第53話 カオス・フラグメント対山鬼。
クオーはやる気だったがまだ動けない。
苛立つクオーを見ながらハイクイが「んー…、俺が行くよ。ダムレイはボラヴェンとお姉さんのお父さんを迎えにいきながらクオーに芯棒を取ってきてよ」と言ってクオーには「クオーは芯棒が来るまで休んでてよ」と言って外で待つマリクシに「聞こえてたよね?あのカオス・フラグメントがアンピルだっていうから助けるよ。俺が上に乗ってカケラを落とすからマリクシは拾う係ね」と言う。
マリクシはまだしもボラヴェンは自分が世話をして拾ってきたアンピルがやられていて黙っていられない。
「ハイクイ!俺だってやれるよ!」
「ダメだ。確実にやる為にクオーの芯棒を取ってきて、クオーが来たら一斉攻撃でカケラを剥ぐからボラヴェンはカケラがアンピルに入り込まないように逃すんだ。ボラヴェンはアンピルを救いたいよね?」
ハイクイの射貫くような眼差しにボラヴェンが「…わかった」と了承をすると優しい顔で「ん、じゃあダムレイとよろしく」と指示を出す。
ハイクイはクオーの元に戻ると「ダムレイ、ボラヴェンがキレてるからよろしく」と言うとダムレイはものすごい表情で「キレたボラヴェンは怖えんだよな」と言って深呼吸をした後で「仕方ねえ、行ってくる」と言うとハイクイが「ダムレイ、蜘蛛の意志を置いて行って、お姉さんに使って貰う」と呼び止める。
ダムレイの返事の前にマリア・チェービーを見たハイクイは「頼める?あてにしていい?帝国は詳しくないから状況確認と指示出し頼みたいんだ」と言うと、ダムレイはようやく「指示出しって言うこと聞かねえクセに」と悪態をつくが頼られたマリアは「お任せください!」と言って立ち上がった。
クオーは武器屋にナーリーの親代わりをしていた看護師が居て証言を得られる事から命が狙われかねない話を伝えて保護を頼む。
ダムレイ達の後ろ姿を見たハイクイはマリアとマリクシとテントを出ると「行くよマリクシ」と声をかける。
「了解。アンピルの奴を助けてやらないとな」
「これ以上仲間は減らさない。コイヌの分まで俺達は生きるんだ」
ハイクイはそう言って駆け出して行った。
アンピル…カオス・フラグメントはカケラを求めて兵舎を目指していた。
人形だからか、二足歩行だからか亀の時より動きは遅い。
すぐに追いついたハイクイは屋根に飛び乗ってカオス・フラグメントの脇腹を傷つけてカケラをばら撒くとマリクシが拾い上げる。
近くでは怪我をした帝国兵達が「凄い」と言いながらハイクイとマリクシの活躍を見ていた。
遅れてきたマリアは蜘蛛の意志を使うと「我が名はウーティップ・チェービーが娘!マリア・チェービー!今から私が指示をします!参加意志のある帝国兵は祖国防衛に力を貸してください!」と声を張る。
よく通る凛とした声。
マリアを知る者たちは「希望の乙女?」と真偽を気にしながらも参加をする。
やる事はクオーの指示と変わらない。
ハイクイがばら撒くカケラを集めてカオス・フラグメントから距離を取ることだった。
だが帝都をある程度知るマリアだからこそ地の利を使い、ハイクイとマリクシに指示を出して帝国兵達を誘導していく。
「ハイクイさん!こちらで対応します!思う存分御力を奮ってください!マリクシさん!その先は細かい路地が多いので兵達を向かわせます!大通り優先で結構です!兵士達は路地裏のカケラを拾いなさい!狙われた時は声をかけます!命優先でカケラは諦めて結構です!」
「お姉さん頼もしいや。お姉さんがクオーに指示出ししたら凄そう」
「あの姉さんって優しい顔して仕事量がエグいんだよ!休む暇をくれねぇんだ!」
そんな事を言いながらも確実にカオス・フラグメントは痩せ細っていく。
「もう少しだ…」
そうハイクイが言った時確かにアンピルの声がした。
「痛いよ!怖いよ!ハイクイ!マリクシ!マリアお姉さん!」
「アンピル!」
「声がしたぞハイクイ!」
「アンピル君!!」
アンピルの声が聞こえたハイクイは「アンピルは生きてる。助ける。クオーに教えてもらったんだ。一気に剥ぎ取ってやる!」と言うと高出力で風刃を放ち続けた。
ハイクイの風刃を浴びたカオス・フラグメントはみるみる縮んでいく。
荒い息で「後少し!!」と言うハイクイにマリクシが「ハイクイ!無理するな!」と声をかける。明らかにハイクイには似合わないハイペースな戦い方だった。
「無理?それはクオーの言葉で俺のは無理じゃない!絞り出せ風神の乱気流!」
更に乱れ飛ぶ風刃で後少しとなったところでマリアが「ダメ!振り出しに戻ります!ハイクイさん!手を止めて!」と言った。
カケラを求めるカオス・フラグメントの本能が帝国の武器庫に到着し、新たにカケラを取り込んでしまった。
「くそっ…」と漏らす疲労困憊のハイクイ。
武器庫を襲ったカオス・フラグメント。
また肥大したカオス・フラグメントは大亀の甲羅を腕にまとって振り回す。
武器庫のカケラが自分のものになったのなら最も近いカケラは?
それはハイクイで、疲労困憊で動きの悪いハイクイはカオス・フラグメントの一撃をかわしきれずに直撃コースに居た。




