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ジャガイモ農家の村娘、剣神と謳われるまで。  作者: 有郷 葉


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59 [チェルシャ] 気になる存在

 光属性を得るには、光の精霊に認められる必要があるらしい。

 そのためには、まず光の精霊と接触しなければならない。

 アクセス方法は主に二つ。

 一つは、精霊側から降りてきてくれるのをひたすら待つ。ものすごく確率が低く、ほぼ運任せ。

 もう一つは、すでに光属性を持っている人に精霊を紹介してもらう。所持者自体が稀なので、こちらも簡単ではない。


「扱える人を知っているの。早速会いに行きましょ」


 そう言ったリズテレス姫と一緒に馬車へ。


 向かった先は王都。

 さらに城の中へと入っていく。

 姫様の同行者なら、こんな不審極まりないミイラも入城できるみたい。

 広々とした部屋に連れていかれ、そこで待つように言われた。

 仕方ないので壁際の椅子に座る。

 それにしても広い部屋。大人数でダンスが踊れそうだ。本当にそれ用の広間なのかもしれない。


 しかし、お腹が空いた。

 思えば、晩ご飯を食べずに寮を出てきてしまった。

 待つなら調理場がよかった……。

 お城のご飯、気になる……。


 どれくらい時間が経っただろうか。

 うつらうつらしていると扉が開いた。


「リズが手伝ってくれなきゃ朝まで仕事していたよ。本当、助かった」


 慌ただしく部屋に入ってきたのは、二十代後半のハンサムな男性だった。

 彼は私を見つけると、颯爽と歩み寄ってきた。


「待たせてすまない。もう始めていいか?」


 じゃあこの人が、光属性の使い手……。

 後から来たリズテレス姫が、私の視線に頷く。


「はい、お願いします」

「先に言っておくが、精霊が受け入れることは滅多にない。これまで何度も人に試したんだ。でも、誰一人成功しなかった」


 誰一人……。

 姫様が隣の椅子に座ってきた。


「私も無理だったわ。最も重要な条件は分かっているのよ。一途な強い想い、よ。ただ、よほどの想いじゃなきゃダメのようね」

「…………。やってください。承知の上でここに来ました」


 男性は「分かった」と私に向かって手をかざした。

 発生した光が、見定めるように私に触れる。


 ……お願い。

 光の精霊、どうか力を貸して。

 私はどうしても、太陽の光を浴びたい……!

 ……外の世界で、自由に生きたい!

 目を閉じて想いの限りをぶつけた。


 ――――。

 ゆっくりと、目蓋を開ける。


 光ってる……。

 私の手が、ううん、私の全身が光ってる……!


 リズテレス姫がガタンと席を立った。


「……成功だわ。成功だわ! やったわ父さん!」

「ああ! 初めてだ! まさかこんな日が来るとは!」


 大興奮の二人。

 ……ん? 姫様、今お父さんって言った?


「あの姫様、そちらの方は……」

「そういえば、紹介してなかったわね。私の父、アルゼオン王よ」


 ……この国の王様だった。

 ……私、王様に精霊分けてもらったんだ。


 アルゼオン王はフード越しに私の頭を撫でた。


「大変な体質で苦労しただろう。だが、光の精霊ならきっと問題を解決してくれる。気難しい奴で時間は掛かると思うが、頑張るんだぞ」


 私の国の王様が、こんなにかっこいい人だったなんて。

 姫様も美人なわけだ。


 そうだ、今なら肌を出しても大丈夫。

 フードを払い、顔の包帯を取った。


「驚いたな……。すごい美少女じゃないか」

「本当ね。とても綺麗な顔立ちだわ」


 この反応、……いけるかもしれない。


 それからリズテレス姫はコーネガルデまで送ると言ってくれたけど、その前に何か食べさせてもらえないか頼んでみた。


「夜も遅いからどうかしらね。父さん用の夜食くらいならあるかも」


 調理場に行くと、料理長がその夜食を分けてくれるとのこと。

 胸をときめかせて楽しみに待つ。出てきたのは……。


「ラーメン……。お城で、ラーメン……」

「私達の食べているものは皆とそう変わらないのよ。ここは小国だし」


 そうなんだ、逆に親近感が持てる。ますます気になる存在に。


 しかしこのラーメン、魚介と野菜の溶けこんだあっさりスープが美味しい。深夜に食べてもお腹に優しいチョイス。やるな、料理長。おかわりを。


 私がラーメンをすする横で、リズテレス姫は優雅にティータイム。


「父さんは昔、小さな村で野良神から皆を守る仕事をしていたの。それを祖父がヘッドハンティングしてこの国に連れてきたらしいわ」

「ヘッドハンティング? 首刈り?」

「勧誘して、ということ。それから養子にして国を継がせたのよ」

「村の用心棒から国王に、すごい成り上がり。料理長、おかわりを。でも、どうしてそんな話を私に?」

「チェルシャさん、気になっているようだから」


 はい、とても気になっています。

 王様ではなく、姫様のことが。


 私を光へと導いてくれた姫様。

 深い知識を備え、謎に満ちた姫様。

 もっとあなたのことが知りたい。

 あと、容姿がすごく好みです。

 かっこいい王様のことは別に……、料理長、おかわりを。


 その時、先ほど別れたアルゼオン王も調理場に。


「はぁ、腹へった。料理長、夜食を頼む」

「それが、あの子が全部食べてしまいまして……」


 すみません、王様。

 精霊を分けてもらった上に、夜食まで。

この世界では過去に飯テロが(略)。

チェルシャ編、次話完結です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 王様ドンマイw 料理長、止められなかったんだろうなあ
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