第52話 合体。
いくらクオーが強靭な肉体を持っていて即死級の攻撃に耐えられても即復帰は出来ない。
殴り飛ばされたクオーを助けたのは救護にあたった兵士達でクオーを陣まで下げると優先して傷を拭いたり薬や水を飲ませていく。
「くっ…。済まない。私は行かねばならない。起きさえすれば前に出られる。起こしてくれないかな?後は任して欲しい」
クオーはなんとか立ち上がろうとするが身体はまだ痺れていて言うことをきかない。
周りの兵士達が困惑する中、「バカヤロウ!寝てろ!」「ここは私達にお任せください!」と聞こえてきた。
クオーは突然の声に驚き振り向くとそこにはダムレイとマリア・チェービーが居る。
「ゆ…夢か?ダムレイとマリア殿?」
クオーは動きを止めて2人の顔を見てしまうと、「俺もいる。後はマリクシとボラヴェン、ケーミーが外にいる。外のあれ何?あいつの手から真っ赤な光が飛んだからこっちに来たらクオーだったよ」と言われて見るとハイクイでクオーは喜びを隠さずに「ハイクイ!」と言ってしまう。
「どうやってここに?」
「お姉さんのお父さんが話通してくれた。クオーとアンピルが出て少しして旦那の知り合いの商売人から帝都でクオーとアンピル、後はあの手のない人を殺す計画が出てるって聞いたから動ける俺達で頑張って追って来たよ。アンピルは?」
クオーは表情を曇らせて「あの…カオス・フラグメントがアンピルだ」と言う。
ダムレイは顔をしかめて「はあ?何言ってんだよ?」と聞き返す。
「本当だ。ナーリー・ウィパー殿を執刀した医師がセーバットで失くした腕に人喰い鬼の腕を付けた上に蟻地獄で私を殺せと脅迫してきたんだ。ナーリー殿は断って殺され…私が介錯をした。我々はセーバットの顔を知らなかった為に見過ごしていたんだ」
この言葉にマリアが口を手で押さえて「そんな…ナーリーが…」と言う。
「そしてアンピルもセーバットが施術をして体内にカケラを入れてカオス・フラグメントにしてしまった」
これにはダムレイも怒りながら「んだそれ!?」と言いマリアは顔面蒼白で狼狽える。
悔しさに顔を歪めるクオーが「私はアンピルを助ける為に…」と続けた所でハイクイが「助ける為に魔神の身体を手に入れて戦っていたの?」と確認をする。
そのハイクイの顔も余裕のない怖い顔になっている。
クオーは体を光らせると「だがこの魔神の身体は弱い。武器も借りた槍ではすぐに折れてしまうんだ…」と悔しそうに言うとハイクイは「ならこれ、お姉さんのお父さんにお礼言ってね」と言って小さな箱を出す。
ハイクイが出してきたのは自身が育てた魔神の身体、大蛇の拘束、そして島で使った風龍の吐息をしまった箱だった。
「…私の…カケラ…!ありがたい」
「ん、いいって。早く行かないとアンピルが助けられないよ。動ける?」
「ああ、これなら助けられる!」
動けるとは答えないクオーは自身のカケラに手を伸ばす。
ダムレイが「バカ!今持ってるの手放せって!」と怒鳴るが、クオーは首を横に振ると「この子達は育ち方を間違えたんだ。弱いからと捨てたら可哀想だ」と言って右手に自身の魔神の身体、そして左手に奪い取った魔神の身体を持つと「さあ…頼む!一つになるんだ」と言って無理矢理力技でくっつけてしまう。
見たことも聞いたこともない出来事にダムレイが「はぁ?何やったお前!?」と言うとクオーは「合わせてみたんだ。これで魔神の身体は強くなれたよ。風龍の吐息と風龍の暴風はあわさるかな?」と言ってにこやかに笑うと風龍の吐息にも手を伸ばす。
「マジわけわかんネェ」
「そう?クオーらしくて俺は楽しいや」
「…クオー様、またご無理を…」
クオーは「私は破壊者。アンピルを取り込んだカケラを剥ぎ取り、セーバットの目論見を見事破壊してみせよう!」と言って風龍の吐息に風龍の暴風を付けてしまった。




