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破壊者の幸せな一生。  作者: さんまぐ
褒美と仕事に喜ぶ破壊者。
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第44話 クオーとマリアが目指す戦後。

食後もハイクイ達は半分面白がってクオーとマリアの時間を作る。

今までならクオーとの読み書きの勉強にあてたりしていたのに「今日はズオーがいい」と言ったり「クオーとマリアさんの話は難しいからパス」と言ったりしてしまう。


最終的には2人は2人ではなく父母も招いて戦後の事について熱く語り合う。


それは高潔なジン家とチェービー家だからできた会話。

採算なんかを無視して平民達を救いたい。

その為にチェービー家は帝国を信じ、ジン家は国王を信じて進んで行くという話をした。


クオーの父母はこの会話からマリアをひどく気に入り、殺さないで済んだ事を喜んだ。


「案外、クオーとマリア嬢のような若者がこの先の世界を導くのかも知れないな」

「父上?」


「あのアンピルと3人で、王国の子が帝国の医療で助かる。そこにたどり着いたのはクオーとマリアさん…、2人が居たから」

「ジン夫人」


謙遜しつつも2人の心は決まっていた。


「クオー様、戦後が訪れた時には私と共に…」

「勿論です。マリア殿の目指す平和な世の中は私が夢見たものに似ています。アンピルも併せて一日も早くその場所を目指しましょう」



ズオーの許しをもらって覗き見ていたゲーン探索団のメンバーは微笑ましい中に不穏な空気を察知していた。


ボラヴェンが「アンピル、お前巻き込まれたよ」と言うとアンピルが「え!?ボラヴェン!?嘘でしょ!?」と慌てる。

その後は皆が口々にアンピルに言葉を送る。


「俺には無理だな。勉強頑張れよな」

「ダムレイ!やだよ!俺文字の読み書きだけがいいって!」


「多分、無理、クオー、止まらない」

「サンバ!?助けてよ」


「あー、わかる。クオーって「アンピル、私も居るから頑張ろうね!」とか言って無理矢理勉強させてきそうだよね」

「うん。きっと「私も新しいことを学ぶから一緒だよ」とか言うよね」

「うわ…。アンピル一人で頑張ってね」

「俺、カオス・フラグメントとの戦闘で怪我しなくてよかったわ」

「俺もウーコンと一緒。アンピルお疲れー」

次々に見放されていく中、アンピルは助けを求めて「皆!?」と言うが皆目を合わせない。

最後にはハイクイが「まあ腕の分だよ。頑張って」と笑顔で言う。


アンピルが嘘だろうという顔で「ハイクイ!?」と聞き返した時、アンピルの声が聞こえたのだろう。

クオーはニコニコと近付いてきて「皆!居たのかい?」と言うとアンピルの手を取って「アンピル!君がこの国と帝国の橋渡しをするんだ!私とマリア嬢がそれを助けるからね!」と言う。


この圧のクオーは危険だと改めてわかるアンピルの泣きそうな顔と普段から自分がどんな思いで居るかを察してもらいたいダムレイの笑顔。


不安な気持ちを考えすぎとして払拭したいアンピルの「く…クオー?」という声を打ち破るように「とりあえず帝国にいる間に帝国史を学ぼう。私も帝国史には詳しくないから一緒に頑張ろうね!」とクオーは言う。


気は確かかと言う気持ちで「クオー!?」と聞き返すアンピルは、もう腕はこのままでいいから勉強は嫌ですと言おうとしたがそこには同じ圧を放つマリア・チェービーが「アンピルさん。私も王国史はわかりません。是非同時並行で私とも王国史を学んでください!」と詰め寄る。


涙目で「お姉さん!?」と聞き返すとマリアは首を横に振って「気兼ねなくマリアと呼んでくださいね」と微笑む。


「さあ、3人で手を繋ぎましょう!」

クオーはマリアとアンピルの手を持つとマリアもアンピルの手を持つ。

涙目のアンピルがハイクイ達に助けを求めると皆が目を逸らし逃げる。


アンピルは家族の絆が信じられなくなりながら「皆!」と声をかけるとクオーは「大丈夫だよ。アンピルは1人じゃないよ。ゲーン探索団の皆は使節団として平和になった帝国に行ってアンピルをリーダーに帝国史や帝国式のマナーなんかも学ぶんだ!勿論王国式のマナーも学んで恥ずかしくないように行くから平気だよ!」と言った。


このクオーの声にはどよめくダムレイ達だったが我先にハイクイが前に出て「クオー、俺は剣技がいい。王国の剣技と帝国の剣技。マナーとかはリーダーのダムレイと女の子達のまとめ役のケーミーがいればいいよね?」と言う。


後ろ向きではなくハイクイからの提案に顔を輝かせたクオーは「そうだね!ハイクイは大変だけど良いのかい?」と聞き返すとハイクイは「うん。頑張るよ」と言ってそのまま「クオーとお姉さんが教えてくれるよね?」と確認をする。

勿論クオーは拒絶などせずに「勿論だとも!」と言い、マリアも「私も剣は持てませんが教えることでしたら」と続ける。


「じゃあ俺は美味しいご飯をたくさん食べて皆に広める仕事がしたいよ!」

「キロギー!君ならできるよ!好き嫌いせずにキチンと食べておいしさをたくさん人に伝えてくれるね!」

「では今度希望の街の黒パンとチーズのサンドウィッチをご用意しますね!」



皆ずるい。

得意分野で次々に逃げ切る中、アンピルとダムレイ、ケーミーは逃げきれずに待ち受ける過酷な運命に肩を落としてしまう。


「ハクの野郎」

「ダムレイ、私やだよ」

「ダムレイ、クオーを止めてよ」


ダムレイはクオーとマリア・チェービーを見て思案した結果…。


「無理だって、下手したら島にいる旦那も巻き込まれるぜ?」


そう、ズエイは帰ってきたクオーとマリアの顔つきに背筋が凍った。

恭しく「マリア様、いかがでしたかな?」と聞いてさっさと前線基地に送り届けてしまいたかった。


だがクオーとマリア・チェービーの戦後の仕事の話をされ、役割の決まっていたアンピル達の話と共にゲーン探索団をゲーン使節団にしようと言われてしまう。

頭がクラクラするズエイはクオーからは「ショーク様にどうかご提案をお願いします!」と言われ、マリアからは「帝都にご案内しますので是非よろしくお願いします」と言われてしまう。


「…ははは…?もう戦後ですか?気が早いですね」

「いえ!ズエイ・ゲーンには敵いません!」

「さあ!私に出来ることがあったら教えてください!」


ニコニコ笑顔で詰め寄るクオーとマリアを前にズエイが言えたのは「…とりあえずアンピルが治るまでに考えますのでお時間をください」だけだった。

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