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9  決勝戦(二年生)1

 学年末トーナメントもいよいよ決勝戦だ。

 私もどうにか無事(誰も殺さずに)ここまで上がってこれた。


 準々決勝からは全て第一闘技場で行われていて、私も全試合を見ていた。

 だから、反対側の山から誰が上ってくるのか、予想はできたよ。きっと彼女だろう。マナがずば抜けて高まっている。

 そして思った通り、決勝の舞台に立ったのは彼女だった。


 対戦者サイドの扉が開く。

 入場してきたのは、私より少しだけ背の高い少女。

 太陽のような橙色の髪に、鮮やかな緑色の瞳。

 見慣れた容姿だ。それも当然。同じ部屋で暮らしているんだから。


「こうなるって思っていたわ! お姉ちゃん! 本気でいくからね!」


 マナをギラギラ輝かせ、セファリスが私の前に立った。

 ……この人、たぶん出場者の中で一番張り切ってる。

 そっか。これが、張り切る、か。

 私には無理だ。


 私とセファリス、学園でのクラスは違うけど、これまで何度も手合わせしている。勝つのはいつも私。でもセファリスは決まって、お姉ちゃんが負けてあげてるのよ、的な空気を出してくる。


「実はお姉ちゃん、トレミナとの試合ではいつもわざと負けていたの……」


 なんと、とうとう実際に言ってきた。


「けど今日は本気よ! だからトレミナも本気で来て!」


 それだけは絶対にできないよ。

 仕方ない、普段より少し多めに纏って、それっぽく見せておこう。

 で、いいですよね?

 と傍らに立つジル先生に視線を送った。


 決勝の審判員はジル先生だ。

 この人事は、彼女が教員の中で一番の実力者だという裏付けでもある。


 まだ二十歳なのに……。他の騎士から様を付けて呼ばれていたし、本当にどういう人なんだろう。姫の腹心なのは間違いないと思うけど。

 どうして、こんな人が私なんかのために学園へ……?

 尋ねたら教えてくれるのかな?


「トレミナさん、試合に集中しなさい。怪我をさせることになりますよ」


 する、じゃなくて、させる、ですか。

 はい、気を付けます。


 よろしい。と言うように頷き、ジル先生は右手を掲げた。


「では、これより決勝戦を行います。両者、準備は」

「待ってください!」


 セファリスが遮っていた。そして、私を正面から見据える。


「本気で、って言ったはずよ! お姉ちゃんには分かるんだからね!」


 面倒なことを言い出した。

 上手く隠していたつもりだったんだけど。やっぱり一緒に生活しているから隙があったかも。姉は野性的な勘もよく働く。


 マナを纏う様態として、大きく分けて四つの型が存在する。

〈全〉=マナを全力で放出する。五~十分ほどが限界。

〈闘〉=戦闘態勢のマナ。一時間持続できる程度の放出量。

〈常〉=日常生活仕様のマナ。放出と回復が同量。

〈隠〉=マナを抑え、気配を絶つ。放出量は微量、もしくはゼロ。

 マナの回復量は総量に比例するため、私が〈常〉でいると学園では目立ってしまう。なので、普段は〈常〉と〈隠〉の間をキープしている。

 そろそろ同級生達も経験感知が身につき始めたから、最近は特に気を付けていたんだけど。


「先生、〈闘〉で戦っていいですか?」

「いいわけないでしょう。大惨事です」


 ですよね。

 でも、こうなった姉、本当に面倒ですよ。


「やっぱり! トレミナがちゃんとやるまでお姉ちゃん試合しないから!」


 セファリスはドカッとその場に腰を下ろした。


 ほら。自慢じゃないですけど、姉の精神年齢は実年齢のおよそ半分(六歳)なんです。本当に自慢じゃないですけど……。


 ジル先生は銀色の髪をかき上げ、ため息。客席の方に視線を向ける。

 遠目に、リズテレス姫が頷くのが見えた。


「分かりました。トレミナさん、今回は特別に許可します」

「え、いいんですか?」

「見ればセファリスさんも納得するでしょう。段階的に上げなさい」

「はい、段階的にですね」


 おお、やったよ。

 実はちょっと嬉しい。

 基本的に私がマナを解放できるのはジル先生と二人きりの時だけ。あとは夜のランニング中に人気のない所でこっそり、とか。

 一日の大半、マナを抑えて生活している。

 これって結構もやもやするんだ。例えるなら、そう、ずっと鼻の片方が詰まっている感じ。地味に嫌でしょ?


 では、お許しが出たので遠慮なく。

 観客席に同級生達の姿も見えるけど、かなり離れているから大丈夫だよね。セファリスにはあとで口止めだ。

 よし、……と、段階的にだった。


 体に纏うマナの量を上げた。


 はぁ、やっと息ができた。

 騎士の人達がザワッと。やっぱり先輩方には感知されるみたいだ。


 一方で、セファリスはちょっと足をカクカクさせながら立ち上がる。


「さ、さすがお姉ちゃんの妹ね……。じゃ、じゃあ試合を」

「待ちなさい。これはまだトレミナさんの〈常〉です」

「……え? ……こ、これで〈常〉?」

「トレミナさんは今日ずっと〈常〉と〈隠〉の間で戦っていたのですよ。ここからが彼女の戦闘モード、〈闘〉です」


 途端にセファリスのマナが弱々しくなった。

容姿について。

トレミナ  = 髪は栗色ショートカット。瞳は黒色。

リズテレス = 髪は白色(脱色)ロング。瞳も色素がない感じ。

ジル    = 髪は銀色、後ろで結い上げ。瞳は青色。眼鏡。

セファリスは上記の通りです。髪の長さはセミロング、ですかね。


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― 新着の感想 ―
[一言] お姉ちゃん負けないで!(笑)
[気になる点] 鼻詰まりは人それぞれと汚いの個人的には好きじゃないから、耳にしてみては以下がでしょうか。
[一言] 頑張ってジャガイモ農家になって欲しい()
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