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ジャガイモ農家の村娘、剣神と謳われるまで。  作者: 有郷 葉


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79 [リオリッタ] 救済の毒電波

 出身一族がしょぼいのは仕方ないとして、私自身はもう少し強くなりたい。

 頑張れば倒せる私のままではいけないんだ。絶え間なく挑戦者がやって来るから、精神的にかなりきつい……。

 ナンバーズの任務がない日は毎日下剋上戦をこなしてる。一日一試合とはいえ、なかなか気が休まらない。


 先月私から八位を奪ったセファリスも、当初は連日試合をしていた。

 だけど、あの子はとても本番に強い。どの試合も一分ほどで決着させた。今では速攻のセファリスと呼ばれ、挑んでくる者も大分減っている。

 七位から上はちょっと別格。

 下剋上戦は月一回あるかないかだね。全員マナの量が段違いだし、能力もやばいのばっかり。

 トレミナちゃんなんてボール一球で試合終了だ。間違ってⅡを投げられたら即死、という恐怖もある。なのでトレミナちゃんに挑戦した者はまだ一人もいない。

 え、どうしてトレミナはちゃん付けなのかって?

 だってどんぐりみたいで可愛いし。疲れた私の心を癒してくれる貴重な存在だよ。

 ともかく別格の上位陣。

 セファリスも間もなくそこに加わるだろう。あの子はこれから強化技能を覚える。近接中心の戦闘スタイルから、恩恵はかなりでかい。


 ……いいな、別格。私もそんな人間になりたい。

 このままじゃナンバーズは八位以上ってことになって、私のお給料もガクンと半分以下に……。


 私は反射的にソファーから立ち上がっていた。


「……ものすごく恐ろしいことを考えてしまった」


 ちょうどこのタイミングで玄関の呼び鈴が鳴った。


「鍵は開いてるよ! 入って!」


 場は離れずに少しだけ大声でそう応える。

 誰が来たかは分かってるから。普通の人じゃないので、大声でなくても聞こえただろうけど。


 リビングに入ってきたのは、女子と見間違えるほど整った顔の男の子だった。


「リオ、今日は苦戦してたね。またへこんでると思っていい物持ってきたよ」

「何? お金?」

「違うって。匂いで分かるだろ、はい」

「おお、ハンバーガーだ。ありがと、ライ」


 彼は学園入学時からの友達で、今も昔も私の訓練相手をしてくれる男子、ライだ。騎士団の元ナンバー8であり、ナンバー9であり、現ナンバー10。

 ……そう、私がずれてきたせいで彼も徐々に下がってる。

 もちろん悪いとは思ってるけど、遠慮せず下剋上していいって言ってくれてるし。ライは私の特殊属性に弱い。

 だから真剣勝負だといつも私が勝ってしまう。

 でも、能力は総合的に高いから、すぐにちょい下まで戻ってくる。


「そういえば、ライってあまり下剋上の挑戦受けないね。どうしてだろ?」

「たぶん手札が多いからじゃないかな。対策立てづらいんだよ」


 ライもコーネガルデに来る前からマナを学んでいたらしくて、元々二つの属性を扱えた。学園生活を経て、現在は地と特殊以外の四属性を操ることができる。まったく器用な友人だ。

 と思いつつ、差し入れてもらったハンバーガーを一口。


「辛っ! けどうまっ! これ、どこのお店のやつ?」

「最近新しくオープンしたとこ。少しは元気出ただろ」

「元気出た、ていうか、何か力が湧いてくるんだけど。体が熱い!」

「スパイスのせいじゃない?」

「何かマナも増えてるような……」

「気のせいだって」


 彼はその美しい顔でニコリと微笑んだ。


 そうなのかな……?

 とにかく、私は親切な友人のおかげで明日への活力を得た。


 スパイシーなハンバーガーにどハマリした私は販売店を聞いたけど、ライは教えてくれなかった。不定期でやっている店らしく、また折を見て買ってきてくれるそう。

 約束通り、彼は週二ペースでおみやげに持ってきてくれた。

 買い物以外に楽しみができたせいか、私の調子は上昇気味に。下剋上を目論む騎士達も結構楽に退けられるようになってきた。

 考えてみれば、毎日毎日、本気の勝負をしてるんだから、実力が上がってきてもおかしくないよね。

 このまま目指せ別格、だ。



 そうして月が変わったある日、リズテレス姫から魔導研究所に来るよう呼び出しを受けた。


「リオリッタさんのために開発した魔導銃が完成したの。これよ」


 まさか私が専用の武器をもらえるなんて!

 と喜んだものの、その銃を見て思わず首を傾げてしまった。


「これは……、信号銃ですか?」

「構造は似ているけど、もっとしっかりした造りよ。メインはこの銃弾」


 やはり信号弾のような大きな銃弾を手に取る。


「……あ、……すごいですね、これ」

「ええ、付与した技能を遠隔操作できるの。ここに〈駆電〉を入れられる?」

「できると思います。今すぐにでも」

「まあ! じゃあ私についてきて」


 そう言って姫様は研究所を出ていく。

 外ではジル様が待っていた。


「どうやらいけるみたいですね。さすがリオリッタさん」

「あとはお願いね、ジルさん。報告を楽しみにしているわ」


 笑顔で手を振る姫様が見る見る遠のいて……。

 気付けば私はジル様と共に、大空へと飛翔していた。


「あの! どこに行くんですか! 私! 何をするんですか!」

「まず現地に向かうわ。あっちで説明するから。すぐよ」


 ほんとにすぐだった。

 ドラグセンに入ると、小高い山の頂上付近に着陸。

 ジル様がスッと指で差し示す。

 その先では大勢の兵達が野営をしていた。


「千人ほどいるわ。彼らをまとめて卒倒させることはできる?」

「……説明、短すぎです。まあ、やってみます」


 あの規模だと半径二百メートルくらいは必要ね。

 父の〈駆電〉でも半径約二十メートル。それの十倍か。でも今の私ならできるはず。私はもう別格になりつつある! たぶん!


 銃弾を握りしめ、意識を集中させる。


「雷霊よ! 速きその足で宙を駆け、人々の心を奪え!」


 私の毒電波が詰まった弾をジル様に手渡した。


「今回は銃は使わないわ。この距離なら投げた方が正確だから。野営地の真ん中に投げこむから、しっかり目で追ってね」


 二キロは離れていますが。銃の方はあまりいらない感じですね。


 目にマナを集め、ジル様に頷く。

 彼女は大きく振りかぶると、「むん!」と上空に向けて弾を投げた。

 高々と放物線を描き、毒電波弾は敵陣のど真ん中へ。

 素晴らしいコントロールです、ジル様。


 タイミングを計り、私は叫んだ。


「〈駆電〉!」


 シュザァァ――――――――ッ!


 ほんの一時、雷のヴェールが野営地を覆うように広がった。

 目を凝らして確認すると、誰も彼も地面に寝ている。動いている兵士は一人もいない。


 同様に確認を済ませたジル様は、私の肩をポンと。


「成功よ。戦争前にはこの毒電波弾を沢山作ってもらうわ。リオリッタさん、あなたはその辺の聖女なんて目じゃないほどの救済を行うことになるわよ」

「ど、どういうことですか……?」

「ドラグセンの一般兵全員を気絶させ、戦闘不能にする。あなたの毒電波は、何万もの命を救うということ」

「な! 何万っ! うちの一族の微妙な魔法がっ!」


 ……父上、一族秘伝の微妙な術、開花の時を迎えそうです。

リオリッタ編、完結です。

次話はライ編。

リオ編で撒いた伏線も回収予定です。

すでに結構バレてますが。明らかにハンバーガーに一服盛ってます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 笑えるww
[一言] 毒電波の新境地!(笑)
[一言] トレミナの二つ名はどんぐりの騎士で良いんじゃないかな(笑)
感想一覧
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