表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/212

95 [イルミナ] 私の魔法

イルミナはトレミナのお母さんです。念のため。

これに先立ってイルミナが主人公の短編、

『婚約破棄された没落貴族の私が、元婚約者にざまぁみろと言って、王国滅亡の危機を逃れ、ごくありふれた幸せを手に入れるまで。』

を投稿しました。

トレミナのルーツ、才能の秘密も明らかに。

今後の展開にもつながっており、

本編に組みこむことになりそうです。

お読みいただくのはこの95話の前でも後でも大丈夫かと。

よろしくお願いします。

評価もつけていただけると有難いです。

この小説の下に(広告挟んで)リンクをご用意しました。

 村の銀行からの帰り道、通帳を見ながら思わずため息が。


 また送金の額が増えてる……。

 今月はとうとう一千万ノア超えてるじゃない。


 近頃、娘のトレミナが毎月毎月多額の現金を振りこんでくる。

 あの子は物欲がない。使い道が思い浮かばないから私達に使ってもらおうってことなんだろうけど……。

 親としては非常に複雑な心境だ。

 なんせうちの娘は今月でやっと十二歳になるところ。


 どうしてあんな子に育ってしまったのか。

 いえ、原因なら分かっている。そろそろ話しておくべきかもしれない。

 トレイミー家のことを。そう、私には娘に隠している秘密がある。

 ……これだけのお金、十数年前の私なら狂喜乱舞したわね、きっと。


 田舎道を歩いて自宅まで戻ってくると、お隣の軒先に馴染みの顔が。


「イルミナ、うかない表情ね。普通は喜ぶところでしょ。昔はお金が大好きだったじゃないの、あなた」


 彼女はセファシア。花のように愛らしい容姿の持ち主で、三十歳を超えた今でも十代で通りそうな私の幼なじみだ。

 夕涼み中の彼女の横に私も座った。


「お金が大好きだったんじゃなくて、お金がなかっただけよ。トレミナに一族のことを話すべきか悩んでいてね」

「話せばいいじゃない。悩む必要なんてないわ。あの子なら、そうなんだ、で終わりよ」

「それは分かってるわ。問題は、当家が超没落貴族だった、ってことよ」

「ああ、そっちね……」

「そっちなのよ……。恥ずかしくてとても言えない……」


 一つ話すと、連鎖的に言いたくないことがどんどん出てくる。

 トレンソが元使用人で、私はその体を狙っていたこととか。

 私は滅亡する祖国を見捨て、全力で逃げたこととか。

 ああ……、私の過去は恥の貯蔵庫。


 だけど、話さないわけにはいかない。

 トレミナの才能は間違いなくトレイミー家由来のものだから。


 頭を抱えていると、セファシアが家から冷たいお茶を持ってきてくれた。


「ありがと。…………、はぁ、生き返るー」

「トレミナちゃんのおかげで今年の夏は、全村民が冷たいお茶を飲めているわ」


 あの子が村中に配った冷却箱は、夏が近付くにつれて誰もがそのありがたみを実感することになった。

 セファシアもお茶を一口飲み、「いい子じゃない」と。


「それに才能が凄まじいわ。全強化技能を作るなんて。今や導師でしょ」

「おたくのセファリスだって。あの歳でナンバーズなんてすごいわよ」


 しばらく二人で顔を見合わせる。


「どうして私からあんな子が生まれたのか……。この前、帰ってきた時に言われたのよ。お母さんも少しだけどマナが使えるのね、って。私の若かりし頃の修行は何だったの? て感じよ」


 あら、今度はセファシアが頭を抱えてしまった。

 気持ちは分かるけどね。

 私達の祖国では、彼女の家は実力派で通っていた。実際、セファシアも幼少から訓練を重ねてきたし、その辺の魔女に劣らない力を備えてる。


 おかしいのはこの国の騎士達よ。

 世間一般で言うところの達人がごろごろいる。

 ナンバーズになるともう化け物だわ。そもそもになるけど、人間が守護神獣と戦うこと自体、常識から外れてる。

 いずれ本当にこの国から誕生するかもしれないわね。

 最高位の神獣を倒せる人間、剣神が。

 まあ、私みたいなマナ使いには関係の……。


 そ、そうだった!

 トレミナに知られたくない私の秘密、第一位はあれだ!


「大分暗くなってきたわね。イルミナ、あれ使ってよ」

「あ、うん、いいわよ」


 リクエストに応えて私は手をスッと前に。


「火霊よ、私の敵を撃ち抜け。〈ファイアボール〉」


 ポッ。


 目の前にはろうそくより少し大きい火の玉が浮かんでいた。


 これが、私が唯一使える魔法、飛ばない〈ファイアボール〉。(極小)

 トレミナには絶対に知られたくない!

 それならまだマナを使えない普通の人間って思われてた方がマシ!

 するとセファシアが。


「いいわよね、イルミナは。マナが微小すぎて普通の人間とほとんど見分けつかないんだもの」


 ええ、それが不幸中の幸いだわ。

イルミナが主人公の短編

『婚約破棄された没落貴族の私が、元婚約者にざまぁみろと言って、王国滅亡の危機を逃れ、ごくありふれた幸せを手に入れるまで。』

よろしければお読みください。


(広告挟んで)この下にリンクをご用意しました。

あちらでも評価をつけていただけると有難いです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。





書籍化しました。なろう版へはこちらから。
↓をクリックで入れます。




陰キャ令嬢が沼の魔女に。

社交界で沼の魔女と呼ばれていた貴族令嬢、魔法留学して実際に沼の魔女になる。~私が帰国しないと王国が滅ぶそうです~








強化人間になってしまった聖女のお話です。
↓をクリックで入れます。




腕力で世界を救います。

強化聖女~あの聖女の魔力には武神が宿っている~








こちらも連載中の小説です。書籍化します。
↓をクリックで入れます。




事故で戦場に転送されたメイドが終末戦争に臨みます。

MAIDes/メイデス ~メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で最弱クラスのまま人類最強に。~




書籍 コミック


3hbl4jtqk1radwerd2o1iv1930e9_1c49_dw_kf_cj5r.jpg

hdn2dc7agmoaltl6jtxqjvgo5bba_f_dw_kf_blov.jpg

1x9l7pylfp8abnr676xnsfwlsw0_4y2_dw_kf_a08x.jpg

9gvqm8mmf2o1a9jkfvge621c81ug_26y_dw_jr_aen2.jpg

m7nn92h5f8ebi052oe6mh034sb_yvi_dw_jr_8o7n.jpg


↓をクリックでコミック試し読みページへ。


go8xdshiij1ma0s9l67s9qfxdyan_e5q_dw_dw_8i5g.jpg



以下、ジャガ剣関連の小説です。

コルルカが主人公です。
↓をクリックで入れます。




コルルカの奮闘を描いた物語。

身長141センチで成長が止まった私、騎士として生きるために防御特化型になってみた。




トレミナのお母さんが主人公です。
↓をクリックで入れます。




トレミナのルーツを描いた物語。

婚約破棄された没落貴族の私が、元婚約者にざまぁみろと言って、王国滅亡の危機を逃れ、ごくありふれた幸せを手に入れるまで。



― 新着の感想 ―
[一言] あ。短編読んでから来たんですよ〜(笑) やっぱり次のトレミナの神獣さんはルシェリスさんすかね〜? やっぱりもふもふは正義!(笑)
[一言] ただのジャガイモ農家じゃなかったのか ……いやまあそりゃそうよね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ