71 武装少女2
リズテレス姫はテーブルにゴトリと拳銃を置いた。
これに、キルテナさんの体が反射的にビクッと。すっかり恐怖心が植えつけられているようだ。
店内の明かりに照らされ、黒煌合金の魔導銃はどこか妖しげに輝いている。
それから姫様は腰のホルスターと予備弾入れを外し、こちらも卓上に。
「トレミナさんにあげるわ。魔導銃はマナの操作が複雑だけど、あなたならこなせるはずよ。弾がなくなったら、マリアンさんの所でもらえるから」
「はい、どうも。ですけど、私は一応遠距離技が使えますよ」
「〈トレミナボールⅡ〉のことは聞いているわ。素晴らしい技を編み出したわね」
「何だ、そのまぬけな名前の技能は」
キルテナさんが名称に食いついた。
言っておきますけど、私が付けたわけじゃありませんので。
元々はジル先生が……、って説明するのは面倒だね。説明しなくていいか。
と思っていると、チェルシャさんがカレーパンを齧りながらキルテナさんの背後へ。
「まぬけな名前だけど、その貫通力は超上級クラス。〈トレミナボールⅡ〉を見た時がお前の最期だと思え。トレミナ、仕留めたら肉を分けてほしい」
そんな予定はないです。
姫様、話を戻してください。
「威力では〈トレミナボールⅡ〉に劣るけど、銃弾は火風地雷水と五属性揃っている。発射速度も射程も優れているから、トレミナさんの役に立つはずよ」
私はテーブルのリボルバーを手に取った。
確かに、竜態のキルテナさんを撃った時はすごい爆発だった。
姫様みたいに戦技は追加できないけど、精霊を全く扱えない私にはとてもありがたい。
「じゃあ、いただいておきます。ここぞという時に使いますね。この弾、結構高価でしょうし」
「値段は気にせず、必要に応じて使ってちょうだい。生産体制も強化しているのよ。近々、魔導銃を運用する部隊も作る予定なの」
そう言ってリズテレス姫は席を立った。
チェルシャさんの方は大量のパンを袋詰めしてもらい、一緒に店を出ていく。早速クリームパンを食べつつ、彼女は私に視線を。
「トレミナ、もう技能も精霊も、習得する必要なくない?」
……え? そんなことないと思うけど……。
まあ、後で考えよう。
今はとにかくキルテナさんだ。
押しつけられてしまったものは仕方ない。ちゃんと面倒を見ないと。
さっき聞いた話によると、二つのリングは二十メートル以上離せないらしい。つまり私達は常にセットで行動しなければならないということ。
「キルテナさん、私達も行きましょう。まずは寮を案内します」
「待て、トレミナ。あと少しパンを食べさせてくれ。……こんなふわふわなパン、ドラグセンにはなかったんだ。普通のテーブルロールがなんてうまさだ!」
ふーむ。案外、食べ物だけで充分この国に所属する理由になるのでは?
私は銃を突きつけたりしないので、金髪の少女は解き放たれたようにパンを貪り始めた。さっきの、あれで食べづらい状態だったんだ。
ただ待っているのも暇なので、紙とペンを借りてきた。
装備も含めた現在の私の技能を、ここに書き出してみようと思う。
そういえば、使う機会がなかったけど、兜には〈透視〉という魔法が宿っているよ。名前通り、障害物を透けさせて向こう側を見ることができる。
マリアンさんには悪用しないようにと言われた。
これは目への〈集〉と一緒に使うことで、より活躍する技能だ。数キロ先まで綺麗に見通すことができるよ。
とりあえず、ざっと書いてみるかな。
私
〈トレミナボール〉 中、長距離攻撃。
〈トレミナボールⅡ〉 中、長、超長距離攻撃。
〈気弾〉 近、中距離攻撃。
〈オーラスラッシュ〉 近、中距離攻撃。
剣
〈プラスソード〉 近、中距離。範囲攻撃。
魔導リボルバー+火風地雷水の銃弾
中、長距離。範囲攻撃。
盾
〈プラスシールド〉 防御。
兜
〈透視〉 感知。
鎧
〈セルフリカバリー〉 回復。
小手
〈オーバーアタック〉 一発強化。
すね当て
〈ステップ〉 機動術。
……ん?
近、中、長距離の攻撃に、五属性の高速砲。
さらに、防御技、感知技、回復技、強化技、機動術。
これ、一通り揃ってるよね。というより、かなり完璧な気がする。
うん、これはあれだ。
もう技能も精霊も、習得する必要なくない?
姫プロデュースの武装少女、完成です。
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