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破壊者の幸せな一生。  作者: さんまぐ
セーバット・ムーンと対峙する破壊者。
49/82

第49話 略奪する破壊者。

クオーは怒り狂っていた。

同じ帝国人のナーリーを平然とメッセンジャーにした事、それを見てもセーバットを止めずにクオーに向けて剣を抜く者がいる事、そして家族のアンピルを危険に晒してしまった自分の甘さ、その全てに怒り狂っていた。



「お前達はあの言葉を聞いて!あの姿を見ても私に剣を向けるのか!」

クオーの呼びかけを無視して向かってくる者は即肉塊になる。


必死な顔で「お前達に負けたらどの道明日はない!ならばこのまま!」と言いながら切り掛かってくる者も肉塊になる。


クオーは肉塊から剣を奪うと側の兵士に投げつける。

投げて当たらない方がおかしいくらいの敵の数で途中から殺した兵士の足首を両手で持って振り回して次々と兵士を殺していく。


クオーに言わせると矜持も誇りもない連中なのですぐに戦意喪失をすると逃げ出して行く。


「情けない」


本来なら皆殺しにしたいがアンピルの事が心配なクオーは兵士を見逃すと屋敷に向かって進んでいく。



「待て!ホワイトデーモン!」

そう言って現れたのは巨漢の兵士で、左右の仲間達に「まあお前達は待て」と言った後でクオーを見てニヤリと笑うと「噂は聞いている!単騎でカオス・フラグメントを倒した最強の保育士!だがお前はカケラを持っていない者!満足に戦えまい!」と言って切り掛かってきた。


満足に戦えない事を知っていて嬉々と斬りかかってくる矜持も何もない兵士。

即座に殺す心づもりのクオーは武器代りの兵士で剣を受け止めるが損壊が酷くあてにならない。

損壊した兵士を投げ捨てて、足元の槍を拾うと一気に投げつける。

至近距離でクオーの膂力から放たれた槍ならば貫通は必至だったが巨漢の兵士は苦しそうに受け止めただけで貫通せずにいた。


見た感じ強者の気配を持たない兵士がクオーの一撃を防いだ理由は簡単だった。

クオーはそれを察して「カケラ…」と呟くと巨漢の兵士は「ふっ、どうだ?お前の剣や槍はこの身を通さないぞ!勝負あったな!」と言うと勝ち名乗りのように身体を赤く光らせてクオーに向かって剣を振ってきた。


「…魔神の身体か…」

クオーは嬉しそうにニヤリと笑うと前に出て巨漢の兵士を持ち上げてしまう。


今の問題は残りの左右の仲間達だったが愚かにも本当に見ているだけで何もしない。


「首でも折る気か?甘い!魔神の身体!!」

巨漢の兵士の掛け声で身体を覆う赤い光は首に集まる。


このまま反撃に出る巨漢の兵士。

「槍でも貫けぬこの身体にもはや有効打はない!」と言って剣を振るったがクオーの身体には刺さらなかった。


「何!?」

周りのどよめきの中、赤く光るクオーの身体。


「貴様!?カケラは手放してきたはず!入国時に兵士が念入りに確認をしたはずだ!?」


驚きの声をあげる巨漢の兵士に向かってクオーは「ああ、だが目の前にあるじゃないか」と言って巨漢の兵士から魔神の身体を乗っ取ると腹を貫く。

カオス・フラグメントの風刃を乗っ取った労力を10としたら良くて3の労力しかない。


恐らく育てたわけでもない貰っただけのカケラは持ち主と繋がりもなく乗っ取りやすい。


巨漢の兵士は光を失う自分の身体をみて「バカな…、乗っ取られ…」と言うと最後まで言う前にクオーは「余裕さ」と言って腹を貫き殺してしまった。


クオーは「来るんだ」と声をかけただけで魔神の身体はクオーの手に収まる。


この後は一方的だった。

確かに兵士達のやりたい事は間違っていなかった。

それぞれがそれぞれに適したカケラを所持していて連携を取ろうとするが欲望の街では鼻で笑われるレベルだった。


大亀の甲羅を持つ女の防御壁を拳一つで破ったクオーはそのまま首をへし折り、「サンバを見習うんだね」と言って大亀の甲羅を奪うと別の相手が放つ火龍の吐息を完璧に防ぐ。


「二つ持ち!」

「あり得ん!」


そんなことを言っても黒豹の脚はマリクシに比べたら遅すぎてクオーは大亀の甲羅の防御壁で逃げ場を塞いでから足をへし折って「君は後で殺そう」と微笑みかけて助けに来た兵士は風龍の暴風を使う前にクオーにカケラを奪われて細切れに変えられていた。



時間にして15分も無かったがクオーはアンピルの安否を気にして館へと入って行った。


館に入ると肌着のような薄着姿で顔の緩んだ女がクオーを待っていて「あーひ、ここれ、おにいさんに道案内するぉ、地下にセンセと男の子居るよ」と言ってヘラヘラと笑うと「道案内できたからオクスリのむんら」と言って蟻地獄を飲んでソファに寝転がるとニヤニヤと笑い身体を震わせていた。


地下には別の中毒者の女が道案内だと言って待っていて天井の高い石造りの部屋にクオーを通す。


そこには異形というべき人間達が武器を持ってクオーを待っていた。


「あのね、アイツらは傷病兵でセンセイが魔物と合体させて戦えるようにしたんだよ」

どのような方法でそれを可能とするのかはわからない。


だが確実に悪魔の所業で気分を害すクオーの前で「説明したから一錠」と言って女は蟻地獄を飲んで恍惚の表情をする。


クオーは天井にぶら下がる兵士を見て「…あの彼は両手を失ったのかい?」と聞くと恍惚の表情をした女は「ちがぅょお!バランスがあ!わるぃからあ!センセがあ!そろえてくれたのお!」と壊れた声量で話してヘラヘラとしている。


今の話だと片腕だけ人喰い鬼ではバランスが悪いから調整した事になる。


それをやられた人間はなぜああしている?


意味がわからないクオーは「彼らを倒したらアンピルの所に連れて行くのだね?」と女に確認すると女は「あはは!!2回説明ぃ!!2錠目ぇぇぇっ!!」と言って震えながら次の蟻地獄を口に入れていてクオーの言葉には頷いていた。


クオーは前に出て6人の半魔半人に目を向ける。


6人は口々に「センセイの為に」「倒したら脚も人喰い鬼に」「俺は手を増やしてもらう」等と話してからクオーに向かう。

クオーは大亀の甲羅で攻撃を防ぎながら「なぜそんな身体にしたセーバットに付き従う!愛国心か!?」と声をかけると6人はゲラゲラと笑いながら「愛国心?」「あの皇帝に?」「皇帝?あれ?皇帝はセンセイだろ」「この身体なら蟻地獄も楽しめるし、いつでも好きなだけ飲んで良いしな」「お前まだ飲んでるの?俺は注射にしたぜ」「あの女達もいつでも抱いていいって言われてるしな」と口々に好き勝手言っていて話にならない。


ナーリーのような存在と思い言葉をかけたが同情の余地はなかった。


クオーは「矜持も誇りもない魔物め、殺す」と言うと部屋いっぱいに拡張した魔神の身体で壁まで押し込むと一気に距離を詰めてしまう。


「大蛇の拘束が欲しいな、煩わしい」


クオーはそう言いながら魔神の身体で5人を押さえつけている間に1人の前に立つと足で踏みつけて「済まないね。左手は魔神の身体を使っているから使えなくてね。君を人に戻すよ」と言うと一気に人喰い鬼の腕になった左右の腕を引きちぎり痛み苦しむ中で風刃を使い首を落として殺してしまう。


そのままクオーは休むことなく両脚が人喰い鬼の人間は脚を引きちぎり、かならず人喰い鬼の部位をひきちぎってから殺すと女に案内をさせた。


女は「早すぎぃ!」と笑いながらもクオーを次の部屋に案内すると部屋の前のソファに座って「私は!ここまで!この部屋に!センセイ!いるう!!」と言いながら三錠目の蟻地獄を飲むとすぐに泡を吹いて気絶していた。


醜い姿を晒す女を殺してしまいたいが利用価値があるかも知れないと判断をしたクオーは女を無視して扉を開けると目の前に広がる部屋は異常だった。


部屋の中に部屋がある、天井までガラスで覆われた部屋。その中には数多くの中毒者達が蟻地獄を摂取してヘラヘラと笑う者や失禁する者なんかもいる。


顔を顰めるクオーだったが部屋の奥、ガラス戸の向こうにいるセーバットに気付き「セーバット!貴様!アンピルはどこだ!」と声を張る。


「聞こえているよ。白い髪に映える赤い光が素敵だねぇマーブルデーモン。アンピルくんは手術室で私を待っている、早く来ないと二度と会えなくなるよ。まあ、この部屋を突破出来たらこの奥が手術室さ」


クオーが拳を握り真っ赤に光るとセーバットは「やめた方がいい」と言ってクオーに大きな瓶を見せる。


手を止めるクオーにセーバットは「賢明だ。これは蟻地獄を作る際に、まあ、帝国には逆を言ったがね。蟻地獄を作るとクマムシという薬ができてしまうんだ。ここにはそのクマムシが入っている。この薬は凄いよ。人が簡単には死ねなくなるんだ。まあ喰らった人間は死んでるようなものどけどね。君も逃げた方がいいよマーブルデーモン。私が見たいのはクマムシ達と君の死闘さ。一応付け足すなら遅いとアンピルくんにはもう会えないね」と言うと自分の前のガラス戸を開けて「さあ、新しいお薬だよ皆で仲良く分けるんだよ」と言ってガラスの部屋に瓶を放り込んでさっさと部屋から出て行ってしまう。


セーバット側の出来事なのでクオー側にはまだ被害は来ないがすぐに中毒者達の奪い合いが始まりビンは割れて白い粉がガラスの部屋中に蔓延する。

初めは喜んで吸い込んだ中毒者達だったか、すぐに痛みにのたうつと体の穴という穴から様々なものを出し始める。

そして全てが出尽くして朽木のような身体になると体色が青緑色になり口からは小さく「コロシテ」「クルシイ」「イタイ」と言い出した。


白い粉はクオー側まで来たのでクオーは一度部屋から飛び出す。


時間は惜しいが少し待ってからソファにいた女を掴んで部屋に放り込む。

仮に魔神の身体であの粉を防げない場合も考えての行動だった。

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