66 ナンバーズ入り
ロサルカさんは恍惚とした表情で膝をついた。
「……ジル様が止めてくださらなければ、私、死んでいました……」
どうしてそんなに嬉しそうなんですか。
やっぱりこのお姉さんは危険だ。
一方で、ジル先生は手の中にマナ玉を作って見つめていた。
「トレミナさん、これと〈気弾〉を融合させたと言いましたよね? どうやったのです? 無理ですよ」
「え、できますよ。マナの質を似た感じにして同調させるんです」
「それが無理なんです。質感を似せても引っつきません」
「ちゃんと〈トレミナボール〉さんを欺いて、誤認させないとダメですよ」
「何ですか、〈トレミナボール〉さんって」
今一つ伝わらないので、ボールとのやり取りを全て説明した。
話を聞き終えた先生は一時停止。
「……ありえません。自分の技能と精神領域で対話するなど。いえ、技能はマナの集合体、意思を宿していても不思議は……、ないのでしょうか? とにかく、普通は不可能です。特殊な精神性を持つあなただから為せる業でしょう」
だそうな。
ともかく〈トレミナボールⅡ〉は私の四つ目のオリジナル技として登録されるらしい。今回のは他の人はそう簡単に真似できないだろうと。
できても団長くらいだって。……なんか嫌だな。
「私が〈全〉を使ってもあの状態だったのですから、他の者なら即死です。絶対に人に向けて撃たないように!」
撃ちませんよ。コルルカ先輩にせがまれても撃ちません。
だけど、……〈オーバーアタック〉使わなくて本当によかった。
やっぱりこんな試合で、ぶっつけ本番で技を作るのは危険だね。
〈トレミナボールⅡ〉の構想を練り始めたのは【白王覇狼】との一戦の後から。あのクラスの神獣相手だと、攻撃があまり通じなかったためだ。
私は力を欲した。
二度とあんな……、あんなジャガイモ畑の姿を見ないで済むように。
とりあえず、この〈トレミナボールⅡ〉があれば畑に悪さする獣は追い払える。これからは変な技は作らないようにしよう。
と心に誓っているとジル先生が。
「技能と対話できるなんて大変な才能ですよ。トレミナさんはこれからいくつもの新技を生み出すことになるでしょうね。ジャガイモにかまけている暇はないと思いなさい」
「なんてことを言うんです。私の心を読んでわざと言ってるでしょ。もう帰らせてもらいますよ。試合の方はいいですね?」
「ええ、トレミナさんの勝利です。ロサルカ、それでいいわね?」
「はい、私の負けです。見事に下剋上されてしまいました」
……下剋上?
いやいや、そんなの申しこんだ覚えはありませんけど。
まさか、……また仕組まれていた? そして私、また引っ掛かった?
ジル先生がくすくすと笑う。
「実力に見合ったランクに上がってもらっただけですよ。あなたは今から、ナンバーズのナンバー5です。これからは私服で構いません。その騎士服を着るのは今日が最初で最後ですね」
いきなりランキング五位に。
やられた、学生を優先するどころか、騎士として最前線で戦う羽目になった。まだ十一歳なのに。
恨みがましい視線を注いでいると、先生はため息。
「これはトレミナさんのためでもあるんです。ナンバーズは基本的に個人活動。部隊に所属する必要がないので学生としての時間も取れるでしょう」
そうだったんですね。
思いっ切り睨んじゃってすみません。
「けど、ロサルカさん、私と順位入れ替わって大丈夫ですか? 下には昨日騎士になった姉がいるだけですよ」
「平気です。隣の第二闘技場にナンバー6をお呼びしていますので。フフフ、私、数字の中では6が一番好きなんです。では失礼して、下剋上して参ります」
ロサルカさんは大鎌をクルクル回しながら闘技場を出ていった。
これがコーネガルデ騎士団。
なんて忙しい世界なんだ。
ナンバーズは個性的な人が多いです。
極まった性格ほどマナが強くなるという性質ゆえ。
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