。

一瞬で間を詰めて斬りかかるフランシスコだがハイクイは身軽に壁を使ってフランシスコの頭上に飛び上がると一気に頭を狙って剣を突き立てようとする。


フランシスコはすぐに姿勢を直し上空を見て迎撃の構えを取り「甘い!大亀の甲羅!」と言って大亀の甲羅を発動させるがハイクイは「甘いのはそっちだよ!風刃!!」と言った。

ハイクイは一気にフランシスコの足元を風刃で切り刻み、体勢を崩したフランシスコの首元に剣を突き立てる。

致命傷を負ったフランシスコは力なく崩れ落ちる最中、「ば…バカな…、薬で普段の力が出せないとは言え…」と驚きを口にした。


「おじさん、剣は強いけどカケラの使い方はまだまだなんだよ。俺達は身体が大きくなってから毎日沢山のカケラを育てて来たんだ」

「成程、バイルーには向こうで自慢をしよう。王国人の力強さを知れた。バイルーもハイクイ・シータと戦いたかった筈だ…。だが無念。陛下の為に、逆賊も討てぬ不甲斐なさ…!!」


唸りながら階段に腰掛ける形で蹲るフランシスコに向かってハイクイが「おじさん、俺のお願い聞いてもらえる?」と声をかけた。


「な…何を…?」

「その剣、貸してよ。うちのアンピルを拾って弟にしたボラヴェンがセーバットにトドメを刺すんだけどさ、剣が居るだろ?俺たちの剣は安物だからとびきりの奴が必要なんだ」


ハイクイの気持ちを理解したボラヴェンも前に出て「ごめん。俺の弟の願いを叶える為にその剣を貸して」と言った。


フランシスコもハイクイの想いを察してボラヴェンを見て「君のような優男に我が剣シュレイカーは持てるかな?」と聞いてみる。

ボラヴェンは女性のような顔つきだが男の目で「持つさ、剣の重みより約束のが重いからね。でも何だったらおじさんの心も乗せるから言ってよ」と言った。


ボラヴェンの目と声に打ち震えたフランシスコは血の涙を流しながら「かたじけない!我が怒りと恨みも込めた一太刀を逆賊セーバットに頼む!」と声を荒げる。


頷いてから「わかった。だから剣を借りるよ」と言って剣を持ったボラヴェンが「重いね」と言うと嬉しそうに笑ったフランシスコはウーティップを見て「これからは…彼らのような若者の時代、どうか助けてあげてください」と言って息たえた。

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