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破壊者の幸せな一生。  作者: さんまぐ
ツミビトの報いと謀略と復讐に向かう破壊者。
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第18話 ジョンダリ。

刺客ジョンダリと最後の希望を散歩するクオー。


「ここのお店のお肉は食べちゃダメ。魔物と人間のお肉だよ!」

ジョンダリの解説はこんな感じで最後の希望の良くない部分ばかりであったが、それでもクオーは「そうねんだね」「知らなかったよ」「詳しいね」と感謝を口にする。


今は[美人局狩りを生業とする連中を狩りする連中]とかいう美人局狩狩の娼館もどきを紹介されていてとても少女の口から聞きたくない「お兄さんはどこでするの?変なお店だと後々大変だよ?」という言葉に顔をしかめる。


クオーは表情を戻して穏やかな顔で「私はその気持ちを律することにしているよ」と返すとジョンダリが冷めた表情で「嘘ばっか」と言った。



少し歩いた所でジョンダリはいやらしくクオーをねめ上げて「私、上手だって言われてるからお兄さんの専属でもいいよ?」と言った。


これにはジョンダリなりの処世術があった。

大馬鹿のクオーを骨抜きにすることが出来れば最後の希望での生き方がガラリと変わる。


恐らく話したこともないままに死に別れた妹も同じ考えだったのだろう。

まだ幼い自分を拾い上げた姐達。

自分が生きる事に精一杯の中、何も知らない間に生まれた妹。

その妹はインニョンの手でゲーン探索団に拾われて死んだ。


妹が居ると知ったのは自分がインニョンのように赤ん坊の世話をする仕事に就いた時、もしかしたら自分の弟か妹が来るかもしれないと期待した時、姐達から妹は数年前にインニョンに拾われたと聞いた時だった。

会ってみたかったが家族は自分のいる探索団の姐達や兄貴分達、これから保護をする弟や妹達だと教わった。



そしてそれは間違いではなかった。


兄貴分達は最後の希望の外でカケラの奪い合いで血を分けた家族と殺し合いをしてきた。

殺さなければ死ぬ。

死んだらおしまい。何も残らない。


その考えに染まりジョンダリは生きた。


世界に救いも何もないと知ったのはそれからすぐだった。

リーダーから夜伽を仕込まれた。

気持ち悪くて嫌だったが断ったら殴られた。

子供の歯だった前歯が折れたが誰も助けてくれなかった。


姐達もリーダーの相手をしたがらずに不調を理由に逃げる。

妹達もいたが、いくらリーダーでもそこまで幼い娘に夜伽を命じる気はないようで、1番最後の自分は不調も何も許されずにリーダーを受け入れさせられる。


リーダーに言わせると上手いジョンダリは気に入られたが、気に入られても特別扱いがある訳ではない。

逆にリーダーが褒めれば褒めるだけ他の連中もジョンダリを試し、手を出した。


姐達は助かったと胸を撫で下ろすだけで何もない。

ジョンダリだけがタダノリをされる。



先程クオーに言った「タダ働き」はコレに該当する。


仕事が終わって帰ったジョンダリはハウスで待つ連中に別室に連れ込まれる。

夕飯までの時間をこれでもかと使われる。


何人かは新しい妹に動いたがジョンダリ贔屓の連中は動こうとしなかった。

だから少しでも帰らないで良いようにしていた。


ジョンダリはクオーが「よろしく」と言うと思ったが言わなかった。言わないどころか悲しげな顔では「それは良くない。する必要が無ければ別の仕事を見つけるんだよ」と言った。


「え?」

「多人数との交渉ごとは病に陥る危険も孕む。別の仕事で生計を立てられるように努力するんだよ」


ジョンダリは苛立ちと共に「弱い私はこうするしかないの。可哀想。お兄さんなら格安だったのに次からは高いからね」と憎まれ口を叩くとクオーの手を取る。


「ん?」と言うと一瞬動きを止めて手を見るクオー。


「どうしたの?」

「いや、チクリとした気がするのだが?」


手を取って見てみようとするクオーにジョンダリが「私の手がガサガサだから?」と聞きながら繋いでいない手を見せる。

確かに荒れていたがクオーはジョンダリを傷つけないように「…そんな事はないよ」と答えた。



ジョンダリはそのまま「手を繋いであげるから散歩しようよ。人が増えてきて迷子は困るからさ」と言ってクオーの手を引く。


「…私は目立つよ?」

「私が小さいからだよ」


ここで男…少年達が近づいて来てジョンダリに「何やってんだジョンダリ?仕事終わったなら帰ってこいよ」と声をかける。


ジョンダリは「私の仕事は終わったの。今お兄さんと手を繋いだから散歩してから帰る」と言うと少年達はニヤリと笑い「仕方ねえな。ちゃんと帰ってこいよ。待ってるからな」と言って立ち去った。



少年たちの後ろ姿を見てクオーが「家族かい?」と聞くとジョンダリは「うん」と答える。

声色で分かるが喜んでいる感じは無い。


「君は何処に所属しているんだい?」

「バンディットってチームだよ。もしかしてお兄さんのチームに連れて行ってくれるの?」


「私にその権限は無いからズエイ・ゲーンに聞かないとね」

「ほんと!?ズエイに言ってくれる!?言ってくれたら私頑張るよ!キチンと働く!」


ジョンダリは1番あり得ないと最初に放棄した考えを持った。

ズエイに言ってもらえてゲーン探索団に入り、ジョンダリ・シータになる。


だがそうなるとジョンダリには一つの問題があった。

だがそれを口にするということは今目の前に現れた人間への切符を自ら棄てる事になる。


「あ…あのさ…早くゲーン探索団に行こうよ」

「どうしたんだい?散歩を楽しもう」


クオーは逆にジョンダリの手を引く形で前に出る。

クオーは目につくものを全てジョンダリに聞き、ジョンダリはうわずった声で質問に答える。


顔に脂汗が出てきたジョンダリにクオーが不調を疑った後で「ああ、怖いんだね?平気さ」と続けた。


「え?」

「ズエイ・ゲーンに言った後に待つあの者達からの報復を考えていたんだね?私からキチンと君がゲーン探索団に移籍する事を言いに行こう。さあハウスに連れて行ってくれ」


ジョンダリは真っ青になったしコレでもかと拒否と否定を行ったがクオーは聞き入れずにバンディットのハウスに行ってしまった。

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