76 セファリス 対 キルテナ
睨み合うセファリスとキルテナ。
「準備はいいね、二人共。では……、始め」
私の合図で同時に動いた。
やっぱりこの二人はよく似てる。どちらも先手必勝タイプだ。
セファリスは剣に付与された戦技を発動。雷の波動を放つ。
以前より威力が上がってる。当たれば、もう痺れるだけじゃ済まない。
回避したキルテナのマナに変化が。
背中の辺りがざわついたかと思うと、ババッ! と翼が生えた。
マナの鎧はよりドラゴンに近付いた。
羽ばたいたキルテナは空中からセファリスに突撃。竜の頭部を伸ばす。
ガキィィン!
標的が避けたことで、竜の顎は空気を咬むだけに終わった。
セファリスのもう片方の剣が激しい炎を発する。
対するキルテナの爪も燃え盛る火炎に包まれた。
ぶつかり合う両者――。
ドバンッ! ゴワァァ――――ッ!
爆発と共に炎が大きく広がった。
火の中から出てきた二人は、今度は同時に距離を取る。
もう一度睨み合った。
「なかなかやるわね。強化技能、使ってもいいのよ」
「なめるな。お前、トレミナと一緒でまだ習得してないだろ。技能はその二本の剣に入ってる火と雷のやつだけだな? だったら、私も〈爪〉と〈息〉しか使わない。同じ火と雷の属性だ」
へぇ、意外と正々堂々なんだね、キルテナ。
だけど、〈雷の息〉ってどっちの口から出るんだろ。本当の口? それとも、マナ竜の口? と考えている内に、彼女は翼を使って飛び始めた。
が、すぐに見えない壁にでも当たったように、不自然に停止。
「私から二十メートル以上離れられないって」
「そうだったー!」
これを見ていたセファリスがフッと笑みを浮かべる。
「いいわ。私もトレミナの半径二十メートル内で戦ってあげる」
お姉ちゃんも正々堂々で返した。
二人は負けず嫌いなところもよく似てる。
「バカめ。後で後悔することになるぞ」
「そっちこそ。苦しくなっても他の神技使うんじゃないわよ」
言い合った後に、ようやく戦闘を再開。
キルテナが〈火の爪〉で飛びかかる。
セファリスは後方にジャンプしてかわした。
お姉ちゃんそれ、跳びすぎ。私と違って〈ステップ〉もないでしょ。
「もらったぁ――!」
竜族の少女は見逃さなかった。
空中にいるセファリスに向かって大きく口を開き、〈雷の息〉を発射。
すると、姉は火の魔剣で宙を薙いだ。
ボッ! と小さな爆発が起こり、反動で方向転換。雷撃の進路から外れた。
セファリスはずいぶん戦い慣れた感じだ。
強くなっただけじゃなく、経験もしっかり身になってる。二十日でいったいどれだけの激闘をかいくぐってきたんだろ。
キルテナ、簡単には勝てないよ。
それから、やっぱり〈息〉は本当の口から出るんだね。
反撃に出たセファリスは雷の魔剣をブンブン振り、波動を連射する。
一方のキルテナも〈雷の息〉で応戦。
私の目の前で雷同士が衝突を繰り返す。
バチバチッバチッバチバチバチッバチッッ!
……眩しい。
どっちもやけに連打するね。お互いに何か狙ってる?
最初に仕掛けたのはセファリスだった。
しばらく使っていなかった火の魔剣に素早くマナを集中。雷の波動を放ってすぐに、マナの刃を飛ばした。
なんとお姉ちゃん、もう〈オーラスラッシュ〉を。〈放〉の習得、早いな。遠距離攻撃の魔導武器を使い続けた影響かな。
抜けてきたマナの刃を、キルテナはかろうじて避ける。しかし、尻尾に当たってこれを切断されてしまった。
一応言っておくと、マナの尻尾だから体の方は全然大丈夫。マナは結構失ったけどね。
「このやろっ!」
キルテナは怒りの〈雷の息〉。
と同時に竜の頭をグイーンと伸ばす。そちらからも〈雷の息〉を発射し、一撃目を回避した直後のセファリスに命中させた。
膝をつく姉。すぐに立ち上がり、目を見開いて叫んだ。
「卑怯者っ! そっちからもブレス出せるんじゃない!」
「出せないとは言ってない! お前こそ遠距離技覚えてるじゃないか!」
「覚えてないとは言ってないわ! あんたが勝手に勘違いしたんでしょ!」
「まったく! 汚い奴だ!」
「どっちがよ!」
どっちもだよ。
正々堂々に見せかけて相手の裏をかく。
……この二人、本当によく似てる。
醜い争い、次話決着です。
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