90 ライ竜戦
よし、試合開始だ。
と思ったものの、違和感が。
右手に拳銃、左手に盾。おや、剣が持てない。
両手を交互に見比べ、盾をザスッと地面に刺した。防御はマナを全開にすればたぶん何とかなるよね。右手に剣、左手に拳銃というスタイルになった。
よし、試合開始だ。
私の様子を観察していたライさんが呆れ気味に。
「本当におっとりしてるね。大丈夫なの?」
「大丈夫です。始めましょう」
先手はライさん。竜の口から火炎球を発射した。
これを避けた私は走りながら銃を構える。
リボルバーに装填できる弾は六発。今回は、最初の五発は全て異なる属性、つまり全五属性を入れてある。当然ながら私は出る順番を覚えているよ。
一番初めに発射されるのは、こちらも火属性だ。
ドンッ! ボワァァ――――ッ!
着弾と同時に、ライさんを中心に大きく燃え広がった。
火の海から出てきた彼は余裕の笑み。
「強化の効果に加え、かなりマナを込めてるね。僕のブレスより断然高威力だ」
笑ってる暇も喋ってる暇もありませんよ。
すでに追撃態勢の私。
剣で薙ぎ払いながら、〈プラスソード〉七メートル。
ライさんは翼で空中に逃れる。
予測済みです。
まずは〈オーバーアタック〉を発動。リボルバーの銃口を向けた。
二番目の銃弾は、風属性だ。
ドンッ! ゴオォォ――――――――!
荒れ狂う風がライさんを吹き飛ばし、闘技場の壁に叩きつけた。
竜のオーラで守られているから、割と平気そうだね。やっぱりあれは攻防一体の技みたい。おっと、反撃が来る。
飛んできた火球にマナの大剣をぶつけ、手前で爆発させる。
ところが、続けて次の火の玉が。
ブレスに見立てたあの〈ファイアボール〉はずっと発動中。連射も可能ってことか。避けられない。〈全〉で防御。
ドパ――ンッ!
あち、けど私も割と平気だよ。
ライさん、また飛ぼうとしてる? させませんよ。
拳銃を構えた。
次の銃弾は私の好きな属性、地属性だ。
ドンッ! ドゴォッッ!
闘技場の地面がめくれ上がり、包むようにライ竜を中に閉じこめた。
が、マナの尻尾を振り回してあっさり脱出。
ん? またブレス?
……あれはやばい。
すぐに私は回れ右して駆け出した。
〈ファイアボール〉というのは火属性の初級魔法。ライさんはそれに相当な量のマナを込めて撃ってきてる。
今回は相当どころか限界まで注ぎこんだ一撃が来そう。
〈ファイアボール〉として最大威力のものってこと。
目的の場所に辿り着いた私は、急いで〈全〉状態で屈む。
直後に、これまでとは桁外れの大爆発――。
あちちちち、けど今回もどうにか平気だよ。
私が戻ってきたのは盾を刺した最初の場所。すぐに〈プラスシールド〉を展開したおかげで持ち堪えることができた。
だけど、今のを連射されるとさすがにきついね。
ここは守るより攻めるのが得策。
魔導弾、発射。
四発目に入っているのは、雷属性だ。
ドンッ! バチバチバチバチバチッ!
マナ竜の全身を電撃が駆け巡る。
「痺れて動けなくなるのを期待していたなら残念。それほど効いてないよ」
分かっています。一発消費したかっただけですから。
使いたかったのは次の弾、水属性だ。
その前に〈オーバーアタック〉。で発射。
ドンッ! シュ――――、パキパキパキパキッ!
ライさんの竜オーラを氷が覆い尽くした。
私はリボルバーを構えたまま、次の銃弾にマナを送る。
「なかなか強固な氷の拘束だね。でも次の弾は相性悪いでしょ。順番的に火属性……、ってあれ? 違うの?」
違います。最後の弾は私の好きな属性です。
六発目は、地属性だ。
〈オーバーアタック〉をかけてから引き金を。
ドンッ! ドッゴオォォッッ!
先ほどより巨大な大地の檻が出現していた。
この二重の拘束なら少しは動きを止められるはず。
〈トレミナボールⅡ〉は撃たない約束なので、別の技でフィニッシュとさせてもらいます。
〈ステップ〉を足場に二段ジャンプ。
今の私なら、きっと〈プラスソード〉の最大威力を引き出せる。
〈オーバーアタック〉からの、
〈プラスソード〉十メートル、幅広マナ大剣。斬り。
ズッバ――――――――ッッ!
巨大な刃は竜のオーラを破って内部まで。
しかし、本体のライさんに片手で止められている。
フィニッシュ、ならず。
いや、でもこれは……。
「まさか、本気でガードすることになるとは。トレミナさんの勝ちだ」
「ありがとうございます」
「噂には聞いていたけど、君、戦闘になると本当に切り替わるね。全然おっとりじゃなくなる」
「え、いつもと一緒じゃないですか。自分ではよく分かりません」
「……無意識か。本当、おっとりしてるね」
久々にまともな戦闘シーンを書いた気がします。
まともかどうか微妙ですが……。
評価、ブックマーク、いいね、感想、本当に有難うございます。










