表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/212

97 母からの手紙

 私とセファリス、ロサルカさんはキルテナに乗って王都を飛び立った。

 雲を切り裂き、大空を悠然と泳ぐ。


 これならすぐに目的地に着きそう。向こうでの段取りはもう決めてある。

 気になるのはこれなんだよね。

 ポケットから一通の手紙を取り出した。

 数日前にお母さんから届いたものだ。


 それを見たセファリスが竜の上をテテテと走ってくる。

 落っこちないように注意してよ、お姉ちゃん。


「私にもお母さんから来たわよ。なんとお姉ちゃん、高貴なる貴族の血が流れてるんだって」


 うん、滅亡した王国の、貴族の血がね。


 聞いていたロサルカさんが不敵な笑みを。


「貴族なんてそれほど有難がるものでもありませんよ。くだらない人間も沢山いますし。そういった制度がなく、実力社会のコーネルキアを私はとても気に入っています」

「ロサルカさんも貴族の出なんですか?」

「あら、私がどうやって闇属性を獲得したか、ご興味が?」

「……やっぱり答えなくていいです」


 人の闇に触れるのは遠慮しておこう。


 どうも私の家も貴族だったみたいなんだけど、手紙ではその辺は言葉を濁してあった。確かに有難がるものでもないし、割とどうでもいいことではある。たぶんうちはすごく没落していて、恥ずかしくて私には言えない、とかでしょ。

 リズテレス姫が言っていた。総じて母親とは娘に対して気位が高いものである、と。総じてではないと思うけど、我が家には当てはまりそう。

 それより気になるのは、ルシェリスさんという兎の神獣だ。


「私の方にも書かれていたわ。なんとセファリスのリスは、その神獣の名前からもらったものなんだって」

「命の大恩人(神)らしいからね」


 実は姫様からも事前に聞いていた。

 二つの群れの内、兎の方は戦闘を回避できるかもしれない、と。私達の判断に任せるとのことだ。

 戦わないで済むならそれに越したことはない。

 お母さん達の大恩人(神)だとしたらなおさらね。


 ただ、分からないのは、お母さんがどうやって神獣と話をしたのかだよ。相手は人型でもなかったようだし。

 手紙だとそこも曖昧だった。

 ……お母さん、自分の言いたくないことは徹底的に避けてる。

 マナで互いの思考を読み合えても、会話するようにはいかない。


 そもそも、お母さんのマナはすごく微小だしね。

 あれじゃ〈ファイアボール〉もちゃんと撃てるか怪しいもんだよ。


 とにかく、神獣と話なんてできるわけない。


 手紙をしまい、雲の海原に目をやった。

 私、こんなに高い所を飛んだの初めてだ。

 あれ? 空を飛ぶの自体が初めてだっけ?


『相変わらずおっとりだな、トレミナは。その気になればもっと高く飛べるぞ』

『この高度で充分だよ。これ以上は纏うマナを増やさなきゃいけないし』

『ん?』

『ん?』

『…………』

『…………』

『わあ! どうして会話できてるんだよ! 何だこれ!』

『何だろうね、心に直接流れこんでくる』


 まるで私とキルテナの精神がつながったみたい。


『セファリスや暗黒姉ちゃんとは……、無理だな。トレミナ限定らしい』


 そうだと思う。

 これ、私の精神領域を拡張してるんだ。私の心から手を伸ばしてる感じ。

 こんなやり方があったとは知らなかった。


 お母さん、私にもできたよ。

 この力ってトレイミー家の血筋によるものでしょ?

 いくら私がおっとりしていても、それくらいは分かるよ。

 まったくもう。

母の大切な秘密は大体バレてました。

評価、ブックマーク、いいね、感想、本当に有難うございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。





書籍化しました。なろう版へはこちらから。
↓をクリックで入れます。




陰キャ令嬢が沼の魔女に。

社交界で沼の魔女と呼ばれていた貴族令嬢、魔法留学して実際に沼の魔女になる。~私が帰国しないと王国が滅ぶそうです~








強化人間になってしまった聖女のお話です。
↓をクリックで入れます。




腕力で世界を救います。

強化聖女~あの聖女の魔力には武神が宿っている~








こちらも連載中の小説です。書籍化します。
↓をクリックで入れます。




事故で戦場に転送されたメイドが終末戦争に臨みます。

MAIDes/メイデス ~メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で最弱クラスのまま人類最強に。~




書籍 コミック


3hbl4jtqk1radwerd2o1iv1930e9_1c49_dw_kf_cj5r.jpg

hdn2dc7agmoaltl6jtxqjvgo5bba_f_dw_kf_blov.jpg

1x9l7pylfp8abnr676xnsfwlsw0_4y2_dw_kf_a08x.jpg

9gvqm8mmf2o1a9jkfvge621c81ug_26y_dw_jr_aen2.jpg

m7nn92h5f8ebi052oe6mh034sb_yvi_dw_jr_8o7n.jpg


↓をクリックでコミック試し読みページへ。


go8xdshiij1ma0s9l67s9qfxdyan_e5q_dw_dw_8i5g.jpg



以下、ジャガ剣関連の小説です。

コルルカが主人公です。
↓をクリックで入れます。




コルルカの奮闘を描いた物語。

身長141センチで成長が止まった私、騎士として生きるために防御特化型になってみた。




トレミナのお母さんが主人公です。
↓をクリックで入れます。




トレミナのルーツを描いた物語。

婚約破棄された没落貴族の私が、元婚約者にざまぁみろと言って、王国滅亡の危機を逃れ、ごくありふれた幸せを手に入れるまで。



― 新着の感想 ―
[一言] うわ!ナチュラルに会話した!(笑)
[一言] マナ量含めて大方バレまくってしまったとさ(笑)
[一言] ばれてーらw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ