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94 バースデー出撃

 いよいよ今日は南方遠征の日。

 なんだけど、これはいったいどういうこと?


 早朝、王都コーネフィタルの広場で私は一人、ぽつんと立っていた。

 しっかり全身を黒煌合金の装備で固めている。一人だけ張り切りすぎて早く来ちゃいました、的な感じに見えるけど、断じて違う。

 王都には元々物資を受け取りに立ち寄る予定だった。

 セファリスから先に行っておいてと言われ、来てみたら物資どころか人っ子一人いない。おかしい、散歩している年配の方すらいないとは。

 と思っていると、接近する大勢の人をマナで感知。


 広場の端から騎士達が続々と。

 ずらりと並んだその数、二百人を軽く超える。

 そして、中央の空いたスペースに現れたのは、なんとアルゼオン王だ。最初に彼が声を張り上げた。


「トレミナ導師様っ!」


 それから騎士達と一緒に。


「「「お誕生日! おめでとうございますっ!」」」


 …………。

 あ、私、今日で十二歳になりました。

 遠征の準備ですっかり忘れていたよ。


 お城の上空に、ポン! ポン! と花火が打ち上がり、直後に至る所から人が広場に雪崩れこんできた。

 町の住民にお城で働く皆さん、ああ、お姉ちゃんもいるね。


「サプラーイズ! どう? どう? びっくりした?」


 これは、きっと準備に時間が掛かってる。

 ちゃんと驚いたことにしないと。


「うん、びっくりしたよ。ちゃんと」

「全然いつも通りじゃない! 国を挙げてのサプライズなのに!」


 そうなんだ。確かに王様が号令をかけてたね。

 私、おっとり失礼なことを。


「トレミナさんならそんな感じだと思っていたわ」


 振り返るとリズテレス姫が立っていた。


「今日は記念すべき日で皆騒ぎたいだけ、というのもあるから、気にしなくて大丈夫よ。じゃあ物資を運びこむわね」


 記念すべき日?

 周囲を見渡すと、誰も彼も嬉しそうな表情を浮かべている。やっとこの日が、とか、待ちに待ったこの日が、とか聞こえる。

 ちょっとマナで聞き耳を立ててみよう。

 ……なるほど、南から逃げてきた人や、向こうに親類がいる人が結構な数でいるのか。彼らにとって、ついにコーネルキアが動く今日は本当に記念すべき日なんだ。

 私も頑張らないといけない。


 と決意を新たにしている間に、広場の片隅に物資の山ができていた。

 あれは主に食糧だよ。南方は野良神のせいで、町や村の間の輸送が困難らしい。常に食糧不足の状況にあるから、ついでに持っていってあげることになった。

 どうやって運ぶかというと……。

 えーと、キルテナは……、いたいた。


「キルテナ、頼んだよ」

「仕方ないな、巨大な神の偉大な力を貸してやる」


 騎士達が人々を下がらせて広場の真ん中を空けた。

 制御リングを外したキルテナがそこに立つ。


 キラッ! と少女の体が煌き、たちまち体長四十メートルの竜に。


 周囲に緊張が走るも、ドラゴンは大人しくその場に伏せた。

 早くしろ、と言わんばかりにキルテナが、グルルと喉を鳴らす。

 騎士達は恐る恐るその背中に物資を積んでいった。


 ちなみに、このままキルテナが人型に戻ると、荷物は竜体と一緒に次元の裏ポケットに収納される。次元の裏ポケット……、よく分からないけどそういう空間の穴があって、使ってない方の体を保管できるみたい。

 身につけた物も一緒に保管されるので、今回のような輸送にはすごく便利だ。

 巨大な神だと収納できる量も増えるから本当に偉大だよ。


 ポケットの説明はしたけど、今日はこのままキルテナに乗せてもらって現地まで飛んでいく。

 ドラゴンに乗るのは初めてだ。あまり揺れなきゃいいな。

 と見つめていて、ふと気付いたことが。

 私のマナ量、もうキルテナ竜体を超えてる。

 うーん、少し前まで十二歳でドラゴンを超えるなんて想像もしていなかったよ。……あと、王様に導師様と呼ばれることも。


 そのアルゼオン王が私の所までやって来ていた。


「トレミナ導師様、こちらが親書に、なり、ます……」


 喋りにくそう、解放してあげられるのは私しかいない。


「王様、私に敬語は使わなくていいですよ」

「そ、そうか、すまないな。じゃあトレミナさんと呼ばせてもらう。トレミナさん、これが親書だ。君達が二大勢力の野良神を討伐し次第、五十の部隊を派遣する。必ず無事に帰ってきてくれ」

「はい、分かりました」


 ちょうど荷の積みこみも終わったみたい。

 セファリスは、いるね。ロサルカさんは、と……。


「ここに控えていますよ、トレミナ代表」


 背後から闇のお姉さんの声が。

 気配を消して背中を取らないでください。ぞくぞくします。


「私が代表ですか?」

「もちろんです。ランキングが一番上なのですから」


 ……向こうの人達、不安にならないかな。

 まあとりあえず行こう。

 キルテナに飛び乗ろうとした矢先、肩に手が置かれた。

 おっと危ない。何ですか、リズテレス姫。


「誕生日プレゼントは戻ってから渡すわね。楽しみにしていて」


 ……なぜか、帰ってくるのがちょっと憂鬱なのですが。

実はここまで一度も年号や日付を使っていません。

この惑星は地球のコピーのような存在なので、

こちらと同じ暦でいい気もします。

西暦は使えませんが。

トレミナの誕生日は8月のどこかです。


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