第47話 真実を知る破壊者。
アンピルの手術はなかなか終わらない。
時折通りかかる看護師に声をかけても「平気ですよ」「腕を動かすための手術は時間がかかるんですよ」ばかりで話にならない。
そこに来たのはナーリーの知り合いの看護師で「手術後は傷が痛んだりするからそのお世話の為にセンセイが気を遣ってくれて昨日から今までお休みにしてくれたの。これから明日のお昼まで私が居るから安心してくださいね」と言う。
看護師から話を聞けたクオーは少し安心して「そうだったんですね」と言ってから「ナーリー殿には?」と聞く。
看護師は時計を見ながら「まだよ。そろそろ麻酔から目覚めて痛がるかしら?でもセーバットセンセイがいらっしゃる日に手術を受けられるなんてナーリーも幸せよ」と言う。
この言葉にクオーが固まり「は?」と聞き返す。
「王国の方は知らないわよね。天才軍医のセーバット・ムーン様。謎の流行り病の治療法を見つけて軍に入ってからは研究詰めで、まだお若いのに白髪ばかりでお年寄りに見えてしまうのよ。まあナーリーもカケラを持った魔物の攻撃での怪我だからセンセイが見てくれたのかも知れないわね」
物凄く嫌な予感がしたクオーは「ナーリー殿の病室は何処ですか!」と声を荒げる。
驚く看護師を説き伏せてナーリーの病室を探すクオー。
看護師は帝都に蔓延する蟻地獄の被害は知っていたが、その開発者がセーバットだとは知らずにいた。
それどころか王国の報復くらいにしか思っていなかったことを知る。
それは非常にまずい展開で、クオーとアンピルが蟻地獄を持ち込んだ王国人でそれを手引きしているチェービー家とその下で働くナーリー・ウィパーだと思われていたら…、最早ナーリーも帝国は安全な場所ではなく、いつ反逆者として血祭りに上げられてもおかしくない。
クオーの話に看護師は「本当に帝国が!?」と聞き返すとクオーは「信じられなくてもナーリー殿の事は信じてください!」と説明をしながら走る。
クオーは必死に離れの建物まで走ると、広い中にベッドが二つだけ置かれた部屋に出た。
「ここは?」
「特別室です…。ここなら静かで人の出入りも最小限なんです」
そう言いながら中に入るとナーリーが眠っていた。
「ほら、心配しすぎですよ。ナーリーはよく眠っているじゃ…」
看護師の言葉を無視してクオーは一歩ずつゆっくりと進んでナーリーの布団を剥いだ。
布団の下は見てはならないものだった。
失った左腕には見覚えのある物がついていた。
「…こ…これは…人喰い鬼の腕?」
特徴的な出っ張りのある青い腕。
そしてナーリーの腹には大きな穴が空いていた。
不思議なことに流血は最低限だった。
辛そうに目を開けたナーリーはクオーを見て「…く…クオー…殿…」と声を発するとクオーは必死に「ナーリー殿!」と呼び返す。
「セーバット……奴が手術……担当医…知らなくて…、起こされて…蟻地獄…投与…痛くない…なか…魔物の……腕が…付けられて……。クオー殿と…戦えと…、アンピル君…殺せと…断ったらまた蟻地獄…」
余りの出来事にクオーは「そんな!」と言うがナーリーは止まらずに「最後まで…抵抗…したら…廃棄……腹に穴…、今…蟻地獄で痛みも…出血も…ない…」と今どうしてこうなっているかを説明した。
「セーバットがですか!?同じ帝国民のあなたに!?」
「…やつは…いかれて…ます…。狙い…クオー殿。私はメッセンジャー…、死ねば…それまで…」
クオーは必死に語るナーリーの言葉を聞いていた。
セーバットはナーリーをメッセンジャーに使い、クオーが違和感に気づけばそれでよし、気付かなければナーリーは無駄死にだった。
この後も続いたナーリーの話ではセーバットの狙いは単騎でカオス・フラグメントを圧倒したクオーでとにかくクオーの戦いが見たいというものだった。
「ナーリー殿、ありがとうございます。帝国兵の矜持、私は見誤っていたようです」
「…はは……。嬉しい…です。蟻地獄…改良型……戦闘用……飲むと…出血…しない…伝えられて………良かった。アンピル…君……手術室…居ないはず…奴の…屋敷です…ここの裏に…」
「アンピル!!」
クオーは失念していた。
あの医師がセーバットだった。
老人に見えたが看護師の言葉通りならまだ若い。
「ありがとうございました。それではクオー・ジンは家族を取り戻す為に赴きます!」
「ご武…運…を…、良ければ…介錯を…薬切れ……は…苦しい…」
「お任せください」
看護師は目の前の状況がわからないまま泣きながらナーリーと話をする。
ナーリーは家族の元に行けるのだから怖くないと言いながらも泣いていて、看護師に看取って貰えて幸せだと言う。
「ずっと………母さん…の…代わり……ありがとう…ございます。告発……クオー殿…守って」
「ええ、任されたわよ。安心しなさい」
話の切れ目にナーリーが苦しみ出したのでクオーは前に出て「ナーリー・ウィパー殿、お世話になりました。平和な世になり、マリア殿とアンピル達と皆を導く時、勝手ながらナーリー殿にも参加してもらいたいと思っており残念でなりません」と言う。
「私も……楽しかった…です。クオー…ジン…。セーバット…私の分まで…」
「勿論殺してみせます」
クオーはそのままナーリーの首を折って介錯を済ませた。




