第34話 再会。
応接室代わりの部屋に通されたクオーとハイクイ。目の前には新たに隊長になっていた先ほどの兵士ダナス、後は護衛の兵士とウーティップ、そして…。
「お久しぶりです。あの時は温情をいただきありがとうございました」
マリア・チェービーがドレス姿で出迎えてきた。
「あ…、マリア・チェービー。お元気そうで良かったです」
「ああ。あの時の捕虜か、綺麗な格好してたからわからなかったよ」
ハイクイの言葉にマリアは真っ赤になると「あの日は全裸で…」と言ったがクオーが「何も見ておりません。傷が心配でしたがそのご様子なら後遺症もなさそうで安心しました」と言い、ハイクイも「別に裸なんて皆一緒だから覚えてないや」と言う。
この話にウーティップが立ち上がって「娘を助けてくれた事に父としてお礼を言わせてください」と頭を下げる。
「ですが私は彼女の剣士としての命を貰いました。頭をお上げください」
クオーの返事にマリアは「はい。あの日…」と言ったところでウーティップが「クオー・ジン殿だ。あのジン家の者ならばこの戦果は致し方ない」と言うとマリアは目を丸くして「ジン家…」と言った後で「あの日クオー様に折られた両腕は日常生活に問題ない所までは治りましたが二度と剣は持てません。希望の乙女等と呼ばれてのぼせていた私にはちょうどよかったのでしょう。ありがとうございました」と言って頭を下げた。
この後は再度自己紹介をしてウーティップが今回の落とし所としてセーバット・ムーンの命令書を見せてきた。
「それは命令書?」
「ええ、先程のロカオも最後の希望に潜入をしたまま戻らぬマゴテスも私の部下ではありません。セーバット・ムーンが用意した兵士です。後1人、そちらで言うハッピーホープにも1人ズミゴクという男が入り込んで居ます。今回の件、我々も無傷では済みませんでした。無論それを理由に許してくれとは言えませんが落とし所としてマゴテス達が命令書を持ったままそちらに乗り込んだ事にしていただけませんか?」
これはズエイ・ゲーンが嬉々とする内容だろう。
クオーは「わかりました。そちらにも被害が出ていた事もあわせて報告をさせていただけるのなら…と言っても」と聞く。
「構いません。この基地が半壊のまま直せないのは希望の街が蟻地獄で絶望の街になってしまったからです」
「…わかりました」
ウーティップと握手を交わしたクオーは「ただ…」と続けて「私はいち王国兵として己の行為に疑問を持ちません。この基地を破壊した事も何も正しい行いだと思っています」と言う。
悲しげな顔のウーティップは「この戦い、確かに交易の問題から始まりましたが帝国だけが悪いわけではありません」と言ったがクオーは「国王陛下の考えは絶対のものです」とだけ言う。
「悲しいですがそれもまた正しいでしょう」
ウーティップの言葉にマリアが「クオー様」と話しかける。
「国を抜きにしてクオー様とハイクイ様は私を助けてくださいました。クオー様はその時はどう思われたのですか?」
「戦場に出れば私もあなたも一兵士。戦いで死ぬ者を否定しません。私は戦場ならば女子供に容赦はしません。ですがあの部隊長は己の性欲を満たすために行動に出ていた。それは誉れ高き王国兵にあるまじき姿。そして私はシマロン氏の命と共に得られるだけの情報を得た。だからあなたの戦闘力を奪い解放をしました」
「では、もしこの先も機会があれば未来について話せませんか?」
「未来?」
「はい。戦後人はどうあるべきか。疲弊した皆が道を誤らずに済むようにする方法です」
「それは素晴らしい」
「ではお互い正々堂々と生きた結果、また会えましたら」
「是非よろしくお願いします」
クオーがマリアの手をとって握手をするとハイクイが「なんか仲良いね。お似合いだ」と冷やかす。
マリア・チェービーは真っ赤に照れて、クオーは「ハイクイ。彼女のような淑女は私のような破壊者には勿体無い方なのだよ?」と注意をする。
そして礼を言って帰るクオーを見送ったウーティップとマリアはクオーの破壊者の意味を気にして調べる事にした。
最後の希望では私刑が終わっていてレギオンは徹底的に処罰を受けて半壊していた。
それなのにレギオンの親をしていたマンニィ・パブークは皆の前で周りに礼を言わされた上に迷惑料と謝礼まで支払う羽目になっていた。
ズエイは更に笑いが止まらなくなっていた。
ハッピーホープに隠れていたズミゴクもクオー達の報告で見つけ出すことが出来、ズミゴクが持っていた事になった命令書をショークに提出するとショークはクオーの活躍には顔を顰めたが結果には大満足で報酬まで貰えて損失は一瞬で補填されて利益が残った。
そして気付けば古参メンバーと肩を並べるようになったズエイはハッピーホープでも敵無しになってしまった。
余談だがクオーは恐ろしい事に帰りに見つけた人喰い鬼を2匹ほど風刃で切り刻むとCランクの風龍の吐息を育て切ってしまっていた。
これにはダムレイ達もクオーの異常さに驚いたが本人は「あはは、相性かな?」と笑っていた。




